小さな蝋燭の火
門前払 勝無
〇
「小さな蝋燭の火」
酔った勢いで遊んだ。
遊びとは偽名の女と友人を介して知り合って一晩だけの遊戯だった。
しかし、一ヶ月後その偽名の女サオリから連絡が来た。
LINE
妊娠しました
え?
俺は即答で「責任とる」と電話した。
「責任ってなに?」
「君が嫌じゃなかったら正式に付き合わないか?その子には罪は無いから育てたいと思う」
「子供は産みたいけど貴男の子供は産みたくないから無理です」
「遊び人と思われるかも知れないけど、頑張って良い父親になるよ」
「遊び人はどんなこと言っても遊び人だよ。遊び人が何を言っても信じられないから無理です」
サオリは電話を切った。
俺は……。
妊娠しましたと言う文字を見たときに嬉しかった。クズの俺にも微かな未来が出来たと思った。何をしても満足しないで生きてきた俺にも満足できる未来が……出来たと思った。サオリと言うあまり知らない相手だが少しずつ歩み寄って1つの人生を創り上げていけるかもと思ったが、サオリからしてみれば俺は遊び人と言う印象でしか無いのであった。
過ちはその後取り返せない事を心に刻まれた瞬間であった。
あれから数年ー。
俺は一人で誰とも接しないように暮らしている。年に一回、鎌倉にある長谷寺に水子の供養をしに行っている。帰りに小町通りの団子屋さんで2本団子を食べる子供と俺の分、その向かいにある蕎麦屋で蕎麦を食べて鳩サブレーを買って帰る。
1年に一度の俺の行事ごとである。
おわり
小さな蝋燭の火 門前払 勝無 @kaburemono
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