難易度インフェルノの世界へようこそ~え?イージーを選んだ?バグですね。補填を差し上げますのでそれでご容赦ください~

まんじ

第1話 インフェルノの世界へようこそ

そこは何もない暗闇だった。

そう、そこには何も存在していない。


――俺自身すらも。


何故なら、俺はもう既に死んでいるからだ。

だからここにあるのは魂だけだった。


死因は、よく覚えてはいない。

まあ自分の最後なんて、別に思い出したくもないからいいけど……


「貴方には次の人生が与えられます」


神はそう俺に言った。

そして飛ばされたのがこの暗闇だ。

きっとここは俺を転生させるための、揺り籠の様な物なのだろう。


突然ファンファーレが鳴り響いた。

そして目の前が白く輝き、空中に文字が浮かぶ。

まるでゲームのオープニングのワンシーンの様に。


見た事のない文字だったが、何故だか何が書いてあるのかは理解できた。

空中に浮かんだその文字は、難易度を選択してくださいと書かれている。


難易度は上から順に――


・ノーマル

・ハード

・チャレンジ

・インフェルノ

・イージー


の5つだ。


どうやら転生先の難易度は、自分で選べるらしい。

有難い事だ。


しかし妙だな……どうでもいい事ではあるが、インフェルノとイージーが下で並んでいるのが少し気になった。


ゲーム等では大抵、難易度選択は一番簡単な物と、一番難しいものは離れて配置されているものだ。

俺はそこに大きな違和感を感じる。


だがまあ、これはゲームっぽくあってもゲームではない。

神様がくれた生まれ変わりのチャンスだ。

些細な事を一々気にする必要は無いだろう。


そう結論付け、俺は迷わず選択する。

難易度イージーを。


折角転生するなら無双したいし、そもそも俺はヌルゲー派だ。

ぬるま湯でゆったりやらせて貰うさ。


俺がイージーを選んだ途端、それ以外の文字が白い炎がとなって燃え尽きる。

なかなかかっこいい演出だ。


ん?

いや待て?


ある事に気づく。

俺は間違いなくイージーを選択した。

文字が炎になって消えた時も、一番下の文字が残ったはずだ。


なのに何故か、イージーだった文字がインフェルノへと変化していた。


混乱していると、急に頭の中に女性の声が流れる。

そしてその声はこう言った。


「難易度インフェルノ。ガリアントの世界へようこそ」


と。


………………………………え?


インフェルノ?

冗談だろ?

ヌルゲー派だよ、俺は?


そんな心の声など無視して、黒い空間が割れる様に崩壊する。


そしてまっさかさまに俺は落ちていく。


難易度インフェルノの世界へと。

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