第九話 事故に繋がる疑惑

 私が実家に辿り着きますと、呼び鈴を押さず門を通り、引き戸の玄関を開けまして、邸宅内へと上がらせて貰いました。

 静かで広い廊下を急がずゆっくりと気配のするほうへ歩きました。

 大食堂に祖父と妹は二人ひっそりと夕食を摂っているようでした。とても物寂しい光景です。

 私の存在に気が付きました祖父は糸目の片方だけを少しだけ開き、そこから覗かせました瞳を向けまして、翔子はこちらを振り返りまして優しそうな感じを表現していました眉と瞳が瞬時に形を変えまして睨むような表情を作ったのです。

 非情に私を嫌悪している風な相貌。ですが、表情からでは読み取れません、妹の優しさが言葉として現れていました。

「龍一お兄様、御一人ですか・・・、お食事はもうお済みになられたのでしょうか」

 無理をなさっている風な抑揚を付けません声で私へと問い掛けます翔子。

 私を嫌っているはずですのにどうしてなのでしょう、私を呼ぶときは『お兄様』といいます敬称をお付けになるのか。

 まあ、その様な事を気にしていても仕方がありませんので、簡潔に言葉を返しましょう。

「いいえ、まだですが」

「そうで、ございますか・・・」

 妹は持っていましたお箸を音が立ちませんように静かに箸置きへ乗せ、すっと軽やかな動作で立ち上がりますと、私と目が合いません様にお顔を背けながら調理場へと行ってしまいました。

 私は空いています席の椅子を引き、そこへ座らせていただきました。

 それから十分くらいでしょうか、その位の時間が経ちますと、妹は平膳を持ち、戻ってきたのです。

「どうぞ」

 小さく、妹は言葉を残しまして、自分の席へと戻りましてskirtの裾を押さえながら、着席したのでした。

「翔子、有難う」

「客人を丁重にお持て成ししないと有りましては藤原家の名折れとなります。当然の事ですので、礼には及びません」

「はぁ、私は家族では無く、客人扱いですか、悲しいです」

 妹、翔子は私の言葉など聞く耳を持ちませんようで、無視し、食事を再開していました。

 妹の手料理を口にしましたのはもう、十数年も前の事になります。

 その当時でも立派な料理人に成れますでしょう才覚をお持ちでした。

 妹は孳々と積み重ねる方ですから今ではあの頃よりも格段に腕を上げているのでしょう。

 私は先ず、口の中を潤しますためにお吸い物から頂かせていただきました。

 塩一振り具合でその味の優劣を決めますとても純粋且つ単純で難しい料理。

 一口啜りますと、塩と白身魚から出ています旨味が絶妙に絡み合いまして、美味しいと言います単語以外見つかりませんその様な味を引き出していました。

「翔子、腕をお上げになりましたね。とても美味しいですよ」

 私の言葉に一瞬きだけ、照れるように嬉しそうな表情を妹は作った様にも思いますが、彼女は黙々と食事を続けていました。

「しかし、これだけ広い食堂だといいますのに寂しいですね・・・」

 誰に向けた訳でもありません私の言葉に、咀嚼していましたものを飲み込み、口元を食事用布巾で拭いました後、

「それはすべて、龍一お兄様のせいですわ・・・」

 その様に言葉にしつつ、睨み、また食べますことを再開していました。

 この分ですと今の妹にとって悪い事は全て私のせいにして仕舞うでしょう。

 それから、会話も交えませんで私にとって、翔子の出して下さった料理はどれも美味しいものでしたがとても寒い気分の夕食になってしまいました。

 私や父が日本を立ちます前のこの食堂の風景、虎次郎叔父や美鳳叔母、それと多くの使用人が同居して下りましてとても賑やか何物でしたのに。

 夕食の後片付けを終えました翔子は急須に入っていますお茶を注ぎながら、今までの沈黙を解いて下さいました。

「お兄様、本日はどの様なご用件で此方へお参りになられたのですか」

「とても大事なお話しです。今すぐにADAMと言います研究を行っています機関の運営を停止して下さい」

「どうして、その様な事をお言いになるのか知りませんけど、それは無理です」

「人命が掛かっていてもですか?」

「お言いになっております、意味がわかりません」

 私は施設停止をして欲しい理由を妹へ伝えました。

 その研究が貴斗達の死に関連しているのではないかと会話の中に交えますと翔子は動揺を隠しきれないようでした。

「分かっていただけたでしょうか?翔子」

「その様な事・・・、ご証明出来るのですか?証拠はあるのでしょうか?」

「このまま、その研究を続けて行きますのなら、翔子や洸大爺さんにでしたって・・・」

「仮令、それが本当な事でしても、今のグループに大きく貢献して下さいます医療部門の大元を止めるなんて簡単に出来ませんっ!」

「翔子、あなたの命が危ないと言っているのですよっ」

「もし、それほどまでにおとめしたいと言うのでしたら、お兄様が家督をお継ぎすれば宜しいでしょうに、その様な気、全くありませんくせに。グループの経営に口を出さないでください」

「しょうこっ!その研究のせいでこれからも、何方かの犠牲があっても、いいというのですか」

「もう、今更です・・・、貴斗ちゃんだって・・・、もういませんのに。私など、どの様になっても構いません・・・」

 私は妹の自身を粗末に扱おうとします言葉に、平手を上げていました。

「おにいさま?・・・、お兄様のおばかっ!お命を軽んじて居ますのはお兄様の方ではありませんかっ!何時も危険なお仕事ばかりして、お爺様や私の気持ちなど全く理解してくれませんで、どうしてお兄様はいつもそうなのです・・・、どうして」

 私は妹を泣かせて仕舞いました。そして、その様な言葉を残しました翔子は食堂から駆け出しますように出て行ってしまいました。

「老い先も短い儂の事なんぞどうでも良いが、翔子を泣かせるでないぞ、龍一」

 祖父は粗茶を『ずずっ』と音を立てながら、冷静にその様なお言葉を私へと向けました。

「何を言っているのです爺さん。貴方の先はまだまだ長いでしょうに・・・、それよりもですが、洸大爺さんは、どの様に思っているのですか?犠牲が身内に出てもその研究を続ける事に躊躇いはないのでしょうか」

「ふぅ」

 お茶を飲みまして口の中にたまりました空気を祖父は吐き出し、暗くなっています中庭の方へ目を向けました。

「全くためらいが無いと言うと、嘘になるが、もういまさらなんじゃよ。龍貴も、美鈴ちゃんも、貴斗も詩織ちゃんや、香澄ちゃんはもうおらんのじゃ。これ以上の犠牲が出たとしても大差など無いぞ。まあ、お主は無事に儂の所に戻ってきたようじゃが、そのアダムとか言う計画で犠牲が出るとして、またお前が標的にされようとも二の轍は踏まんじゃろうし、翔子はあれでいて、危険な事を敏感に悟る娘じゃ、大丈夫だろうて」

「それとここで計画を止めて仕舞っては、儂等の身内以外で犠牲となってしまった方々への裏切りになってしまうじゃろう?浮かばれんじゃろうて。なあ龍一よ、お主も分かっているので有ろう?大事の前の小事なのじゃ。一の犠牲で千も万人にも価値のある研究なら続けていて当然じゃろう。これは消して、藤原科学重工の利益のために言っておるのではないぞ」

「わかっています。爺さんは利益云々で会社を経営していないことは重々承知でしたから、ですが、洸大爺さんも司さんと同じ事を口にするのですね。残念でなりません」

 私はそこで言葉をとめまして、祖父を窺いました。

 祖父の表情、何処か遠くを見詰めています洸大爺さんは、言葉を更につづけてくださいました。

「お主は勿論、司もそうじゃろうが、戦争を体験した事の無い御主等では分かるまい儂等戦争を生き抜き、今こうして生き続けている儂等の生きる意味と、その信念を。さて、話しはここまでじゃ。もし、お主が家督を継ぐのであれば儂の全権を譲ろう。それで、計画でも何でもとめるが良かろう。全権を呉れてやったところで翔子が従うか、どうするかわからんがな。どうせ、今の龍一には継ぐ意志はないじゃろうがよ」

「ええ、お断りします。計画がとめられませんのなら、別の方法。私達の命を狙うものを捕らえるだけです、早々に。・・・・、・・・・・、・・・・・・ああ、そうでした、もう一つ、爺さんに尋ねておきたい事があったのですが」

「なんじゃ?」

「ミナモト・タイヨウとお呼びします方に聞き覚えはございませんでしょうか?」

「太陽か?源星雲中将殿のお孫さんじゃよ。もし、生きて居ったら五十二歳くらいじゃろうし、子供でも出来ておったなら、貴斗くらいの年齢じゃったであろうな」

 祖父の口にされた言葉はどれも完結推測、過去仮定形でした。

「うむ、おぬしのその顔じゃと、儂の言わんとする事が分かっているようじゃな。太陽はもう故人じゃよ。二十年前1990年にじゃ。で、なぜ、太陽の事をきくのじゃ」

「司さんが、アダム計画に恨みを持つ方がいるとすれば、その太陽と言う人物だろうと、言っていましたから。更に付け加えまして爺さんが言った事も・・・、・・・、・・・、翔子に今日の夕食、とても美味しかったとお伝え下さい、では失礼します」

「その様な事、おぬしの口でちゃんとつたえろ、ばか者が」

 私は祖父のその言葉に鼻で笑い、藤原家の広い屋敷から、出て行かせてもらいました。

 私はUNIO局員であります公務を一時中断しまして、ADAMの謎だけを追跡しようかと考えたのですが、日本に帰国しまして、すぐに私を復帰させて下さった大宮支部長に対します義理もありますので、UNIOの仕事と並行しまして、事を進めていくのでした。

 今は出来るだけ多くの情報が欲しく、私に協力して下さりそうな方にお声を掛けさせて頂きました。

 皆様協力的でして、多くの情報が私の手元に届けて下さいました。私はそれを整理し、纏めて行きます。やはり、未公開の研究でして、外への情報漏洩は皆無でした。

 そこで得られます成果は藤原医療総研の各部門から他の製薬会社や医療機器会社と共同研究により提供していますものと、なっており事実は真実と違う形で表を歩いているようです。

 藤原総研内部や研究団体側で利権絡みの争いや、研究に対する怨恨などを調査しましても何一つ、発見する事は出来ませんでした。

 販売側にとっては施設の研究は金の卵を産みます鶏ですし、研究施設側は何方もが自身の研究に誇りを持っており、現状の体制に不満をお持ちしている方はいませんでした。

 特に第三世代研究員達はその傾向が強いようです。

 第一世代、母、美鈴の頃から務めて居ます方も、まだ多く、生命応用部門の半数は第一世代の方達のようでした。

 第一世代の方々に、或る人物の印象を尋ねてもらったのですが、何方様も、その人物に対します印象は良好でした。ですが、私はどうしても、その方の事が気になって仕方がありません。

「本当に源太陽なります方はもう、お亡くなりになっているのでしょうか」

 曇天模様。雲が掛かりましてくすんでおります空を見上げながら、その様に呟いてしまいました。

 その様な私の姿を隣で見ています麻里奈。

 彼女はどの様な思いでこの様な私を見ていますのか知る由も無かったのです。

 その様な彼女は急に私の腕に絡み、身を寄せまして、

「今日も、寒いわねぇ、リュウ」と暢気に口にする、私の恋人以上、伴侶未満な彼女。

 決定的な事故との関連性、それが策謀によるものだといいます物証は見つかりませんで時間だけが無駄に過ぎてしまいました。

 もう、二十年前、当時、私がまだ十五歳頃に起きました事件をお調べしても、確たる物は見つからないでしょう。

 ですが、今は藁にもすがる思いで、貴斗、宏之君、雪菜君、そして、双子でありました事を知りませんでした弟が詩織君と同一視していました藤宮彩織君がお亡くなりになってしまった産技研での事故を調べてみようと思いました。


2011年5月5日、木曜日

 日本の暦の上では祝日であります本日。

 UNIOの局員で有ります私と麻里奈は無関係の事でありまして、公務を執り行っていました。

 就業時間を終え、二人で夕食を摂りました後に、三戸の産技研へと東京から向かったのでした。

 短い関東の冬も終わり、季節は春を迎え入れまして、一月が過ぎていました。

 冬の頃に比べますと日照時間は延びたものの、夕方六時半の頃を過ぎて仕舞えば太陽は沈みまして、辺りが闇に包まれてしまう事は変わりません。

 麻里奈が運転します道路より、地形的に低地に有ります産業技術研究所。長い坂道から進行します彼女の車両。

 車窓からその場所の方向を眺めますと施設内の建造物の三割以上から光が漏れていました。

「まだ、研究所は明るいようですね」

「何をいまさら、知らないで来たわけじゃないでしょう、まったく」

「まあ、そうなのですが。研究者の皆様、良くこんな遅くまでとお思いしただけです」

「龍貴小父さんだって、美鈴小母さんだってそうだったじゃない」

「たしかにそうでしたね」

 母、美鈴は私と妹を産んで下さりましても、仕事を優先させます方で弟が産まれ、日本に帰国しまして、父の実家で生活するまではほとんど、翔子と私に接して下さる時間は多く有りませんでした。

 構って下さらない母が特に恋しかった訳ではありませんが、弟、貴斗が誕生してからは私達三人へ平等に接して下さったようです。

 その様な意味でも私達、親子、兄妹にとって弟は特別な存在だったわけです。

 産業技術研究所。その施設は終戦後の1951年に建設工程が終了しました。

 GHQが今後の日本の事を考えて計画した政策の一部として設けられました研究機関です。ですが、GHQはその翌年の1952年に平和交渉が行われまして、研究所は一度も使われないまま閉鎖する形となりました。

 それからまた更に三年の1955年にその施設が当時のUSAの科学技術の粋が結集されたものであり、無駄に放置しては意味がありませんと気が付きました日本政府はその研究所を色々な手法を講じましてUSAから譲り受けたのです。

 その研究所で得られました成果は当時多岐に渡ります分野に貢献しまして、年を重ねます毎に小規模ながらも支部を各重要都市へと増やして行きました。

 今年で三戸特別区にあります、産技研は五十六年を迎えました。

 施設内は定期的に改築、増築などの手入れが入りまして、長い年月を頑張って来ましたが、それでも老いるといいます自然の摂理からは逃れられません。

 その老朽化は深刻なものでして、改築では直せないものばかりだそうです。その様な訳で今年一杯の運営が最後になるそうです。

 麻里奈は研究所の近くのOne coin perkingへBM Miniを停車させました。

 研究所と言いますものは本来門の出入りを厳しくするものです。ですが、古くから運営されており、それなりに規模が大きければ、最新のSecurityの強化の導入は容易ではありません。

 付け加えまして、年内で閉鎖されて仕舞う予定のこの場所に最新技術を持ちました保安は要らないと言うことでしょう。

 ここ三戸の産技研はその様な理由である規則を知っていれば、入行証明や入行許可書などなくとも簡単に出入りできて仕舞うのです。

 それがどのような手段なのかお教えで来ませんが、麻里奈と私はその方法を使いまして、中へ入ろうとしていました。

 研究施設内の路地に踏み込みました私達、すたすたと歩きます私へ、尋ねる麻里奈。

「こんな遅くに来て当てはあるの?」

「当ては無いですが、当地で起きました事故などは資料として多くの場合、施設の図書室や館に時事録として保管されているものです。それにこの時間残っていて下さればの話しですが、その頃よりお勤めしています研究員にお話しを伺えればと」

 この施設の建物の位置は両親が勤めています頃、何度も足を運ばせていただいていますのでしっかりと記憶していました・・・、のはずでした。

 私は立ち止まり、正面の図書館を確認します・・・、一瞬の眩暈。脳の視神経をつかさどります部分に歪み、雑音。

 TVで電波の受信状況が悪く映像の乱れの時に拝見で来ます白黒の砂塵が頭の中を過ぎりました。

 目頭を軽くなで、今一度、確認するのです。

 然れど、目の前の情景は変わらず、建物すら有りませんでした。

 私の今の姿にきょとん不思議そうな表情で私を見ていました。

「どうかしたの?」

「あ、はい、私の記憶違いだったのでしょう。この場所に夜勤の研究者向けに開かれています図書館が有った筈ですが・・・」

「ねえ、リュウだいじょうぶ?UNIOの仕事以外にこんな事ばっかりやっているから疲れがたまっているのと違うの」

 麻里奈は私へその様な気使いな言葉を掛けて下さいましたが、心の内側では、

『龍一の今の行動って・・・、あれの影響なの?だって、もう、一年も経とうとしているのにまだ癒えていないというの?光姫にはこの事を報告していたほうがいいのかな・・・。でも、経過が良くないからって、連れて来いって言いかねそうだし、若しもそうなったら、色々と調べなくちゃならないとか言って、龍一を・・・、・・・、・・・、そんなのはだめ』

『折角助かった龍一を研究の対象として好い様に弄られたくない。光姫がそんな事をするとは思えないけど、他の研究者達がどんな風に思うのか分からないし・・・。だから、今の事は見なかったことにして、しらんぷりしよ・・・』

 その様な事を考えているなどと察して上げられませんが、彼女が何かを考えています仕草、おなかの辺りで抱えました右腕の甲に左肘うぃ乗せまして、垂直に立ちます腕とその左の軽く握りました拳、その親指を軽く顎に添えまして、下を向く姿が私の目には映っていました。

「どうしました、麻里。何か、私おかしな事を口にしたのでしょうか?」

「だって、よくみてよ、ちゃんと建物あるじゃない。それに照明が弱くて判り辛いけど、ちゃんとあそこに図書館って明記されているわよ。どうしちゃったのよ、リュウ」

 麻里奈にその様に言われまして、今一度、正面を向きなおすと、強烈な違和感と共にまた私の脳内に『ザザッ』とNoiseが奔りまして、そこには昼と夜の違いがありますが、私の記憶の中に留まっています、昔と同じままの建物がはっきりと存在していました。

「ああぁ、そうですね。一体私はどこを見ていたのでしょう。しかし、残念です、どの様な解釈を講じましても、開館している風では有りませんね。閉まっています場所を無理に開放すれば、警報がなるでしょうから、他を当たりましょう」

 先ほどの違和感など元から無かったかの様に忘却してしまいまして、施設の明かりが付いています建物の方へ歩き始めました。

 古い場所ですが古さを思わせません、構内の歩道と道路、更にそれに沿うように並び、手入れが満遍なくされています低木。

 多くは有りませんが一定の間隔で設けられています光源の弱めな街灯。

 静まった周囲ですが、歩行中、特に恐怖を感じさせますような陰湿な雰囲気は感じられませんでした。

 前方に一瞬、小さな光点がちらついたように見えましたが、その真上の照明がその光点を隠しまして、その持ち主すら僅かな間、私達から、見えなくなったのです。

 Flashlightなどを携帯していますのは大よそ、施設内の警備員でしょう。しかし、ここで不審な行動をすれば、還って怪しまれますので、普通に通り過ぎましょう。

 白衣を着ていないから怪しまれるのではとお思いになる方もいるでしょうけど、研究所だからと言いまして、誰しもが白衣を着用している訳では有りませんよ。

 作業服で研究をされる方もいるしCasualな格好でそうする方もいますし、人それぞれです。白衣を着まして研究をしなければ成らないと言う規定は何処にも無いのです。

 研究者だからといいまして、誰もが白衣を着ていますという認識は間違いです。

 ですから、麻里奈と私は普通に、余所余所しくせずに歩き通そうとしました。軈て此方へと移動していました点光源の持ち主が、次第に明らかにされるのです。

 警備服の方では有りませんでした。その方が近づくにつれ、姿がはっきりと分かるくらいの距離になりますと、その方からお声を掛けて下さったのでした。

「うぅん?随分と久しい顔だね。藤原夫人の長男君、龍一君だったね」

 とても懐かしむような声でその様に口にします男性の方。年季が入っているようですが、とてもその方に似合いますDouble trench coatを羽織っています壮年で眼鏡を掛けて居ります紳士風な方。

 私も知っている方で名前をはっきりと言葉に出来る方ですが、どうしてでしょう。

 名前が分かるのに、私の記憶の中にその方の表情が浮かんでこないのです。

 油絵で描きました肖像画の油が乾ききっていない顔をぐにゃりと掻き乱しました映像しか私の中には浮かびませんでした。

 良く有ります、顔は覚えていますが、名前を思い出すことが出来ないその逆、非常に矛盾していますことを今、私は体験しているようでした。

 常人でしたら、普通、視覚野からの情報を元に状況を判断するものですが、どうも、今の私は耳から入りました情報から声を掛けて下さりました方の名前を判断したようです。

「此方こそ、大変ご無沙汰しております、庵原錬太郎さん。この様な遅くまで、ご研究ですか?」

「いまは独り身ですから、自宅へ戻るよりもここで研究にいそしんでいるほうが・・・、今年でこの場所も閉鎖となりますし・・・、やる事は案外と多いんですよ」

「庵原さんには私よりも二、三歳とし上のご息女がいたと思いますが、ご同居されていないのですか?」

「娘も男を見る目が無くて、私と似たような者と結婚し、いまは海外の研究所。たまに孫の孫達の顔を見せにやってくるくらいで・・・」

と遠くの空をぼんやりと寂しげに庵原氏は眺めていましたが、

「そうそう、私の事はどうでもよいが、君の両親は元気でやっているかね?」

 その様に尋ねてきます、壮年紳士へ、私は表情を変化させませんで、亡くなった事を伝えていました。

「そうか・・・、済まない事をきいてしまったようだね」

「いいえ、その様な事は、先ほども言葉にいたしたように、もう十年も前の事ですから」

「そうか・・・、なら、君はどの様な用事でここへ来たのかね?」

「約二十年前の事故に付いて調べるためです。もし、庵原さんがその事に付いて何か覚えているのでしたら、是非お聞かせ下さい」

 私が彼にそう尋ねますと、庵原氏はその出来事を思い返そうとします仕草をしまして、暫くし、お話しが長くなるであろうから談話室でと言う事でそちらへと移動させていただきました。

 二十年前の事故、書面を読みながら話している訳ではありません、それを庵原氏は事細かく彼が憶えています事を語って下さいました。

 庵原氏のお話しが長かったので要約しますとこの施設で使われています液化気体類を管理しています業者の不手際だとか、その様な結果でした。

 更に、業者側もその事故が起きてしまいました根本的な原因の究明が出来ていないと言うことでした。

 お話しが終わりますと帰宅途中でTAXIを用いまして自宅へと向かわれるようでした庵原氏を麻里奈に送って頂き、礼をしっかりと述べてから私達も東京へと戻ったのでした。

 核心的な成果は得られませんでしたが、次にどのような行動を取れば良いのか、その切掛けを得られただけでも今は大事なのです。

 その様な事から今度はその当時管理を任されまして、その事故の当直でした作業員に接触してみようと思います。


2011年5月7日、土曜日

 職務で麻里奈と別行動を取っておりました私は、二日前にお会いした庵原さんのお話しで、液体窒素の状態変化と熱膨張によります貯蔵庫の爆発だそうでした。

 可燃性で無い物質の増加爆発でしたので貯蔵庫付近での火災は思ったほど大きくは無かったそうでしたが、可燃性物質を扱っていた部署もありますので、膨張熱による引火が二次災害を起こし、そちらの方は大変だったそうでした。

 施設の三分の一が倒壊するほどの大事故だったのに・・・、亡くなった方、重傷を負うことになった方等は・・・、すべて私の知る人物等ばかり、他の研究員達は軽症ですんでいたようです。

 研究所職員八十一名、施設内従業員三百名、その日の外来の方々27名、内、死者二名と重傷二名。

 言うまでも有りませんが亡くなられた方は藤宮夫妻と柏木夫妻の長女であります彩織君と雪菜君。

 重傷を負いまして、辛うじて生き延びる事の出来ました私の弟、貴斗と私達の従弟であります宏之君でした。

 約四百名の中で、一割も満ちていません確率の中で人的被害を受けてしまいました親達が全員ADAMに関係していますと言う事を偶然と片付けてお終いとするには非常に理に反しているような気がするのです。

 少しでも今、ADAMの事を知ってしまいました私に取りまして、何処の何方かの采配が有ったと臭わせる十分な内容です。

 Motorcycleを運転中に考え事をするのはとても危険ですが、その考えが尽きました頃に新日本液化気体株式会社(Neo-Nihon Liquid Gas Corp. NNLG)、産技研の液体窒素を扱って居りました業者、その本社へと到着しました。

 東京都内にありましたので、それ程時間が掛からずに来る事が出来ました。

 当時の産技研の液体窒素運搬および保守を行っていた方が今はこの本社へお勤めしていることは昨日中に調べて起きましたので問題ないです。無論、土曜日であります、今日も出勤していますことを含めてですが。

 蛇足になってしまいますが、現在は大きな武器製造組織等の掃討戦がありませんので、国内のテロが起きそうに無いかや、その様な組織と関係しそうな人物の調査を行って居ります。

 UNIO職員の諜報活動は超極秘事項ですので、皆様方、私が口にしますUNIO関連の事はけして他の方に漏らさぬよう注意してください。

 もし、彼方の口からそれが他の方へと流れたと分かった場合、私は彼方を始末しなければなりませんので、その様な事はけしてさせないでください。

 幾ら公務だからと言いましても私に銃の引き金を引かせ、人の命を殺めさせないでください。

 私が銃口を向けますのは人の命を奪おうとします武器だけなのですから・・・。

 秘密裏に暗殺されて仕舞う彼方はいつの間にか周囲からひっそりとお姿を消されまして、彼方をお知りになる方等の記憶からも軈て消え行く次第です。

 そうなるのはいやでしょう?ですから、他言無用をお願いします・・・?申し訳ございません、物語が脱線し掛けてしまいました。

 面会手続きを前日に行っていました私は直ぐにその従業員とお会いし、二十年前の事故で覚えている事を聞かせていただきました。

 管理業務を行うその方が一番、爆心地に近いはずでしたのにどうして、大きな怪我も、死の招きからも避ける事が出来ましたのか納得が行きますお話しを聞かせていただいたのです。

 1990年、今の様に携帯電話が流行する以前のその時代、主流の連絡手段となっておりましたのはPager、日本で言いますポケベルと公衆電話を併用したものでした。

 液体窒素を補充していましたその方にポケットベルからの呼び出しがありまして、画面表示を確認しますと、会社からのものだったようでして、補充していた液体窒素の作業を一旦停止させまして正式な手順で終了させ、公衆電話へと向かったのでした。

 研究所の各居室等には外線が使用出来ます固定電話が設置されていたようですが、使用できるのは研究所の職員のみとなっており、他の方は施設内に備え付けてあります公衆電話を使わなければならなかったそうです。

 貯蔵庫から直ぐ近くに公衆電話が有ったそうですが、そこは他の方が使用していた為に研究所入り口付近まで移動するはめとなってしまったらしいです。

 その方が受話器を上げまして、会社に電話を掛けようとしましたときに事故は起こってしまったとの事でした。

 私はその方からお話しを聞き終えますと、深々とお辞儀をしまして、建物の外へ出て、その会社の前の植え込み近くで考え事をさせていただきました。

 今から思いますことはあくまでも憶測でありまして、何一つ証拠の無い事です。

 ポケットベルは個々に設定されています番号の電波を受信しますと反応するものです。

 先ほど話した方が当時持っておりましたPagerと同じ受信番号で低温下でも動作します時限発熱装置を前もって準備しまして、それを貯蔵槽に放り込んで起きまして、作業していましたその方へ連絡を入れ、その他かが現場から離れた頃に設定時間を廻り、作動したと言うことでしょう。

 もしも、私のこの考えが正しいのなら矢張り第三者の介入が有ったと言う事になります。

 それと、この件に第三者が係わっていますと思い至る点の鍵となりますのは先ほど面会した方から聞きました当時の事で、彼が確認の電話を本社に入れました時に、会社側は彼に連絡など入れていませんとの事でした。

 彼のPagerに表示されていましたのは会社の電話番号。しかし、会社の職員は誰も、彼に連絡していないといいますこの矛盾。

 大きな資金源であります取引先との関係を悪くさせますような事故を、不利益になりますような事をその会社が実行するはずもありません。

 その会社の職員達が嘘を吐いていないとは限りませんが、私は無関係だと思って居ります。

 産技研の事故を計画した人物が手際よくNNLGに忍び込み、彼のPagerに連絡を入れましたのか、若しくは協力者がそうしたのではと私は考えたのです。ですが、その様な不審な人物はいまだ見つからずじまい。

 数日後、当時、NNLG社から、彼のPagerに本当に連絡が行ったか、どうであるかと言います通話記録を調べてもらうようにお願いしました友人から連絡が入りまして、結果はYES。

 NNLG社のどの部屋から彼に掛かっていたのかも判明しました。場所は彼の所属しておりました部署です。

 それが分かれば次に行いますことは何方が掛けたのかを特定することです。

 その部署には当時から勤続しています方々は彼を含めまして四人しかおりませんでした。

 彼を含めません三人も、当時は社内勤めではなく、遠地でのお仕事だったようです。彼に連絡をするために態々本社まで戻って来た様な形跡は見つかりませんでした。

 今度は当時、勤務しており、転職や、退職された方々への調査へと移行しました。

 人数は多く有りませんでしたが、UNIOのお仕事と並行しておりまして大分時間を取られてしまい、現在は六月の中旬に入って居ります。

 UNIOの方の仕事、ある事件の調査報告書をまとめながら、私の思考はUNIOの仕事とは全く関係ありません貴斗達の方の調査をまとめていました。

 産技研での事故を調べて大よそ、一月。核心に近づけているはずなのですが、容疑者は見つかりませんでした。

 調査した対象人物にはしっかりと当時の不在証明がありました。裏づけもちゃんと取れている方々ばかりでして、私も四方八方から調べつくしたのですがおかしい点も見つけられず産技研事故とは無関係と言います事をはっきりとさせただけでした。

 ですが、一人だけ、確認出来なかった方がおりました。社内勤務でした金売佐喜治なる人物です。

 産技研の事故より半年くらい前に入社したばかりの新人でして、その事故の数日後、人身事故で亡くなった方でした。

 関東県外児童施設の出身であり、身内はそこで育った方々。東京の方へ出てからは施設と音信不通となり、その人物の葬儀などは行われず、葬儀業者にそのまま遺体処理されまして無縁仏となったようです。

 非常に疑わしき人物ですが・・・、

「りゅうっ、ねぇ、りゅうってばっ!!!」

「えっ、あ、ハイなんでしょう、麻里」

「なんでしょう、じゃないでしょう?さっきからお昼にしようっていってるのに・・・、また、お仕事以外の事を考えていたわね?」

「そんなことはありませんよ、この調書をどのように書き進めるべきかを考えていたのです」

「うそ、ばっかり」

 腕を組みました麻里奈はその様に私へ返しまして、全く信用していませんとその様な目で此方を見て下さいました。

 彼女はその様は視線を私に向けますが、私は飄々とした態度と、何時も崩さない小さな笑顔のまま、弁当を広げ、それを食べています支部長へ、

「私と麻里は食事に出かけますので、何か急用の際には此方へ連絡下さい」

 声と一緒に携帯電話を示しながら、UNIO支部事務局を麻里奈と一緒に出て行きました。


2011年6月29日、 水曜日

 弟貴斗が二十一歳を迎えようとしました年に、遭う事になってしまいました弟の交通事故。

 現在はそれに関連しますことを調べているときでした。

 これが故意によりますものなのか、そうでないかの検証を本日は行っていました。

 加害者になってしまわれた方は藤原科学重工の取引先であります三友貿易の社長令嬢がお乗りしていました車両の運転手。

 当時、三友貿易の取引先の一つが周年の催しを開く予定でして、社長他の重役出られないと言うことで、社長令嬢で有ります神奈川麗奈が出向くことになったそうでした。

 晴天でした空が急に曇りだしまして、初めは緩やかでした雨脚が、視界を容易に遮って仕舞うほどの本降りとなった矢先に起こってしまった交通事故。

 その時間帯での幹線道路の渋滞、激しい雨で、その道路を走ります車両の進行速度は更に落ちまして、開催時刻に間に合いますように必死になります運転手。

 その様な状況で、車両固定電話が鳴り、それに対応します運転手。

 その電話は主催者側からの物だったようです。運転手は交通状況を、連絡を入れて下さった方へ伝えますと、相手側は迂回路を指示したそうです。

 運転手は指示どおり、車を走らせた折、視界が悪くなっていました前方にふらりと姿を表してしまいました貴斗を轢いてしまったとの事。

 この内容から、もし、これが故意による事件でありますなら、疑うべき、人物は三人。

 神奈川麗奈、その運転手と電話を掛けてきたといいます主催者側の人間。

 更にこの三人から最も疑わしき、人物がいるとすれば主催者側。ではそう思い至ります理由を述べさせていただきましょうか。

1、神奈川麗奈は内の取引先であり、その社長令嬢が自社に不利益になるような事をするでしょうか?

 家庭内の事情と彼女の性格からしましてありえません。

 彼女が自身の家庭に対して、内の会社に対して、更に個人的に貴斗に対して、恨みなど持っていません事はちゃんと調べさせていただきました。

 何より、彼女はまだ、彼女自身や貴斗が物心付きます前に祖父、洸大がお酒の入りました何かの催しの際に弟の許婚候補として、上げてしまいました方でもあり、年頃になりました麗奈本人、その事を受け入れていまして、好いてもいたようです。

 稀に会うことの出来ます機会を楽しみに待つほど貴斗の事を気に入っていたようでした。

 その様な彼女が貴斗を傷つけるような事を計画しまして、それを実行に移す事など無いでしょう。

 現に、撥ねてしまった相手が近い将来、自身の夫になるやも知れない貴斗だと知った時は相当心に傷を負ったらしく、祖父や、妹等に度々、頭を下げに足を運んだとの事でした。

 祖父洸大は可愛らしい女性に鼻の下を伸ばす方でしたので、麗奈の真摯で慇懃な謝罪に甚く感銘を受けたそうです。

 これが、彼女を除外します理由です。

2、次に運転手。長年社長令嬢の運転手は護衛を兼ねまして勤めてきました人物であり、仕事にも彼女にも忠実で、とても人柄の良い当時は三十半ばの方でした。

 彼女にも、彼女の家族にも、運転手兼護衛の仕事にも不満や恨みが無かった裏づけは取っています。

 運転技能も運転手を本職としていますので上級でした。これは彼の主観では無くて、周りの評価、客観から見たものなので信用して良いでしょう。

 当時、天候の悪い中、電話の受け答えをしながらの運転でしたが、両手は操舵を握ったまま、Hands freeでのやり取りだったとの事で意識を電話からの会話だけに取られる事はなかったはずです。ですから、程度の差はあれ、仮にも評判の高い運転手なら、急な飛び出しがあったとしても酷い重傷を負わすほどの事故には至らなかったはずです。

 それでも貴斗が重傷を負ってしまったのは、何か特別な要因が有ったに違いなであろうし、更にこの運転手も、礼節正しく、麗奈とは別に祖父へ何度も謝罪に訪れたようでした。

 この様な考えから、除去法で主催者側を疑う事にしたのです。

 その様なわけで、主催者側に関します資料を集めまして、それを眺めながら、あれこれ考えていますと、

「りゅぅ~~~いちくぅ~~ん、こまりますよぉ、あんまり暇だからと言って、職務とは関係無い事をこの場で行っては。私どもの給料は国の税金からだけでなく、世界の税金からも支払われているのですから」

 支部長からお咎めを頂いてしまいましたが、部下思いの彼ですから、その様な言葉をいいつつも、

「勤務中にやるのであれば、私の目の届かないところでやってちょうだいねぇ・・・。さぁ~てぇ、今日のお昼はなにがいいかなぁ」と声に出しながら、窓の外を眺めたのでした。

 支部長のあの態度と口ぶりは昼食を奢れと言っているようなものでして、本日は麻里奈と一緒に昼食を摂れませんので、支部長と麻布十番にあります、美味しいと評判の良いお店、グリル満天星へ向かいました。

 私はそこでオムハヤシを注文しまして、自分でも作れますようにとじっくりと味わい、食べさせて頂きました。

 それから、午後はしっかり、職務の方を全うし、麻里奈と一緒に帰宅する、彼女の運転する車中、主催者側で怪しい点がないかを探していました。

 主催した企業はSSIと言います医療関係の会社です。

 どこかで耳にしたことがありますような社名ですが、記憶が不鮮明の為に思い返すことは出来ませんでした。

 当時、神奈川麗奈の搭乗しまた車両を運転しておりましたその車へ連絡を入れた方の素性を調べましたその資料。

「ふぅ、またですか・・・」と呟く私。

「どぉったの?リュウ」

「ああ、いいえ。また、私が知りたかった方が故人となってしまっている事に聊かの懐疑をもちまして・・・」

 そうなのです。今私が麻里奈に答えましたように、運転手に電話を入れた方はSnow board旅行中の雪山で遭難してしまったそうで、失踪扱いになってしまっているようです。

 その人物の名は富士川勝

 何か胸に突っかかりますような失踪。

 この調査をして下さった友人にもっと深くこの点を調べてもらいましょう。

 更に合わせて私の気が離れません金売佐喜治に関しましても今一度調べてみた方がいいのでしょう・・・。


2011年9月6日、火曜日

 現在、私は麻里奈とご一緒にUNIOの仕事でUSAに滞在していました。

 貴斗達の死が事故でなく事件であります事をはっきりと結びつける事の出来ます証拠は現在も見つかっていませんが、怪しいと思う点はそれなりの件数が浮上して来ました。

 ですが、まだ、真相に至る扉に通じます道へと足は乗せていないでしょう・・・。

「ねぇ、ほんとにやるの?」

「ええ、勿論です。私は、私の決めた事に忠実に実行する性格ですから、麻里も私のその様な性格はご承知でしょうに」

 UNIOの仕事を無事完遂しました私達は今、余暇を利用させていただき、States of The Texas、Dalasから北東に30miles離れたMcKinneyの郊外にいました。

 第四十三代大統領を二期、八年間を務め、任期終了後、政界から身を退きました人物が現在住まう大邸宅が私と麻里奈の目に映っていました。

 Summer Timeの午後十一時五十二分。その家の明かりが点いています場所は一箇所のみ。今回の私がTargetとします方の寝室。

 事前に入手しました情報通りであれば間違いなく、前大統領がその場所にいるはずです。

 情報提供者も信頼の置ける方ですから、疑う事はありません。

 政界から一線、二線退いた方ですが、今でも要人である事は変り無い様でして、日付が替ります数分前ですのに邸宅庭にはSO(Security Officer)またはSG(Security Guard)が周囲を警戒していました。

 SP(Security Police)は公的機関所属です。

 重要度のRankからいまして、現在、公人でない彼に配備される事はありません。従いまして自前雇用した方々が今、眼前の邸宅を警護していることになります。

 警護が警察機関の方々ではなく、民間警護の方々なので、少しばかり問題が起きましても、事後処理はどうとでもなります。

 警護に当たっています人数は屋外に十二人、邸宅内に六人。

 全員が一箇所に居るわけではありませんので麻里奈が一緒に居て下さればこの程度の数を騒がれもせずに無効化するなど容易い事です。

 大よその場合、二人から、三人を一組にして行動する事が基本となっています。そして、今回のこの家の警護に当たって居ます方達もそうでした。

 どの様な順路で彼等が家宅の周りを巡回していますのか、既に分かっていることでした。

 そうです、UNIOのお仕事でStatesに訪れ日時が事前に大宮支部長からお達しがありました時から、綿密に計画していました事ですので私の行おうとしています事の準備は万端です。

 まあ、実際行動をして見ませんと予定通り事が運ぶか、どうかはしりえませんが。

 私は懐中時計の針が十二時を示すまで、麻里奈と共に静かに待ち続けました。

 一刻、一刻と時が迫りくる、数秒前から秒読みを開始したのです。

「9、8、7、・・・・、3、2、1、0」

 囁くように口にしまして、十二時になると同時に私と麻里奈が隠れて居ます低木を通り過ぎようとします、二人の護衛を沈黙させました。

 MovieやTV dramaの様に体術で人に声を上げさせず気絶させますのは先ず不可能です。

 CHLOROFORMを布に染み込ませて、それを嗅がせまして、一瞬で気絶させますのも無理です。

 では、今、麻里奈と私はどの様に二人を黙らせたのでしょうか?

 これを読む皆様方が実践しないと信じまして・・・、・・・、お答えする事にしましょう。

 別に相手を気絶させる必要は無いのです。

 正常な判断や行動、言語野を錯乱させて声を出させなければ良いのですから。

 殿水、へべれけにさせて上げれば良いのです。

 高純度の気化酒。相手のお酒に対します耐性に左右されますが、純度が高ければ、高いほど、効果は比例します。比較的簡単に手に入りますのは医療用で100%純度に近い消毒用のあれで、それを布に染み込ませて嗅がせて差し上げれば大概に気絶するか、意識が朦朧となりまして、不審人物が現れたと他の方に伝えることが出来ません状況に追い込む事が出来ると言う訳ですよ。

 更に持続性もあり、私が事を成し得るまで護衛の方は何も出来無いでしょう。

 ただいま気絶させました、お二方の手に飛行機機内で頂ける小瓶の酒類の様な瓶を彼等に握らせ、次の目標へと向かいました。そして、また一人、また一人と酒気を帯びさせまして、行動不能にさせて上げるのでした。

 今私は、元大統領が居るはずの寝室前の扉を指紋が残りませんように手袋を嵌めていました手で握っています。

 先ほど護衛から拝借しました銃を右手にしっかりと持ち、頭の中で次に進める行動のSimulationをしたのです。

 麻里奈の方を見まして、中に入る事の意思表示を顔で示しますと、扉を開けまして、一気に元大統領の処まで詰め寄りまして、移動の際に服のPocketから取り出しましたGolf Ballをその方の口に押し込み、拳銃を額に捻り込ませました。馬乗り体勢で私。

「Did you remember? Almost ten years ago the surprise attack case happened at San Diego Neo Energy development laboratory.(十年くらい前の事です、サンディエゴ新動力開発研究所(SDNEL=エスデネル)の襲撃事件の事を覚えて居るでしょうか?)」

 元大統領は驚愕の表情のまま横に振っていました。

 その様な態度を示します元大統領に突きつけていました拳銃の引き金に力を込めるような動作とり、普段と変わりません表情、小笑で、

「You tell me truth!!(正直に話して下さい)」と丁寧に言ったつもりでした。

 彼は更に顔を横に振りまして、止めて下さいといいます素振りを見せたのです。

 もとより、人をあやめる積もりは有りませんので私のはただの演技ですが・・・、そんな私の行動へ、麻里奈が突っ込みを入れて下さるのです。

「リュウ、そんなもの口に詰めて居ちゃ、元大統領さん、何も喋れないじゃない」

「フフっ、そうでしたね・・・。I’m gonna take a ball. Don’t make noises, don’t shout, and don’t scream! Okay? Also you must tell me truth you know all! If you don’t obey that I said, I shoot you.(ボールを取るから騒がないでください。それと彼方の知っている事すべて話して下さい。もし、言う事を聴かないのであれば、殺します)」

 微笑みながら私の意志を伝え、彼が頭を縦に振った事を確認してから口に詰め、吐き出さない様に手で押さえていましたGolf ballをとりだしまして、彼の話し出すのを待ったのです。無論銃口は突きつけたままですが。

 それから程なくして、元大統領はおびえた表情のまま語りだしてくれたのです。大よそ三十分くらいでの内容です。すべてを聴き終えました。

「Must keep an engagement I say, if you talk to anybody that we came here and menaced you, I'll announce to the mass media about your darkest graft cases nobody knows now. So, it means you will be spoken unkindly throughout the life. Do you understand?(私のこれから言う事を守りなさい。もし、私達かここへきて貴方の事を脅したと誰かにはなしたのであれば、私はまだ誰も知らない貴方のどす黒い汚職を報道機関に公表します。貴方は生涯後ろ指をさされまして、生きて行くでしょう。ご理解いただけたでしょうか?)」

 目の前の驚愕の表情のまま、私の言葉にコクコクと頭を縦に振りました。私は再度確認の意味で彼に通達しました。

「Don't forget about I said.」

 その言葉の後に元大統領に約束させますと、護衛を無効化させたのと同じ方法で、彼もまた意識を失って頂きました。

 麻里奈と私は何事も無かったように平然とその邸宅を出たのです。付近の住人に気付かれませんように静かに・・・。

 私達は遠くに止めていました車に乗り込みまして、その足で、Dallas市街に向かい、Fort Worth空港近くに有りますDays Innで一夜を明かしまして、お昼少し前の便でCalifornia San Franciscoへと向かう予定にしていました。

 運転は私がし、麻里奈には後部座席を倒して、休んでもらって居ます。

 Motelに向かっている間、私は先ほどの元大統領が語りましたことをもう一度思い返していました。

 SDNELを襲撃し、そこのすべての研究資料を奪え、等と言います命令をPPMへ下していないと、彼はその様に言いました。

 更に、イラク戦争後のその一体に置けます石油権限の確保が確実となら無かった場合、今後、国内保有資源で賄えなくなる石油。

 その価格の高騰は避けられないであろう事を予測していたらしく、石油や原子力に変わる高効率な新動力の開発にいち早く着目しており、色々な研究の中で私の父が筆頭となって進められていましたADAMの研究成果が上がりますことに非常に関心と期待を持っていたと、彼は言ったのです。

 そして、ADAMの研究達成も父、龍貴で無くては完成しないであろうとも思っていたそうです。

 それ程、期待していました父を殺してまで、研究資料を入手しようなどとPPMを動かすはずも無いし、もし、殺してまで手に入れたいのであれば、確実な新動力の開発が終わってからにするとはっきりとその様に述べていました。

 最後に、期待していたその研究が彼の私設軍によって潰された事を知った、彼はそれを実行した隊員全員を処罰したとの事。

 実行部隊の指揮を執った人物は終身刑で今も服役中だそうです。

 何故、その様な事が起こったのか詳しい事を知りたければその人物に有って聴いたほうが確実だと、その人物が収容されて居ます監獄の場所を教えていただきました。

 場所はThe states of Illinoisにあります、連邦刑務所。

 本当でしたら、私がしっかりと確認した方が良いのでしょうけど、今は可能な限り時間の無駄を省きたかった。

 その様な訳でイリノイ州は足を運ぶには遠すぎますし、滞在期間も限られて居ますのでIndianapolisの知り合いに確認のお願いをしようと運転しながら計画をまとめたのでした。

 これまで、色々と調べて行きます中で、私の命が救われました一因に父、龍貴の親友でありますGeorge Leopardi氏が居た事を知りました。

 その方は父と共に新動力開発の研究を務めていました方であり、生体冷凍保存技術の権威でもある方でした。

 私がPPMに撃たれましたあの時、UNIOのStaffsの一人がゲオルグ氏と縁の方でして、私の救命の為に藁をもすがるおもいで、ゲオルグ氏へと連絡して下さったそうです。

 当時、PPMの襲撃がありました際、彼はInglewoodと言いますLos Angelesの南方約10milesの町にいてくださった事で、私が倒れた折、すぐに駆けつけてくださったのでした。

 虫の息ほどの私を冷凍保存しましてStatesより、Singaporeへと輸送されまして、ADAMと呼ばれます医科学施術により、九年の歳月をえまして、この様に復活したのでした・・・。

 San Franciscoに午後一時、少し過ぎた頃に到着しました私達を空港のArrivalで待って居て下さいましたゲオルグ氏と面会しまして、私がこうして無事に助かった事を彼に深く感謝しました。

 それからご一緒に昼食を摂りながら、談笑を交えまして、私が訪米しました経緯を彼に語りました。

「Ryu-ichi, please keep your mind. Your life is not only for you. You know I mean?(龍一君、忘れないで欲しい。君の命は君の物だけで無い事を。分かりますね、分かっていただけますね?私の言った意味が)」

 私はゲオルグ氏のその言葉に微笑んだ顔で・・・、いつもと同じ表情ですがその顔で頷いたのでした。

 それから、彼と分かれます際に、故シフォニー君が眠りますChurchyardの場所を伺いまして、そちらへと足を運びました。

 広がる丘の向こうに海岸が望めます眺めの良い共同墓地。Californiaの南方と違いまして少し湿りました北部のSan Franciscoに吹きます緩い風がその墓地の叮嚀に手入れされています木々の葉を揺らし、小さなざわめきを奏でていました。

 麻里奈はそのそよ風にかぶっていました帽子が飛びませんように、Skirtがめくれませんようにとそれぞれの手で押さえていました。

 私はその様な彼女の愛らしい姿を見、微笑み返し、彼女が笑顔で返しました後、シフォニー君の居場所を探しました。

 彼女の碑の前に途中で購入しました白百合の花束を捧げ、黙祷しまして、左腕を腹部の辺りに沿え、右手で十字を切りますと、右手の人差し、中指を軽く、額に触れるか触れませんかの位置で祈りを捧げました。

 隣に立ちます麻里奈も私同様にシフォニー君へ祈りを捧げていました。

 お墓参りが終わり、墓地を出ようとしたときです。突然、麻里奈がお声を掛けてくださったのです。

「ねぇ、リュウ。シフォニーちゃんの事、ちゃんと覚えて居る?」

「ええ、はい、それがどうかしましたか?」

「あのね・・・、・・・。私が弟君と一緒に日本に帰ってから暫くの間、会っていなかった詩織ちゃんと再会したの。貴斗君の恋人になりたての彼女の頃よ。私はちゃんと彼女の事を覚えていたのに、詩織ちゃんは私の事をまるで知らない初めて会った他人のような目で見ていたし、実際忘れているようだったわ、忘れていたって表現は妥当じゃないんだけど・・・、記憶にない、そんな感じ。まあ、そんな事ですごく悲しかったけど、でもね、そんな事よりも、もっと驚くことが有ったの・・・」

「どの様なことでしょうか?」

「言葉で言ってもピンとこないでしょうから」

 麻里奈はそう言いますと、pass caseを取り出しまして、そこから一枚の写真を取り出し、私へ見せたのでした。

 その写真の中には詩織君と弟が写っていました。

 背後から弟の首へ手を回し、弟の横に顔を並べます彼女。

 その中の彼女を確認するよりも先に弟の方へと目が行ってしまいました。

 弟がその中で作っています表情は私や家族の者へ一度も見せた事がありませんような顔。

 顔を紅くしまして、恥ずかしがっていますその表情。

 その初めて目にします貴斗のその新鮮な顔に少しばかり、見惚れてしまいました。

「ちょっと、ちょっと、何処見て惚けてんのよ龍一っ!まったくこのデンブラー(デンジャーブラザーコンプレックス)。ちゃんと詩織ちゃんの方をみなさいっ」

 麻里奈にその様な突っ込みをされてしまいましたので、仕方なく、詩織君の方へ、視線を移したのですが・・・、『ザザッ』と一瞬脳内に砂嵐が巻き起こりまして、視覚が不鮮明になってしまいました。

 私は目頭を押さえまして、再度、写真の中の彼女の表情を確認しました。

 とても愛らしく微笑ましい彼女の笑顔・・・、麻里奈の言葉どおり、驚きを隠せずには居られませんでした。

 私の記憶の内にあります、シフォニー君と詩織君を見間違えたのかと思えてしまうほど顔の作りが同じだったのです。

 違いは頭髪と瞳の色・・・。

「やっぱり驚いたのね、リュウ」

「ええ・・・」

 私は驚きのあまり、その様にしか、返答出来ませんでした。それから、私はその写真を自身の懐へしまおうとする。

「こらぁっ!りゅぅ。なに自分の物にしようとしてんのよ。返して頂戴。それ一枚しかないんだからっ!」

「ありがたく頂戴しますよ、愛しのマリー」

「そんな事言ってもだめなのっ!」

 麻里奈はその様な言葉を吐きながら、私が写真をしまいこみました胸pocketからスルリとそれを奪い返されますと、素早く、且つ大事そうにPass caseに収めてしまったのです。

「焼き増し出来ないわよ。私ネガ持ってないから」

「それでは誰にして貰えばいいですか?」

「おしえなぁ~~~いっ!」

 おどけた顔を私へ向け、その様にお答えしました麻里奈は急に車の方へ走り出してしまいました。


2011年9月29日、 木曜日

 日本に帰国してから、私の旧友達から詩織君が起こしました事件と涼崎翠君、結城弥生君が巻き込まれました交通事故に関します調書が届いていたのです。

 また、その中には不可解な事が記述されて居ました。

 その事件や事故に係わる人物がそれらに係わる前に失踪や、死亡していることです。

 鞍馬昇斗と鳥羽忍。

 偽りの名前、それらが意味する事とは、私は昼食を麻里奈と摂りながらその様な事を考えていたのです。

 思考中の私は広げました左手で顔を覆っていました。

 その様な私の姿を両手の上に顎を乗せました格好で飲み終わりましたIce coffeeに挿していましたStrawを口先で噛み遊ぶようにゆっくりと上下させて居ます麻里奈が黙って見ていました。

 どのくらい時間が経ったのか分かりませんが、Strawを左手で摘み、静かな動作でGlassの中に戻しました彼女。

「麻里、貴方はこれまで私達が調べて来ました貴斗達の件どの様にお考えでしょか?」

「えぇえぇぇ、それを私に聴くのぉ?」

「確認のためです。私が今思っていますことと、麻里奈が思っていますことは同じでしょう・・・」

「リュウリュウの生存を知るまでは深く考えなかったけど、やっぱり可笑しいわよね、貴斗君達の死を事故と片付けてしまうには不審な点が多すぎるわ。それに係わる人物の中に必ずと言っていい程、行方不明か事故が起こる前よりも故人になっている人達が居る事」

「それらの人達がお互いに関係している風ではないけど怪しすぎるわ。もし、これからも貴斗君達が事故では無く事件に巻き込まれたんだと断定して推し進めていくのなら、不審人物の関係性を追って行けば答えに辿り付けるんじゃないのかな?」

「そうですね、麻里奈もその様に考えて居ますなら、このまま、もっと深くそれらの人物に点いて調べましょう・・・。ただ、それらの人物に根本的に関連していますか、今は怪しいのですが、二十年前の産技研の爆発事故に何らかの形で絡んでいるのではと思っています金売佐喜治。

涼崎翠君、彼女が高校生の頃に接触していました三多久留須、唱野甲斐、反町駈」

「神奈川麗奈君付きの運転手が貴斗を轢く様に誘導したのではと思われます富士川勝。藤宮詩織君が涼崎春香君を殺害するために使用しました道具を取り揃えました三津ノ杜諒と言う方の家庭の借金返済を手助けしたことになっています鞍馬昇斗」

「隼瀬香澄君に最後に会った人物、TAXI運転手、武蔵弁慶。翠君、結城弥生君を撥ねまして、過失傷害罪に問われました大型輸送車の運転手へ科せられました実刑から釈放金で身柄を解放させました鳥羽忍。これらの人物の繋がりを明らかにすれば、私達は事の真相に辿り着けるでしょう・・・、ADAMとどの様に係わっているかさえも」

 私はそこで言葉を締めますと、Table脇の筒に入れてあります会計の紙を取りますと、先に席から立ちまして、麻里奈へ会計を済ませましょう、とその様な事を身で表しましてそちらへと向かったのでした。

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