第14話 YUKIとの出会い

 やって来たユニフォーム姿の人は、男の子だった。非常に若い男の子。俺は腕時計を見た。13時6分。うーん、ユキさんが来る時間ぴったりだと思われる。他にユニフォーム姿の人物がいないかと、更に遠くの方に目を凝らすも、青いユニフォームは見当たらない。ブログによれば、ユキさんはユニフォーム姿で通っていると書いてある。それが本当かどうかは分からないが・・・。

 俺が遠くの方に目を凝らしていると、ユニフォーム姿の男の子が、俺の目の前で立ち止まった。俺もその男の子の顔を見る。すると、その男の子は目を見開いた。

「あ・・・せいたろうさん、ですか?」

「え?あ、はい。そうです。」

「あの、僕YUKIです。」

「ユウキ、さん?」

「はい、あの、ツイッターで・・・。」

はぅ!俺はハンマーで頭を殴られたような気がした。目の前に星がちらつく・・・というのは大袈裟だが、とにかく衝撃を受けた。

「今日はどうしたんですか?活動は?」

俺は、ちょっと言葉を無くした。だって、だって、だって・・・。

「せいたろうさん?」

「あ、ああ。いや、そのう・・・あれ?どうして俺の事が分かったんだい?」

「せいたろうさん、写真載せていますよね、ツイッターに。あのほら、飛行機で東京に向かってますって。」

そうだった。すっかり忘れていた。

「それにしても・・・いや、おっちゃん驚いたよ。ユキ、いやユウキ君の文章は、何て言うか、こう、大人っぽいからさ、こんなに若い人だとは思わなかったよ。」

女性だと思った事は言わない方が良かろう。ユウキ君はちょっとはにかんで、

「そうですか?大人っぽい、かな。ありがとうございます。」

と言った。

 そうか、自分の事を「私」と書いていたから女性だと思ってしまったわけだが、男性だって「私」と書く事もある。そしてだからこそ、大人っぽい感じを与えるのかもしれない。この子の書く文章は。

 とにかく、俺とユウキ君は並んで一緒に桜坂を上り、鼓坂を上り、UACへ向かったのだった。

 ユウキ君は、鷲尾勇樹と言って、19歳の少年だった。俺の恋は終わった。いや、むしろ男の子で良かった。お陰でストーカーにならずに済んだ。

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