ゾンビなバイトリーダー田中

恋するメンチカツ

〜プロローグ〜

「明日もバイト入れる?」


 挨拶より聞き慣れた店長の質問。


「はい」


 息をする様に俺の口から出る返事。これが田舎の国道沿いにひっそりと店舗を構えるコンビニ内での変わり映えのない会話だ。


 店舗の3倍はあろう駐車場には数年前からパンクして動かない持ち主不明の軽自動車しか停まっておらず、こんな寂れたコンビニでする仕事といえばひたすら時間が経つのを待つ事。仕事というよりもう修行だ。近隣に住宅は無く、駅からも遠いせいか、訪れるお客が少ないのはもちろんの事、アルバイトも俺ひとりだ。


 バイトリーダー田中と俺の名前だけが書かれた手書きのシフト表には売れっ子芸人ばりに1日残らずびっちりとシフトで黒く塗りつぶされている。


 別に店長の助けになりたいとかそういう気持ちは特に無い。他にやりたい事も無く、転職する気力も無いという理由だけで、もう5年近くこの生活を続けているのだから困ったものだ。


 鬼の様なシフトに入る理由も、コンビニにいても家に帰っても時間が経つのを待つだけの日々なら、何となく時給が発生した方が俺もこの社会で生きていていいのだと認めて貰えている様な気がするからだ。


 時々思う、寿命が尽きるまで時間が経った時に俺は幸せだったと言えるのだろうか。金があれば幸せ、友達がいれば幸せ、恋人がいれば幸せ、子供がいれば幸せ、寂れたコンビニのレジで1人黄昏ながら考える。


 毎日、死んだ様に生きている俺にとっての今の幸せは……バイト仲間が欲しい。ただ、それだけかな。

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