第159話159「操り人形(マリオネット)」

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第7回カクヨムWeb小説コンテスト】中間選考突破しました。

ひゃっほい!


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「異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜」

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——『学園長室』/『一掃作戦』作戦会議後の深夜


「⋯⋯ふむ。静かな夜じゃ」


 窓辺にて、この世界特有の二つの月⋯⋯『双月』を眺めながらポツリと呟くのは、部屋のあるじ、学園長⋯⋯ハンニバル・シーザー。


 ハンニバルは、ここで『ある者・・・』の到着を一人待っていた。すると、


 スッ⋯⋯。


「ハンニバル様」

「⋯⋯来た・・か」


 突然、部屋のドア近くに『黒装束』に身を包んだ一つの人影・・・・・が現れる。


「待っていたぞ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ドレイク・ガリウス」

「⋯⋯」


 そこに現れたのは一回生『Aクラス』クラリオン学園騎士団ドレイク・ガリウスだった。



********************



「⋯⋯報告を」

「はっ!」


 学園長は抑揚のない淡々とした言葉で指示を出す。


「先ほど、ターゲット・・・・・彼女・・が接触するのを確認。今回の『一掃作戦』の情報を流しておりました」

「⋯⋯なるほど」

「⋯⋯あと」

「あと?」

「首謀者本人・・はいませんでしたが、今回の件の『首謀者』との疑いが強かった者の名が二人のやり取りから出ました」

「何と! ついに⋯⋯かっ!」

「はい。魔道具でそのやり取りの一部始終は『収録済み』です」

「でかした! 素晴らしい働きだ、ドレイクよ」

「ありがとうございます」


 そう言うと、ドレイクは学園長に一礼する。


「⋯⋯して、その内容はどうじゃった?」

「はい。やはり、『彼女』はターゲットに利用されていたようです」

「⋯⋯両親か?」

「はい。『彼女』の両親はターゲットの手下に『一回生クラス編成トーナメントの開催一週間前』あたりからはすでに囚われていたようです」

「なるほど。大会一週間前あたりから⋯⋯か。正直気づかなかったのは失態じゃが、この動きを察知できてよかったわい」


 学園長が苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる中、ドレイクは話を続ける。


「『彼女』がターゲットがいる『研究室』へと足を運ぶと、そこでターゲットに『一掃作戦』の情報を提供。ですが、そこで『彼女』は『これを最後に抜けさせて欲しい』と懇願。しかし、ターゲットは『彼女の両親』の名を口に出すと、『そんなことできるわけないし、私が絶対に許さない!』と強く否定してました」

「なるほど。ということは、まずは⋯⋯⋯⋯そこの解決・・・・・じゃな」

「はい」

「『彼女の両親』の件はすでにこちらで把握・・してあるし、すでに協力者・・・にも大まかな話はつけてある」

「ということは、いよいよ『彼女の両親』を奪還する計画を進めるのですか?」

「ううむ⋯⋯それには、カイト君の『洗脳魔法無効化魔法』の完成が必須条件じゃ。その魔法が完成しないことには『一掃作戦』を実行には移せぬし、『一掃作戦』が実行できないうちに『彼女の両親』を奪還してしまうと『犯人奴ら』にさらに警戒され闇に潜られてしまう。そうなれば、尻尾を簡単に出さない奴らを捕まえることは困難じゃ。しかし⋯⋯」

「⋯⋯!」


 学園長は一度、大きなため息を吐いたあと、普段あまり見せない優しさと憂いを含んだ表情で静かに呟く。


「⋯⋯できれば『彼女』をすぐにでも救ってやりたい。『彼女』は『規格外の天才』と称され、周囲から大きな期待を向けられていたが、故にそれは『彼女』を孤独にさせた。そして、そんな『彼女』の唯一の心の拠り所じゃった家族である『両親』は誘拐され、さらに奴らはそれを使って『彼女』を⋯⋯自分たちの『便利な道具』として⋯⋯利用⋯⋯し⋯⋯た」

「⋯⋯学園長」


 それは『怒り』からくるのか、『悲しみ』からくるのか、それとも『両方』か⋯⋯。学園長は声も体も震わせながら想い・・を吐露する。


「頼むぞ、カイト・シュタイナー。お前の魔法完成にすべてが⋯⋯⋯⋯かかっておる」


 学園長は再び夜空の『双月』を見上げると、目を細めながらポツリと静かに⋯⋯しかし、力強く呟いた。



********************



——数時間前


 クラリオン王国騎士学園内にある『騎士団科』の各教諭用の部屋の一室。そこに『一人の少女』が入ってきた。


「⋯⋯来たわね、私の従順な『操り人形マリオネット』ちゃん」

「⋯⋯」

「何? 挨拶もできないの? まったく、これだから嫌なのよ⋯⋯世間知らず、常識知らずの『規格外の天才』って奴は。聞いてるの?⋯⋯⋯⋯⋯⋯レコ・キャスヴェリー」


 その部屋に訪れた少女——それはレコ・キャスヴェリーだった。


「⋯⋯すみません。ミモザ様」


 そうして、レコ・キャスヴェリーはゆっくりとそのドアを閉じた。

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