第101話101「決勝トーナメント一回戦(11)」
「それでは! 一回戦最終の第六試合。試合開始ぃぃーーー--っ!!!!」
ゴーーーン。
「カイト・シュタイナー。せめて、痛みを伴わずに一瞬で意識を刈り取って差し上げますわ」
「え?」
「お覚悟!」
ドンっ!
そう言って、リリアナが一足でカイトの懐へ入ると、
ガシ。
「⋯⋯え?」
カイトはリリアナが掌底を繰り出す
「なっ!?」
リリアナは慌ててバックステップでカイトから距離を取る。
「な、なんだ⋯⋯今のは? 何を⋯⋯した? 何をした、カイト・シュタイナーぁぁぁーーーーっ!!!!」
リリアナが驚愕の表情でカイトに叫ぶ。
「え? いや、リリアナ様の攻撃を止めただけですが?」
「い、いやいやいやいや⋯⋯! お前、今の
リリアナが「ありえない!」という表情で悲痛な叫びを上げる。
「お、おい、今のって⋯⋯⋯⋯どゆこと?」
「バカ! お前、わかんねーのかよ! リリアナ様が言っているのは、カイト・シュタイナーていうあの推薦ヤローが攻撃を防いだんじゃなくて、
「こ、攻撃が始まる⋯⋯前っ?! そ、それって、攻撃を予測したってこと?」
「知るかよ! ていうか、攻撃を予測したからって言っても、あんな
「⋯⋯な、なるほど」
舞台横で見ていた一回生の言う通り、カイトはリリアナが攻撃を繰り出す
結果、常識を遥かに超えた動体視力を手に入れたカイトは、このリリアナの掌底を
つまり、カイトがやったことは『予測』ではなく、単なる『目で捉えただけ』という⋯⋯⋯⋯実にシンプルで、且つ、誰にもマネできない芸当であった。
「⋯⋯あ、あり得ない。そんなこと⋯⋯⋯⋯あってたまるかぁぁぁーーーっ!!!!」
そう言うと、リリアナが再度前に出てカイトに迫ると、拳、蹴り、肘の連撃を放とうとする。しかし、
パシ! パシ! パシ! パシ! パシ! パシ!⋯⋯。
そのリリアナが打とうとする連撃をすべて初動で止めるカイト。それは観客から見ると、ただ、リリアナの手や足や肘にカイトが手を当て続け、その乾いた音が会場に響き渡るという⋯⋯何とも異様な光景が広がっていた。
「⋯⋯異常だ」
「ああ、異常だな」
「カイトのあの強さ⋯⋯あれはもう、異次元過ぎる」
「全くだ」
リリアナとカイトの試合を見ながらそんな言葉を交わすのはレイア姫ことレイア・クラリオンとガス・ジャガー。
「しょ、初動を止める、だと!? し、信じられん⋯⋯こんなことが⋯⋯なぜできる!?」
「⋯⋯カ、カイト・シュタイナー。彼の強さは、もはや、一生徒としてのレベルを遥かに超えています! こんな⋯⋯こんな『怪物』が一回生⋯⋯
滅多に動揺することのない生徒会長エリナ・クインズベルと副会長セリーヌ・ジュリアーノが、目の前の光景に体を震わせていた。
その動揺は、生徒たちだけでなく会場にいる
「な、なんだ、あの動きは!? 初動を止めている⋯⋯だとっ!? あり得ん! あり得ないだろ、そんなことっ!?」
「こ、ここまでとは。これがカイト・シュタイナー⋯⋯」
カイトの異次元の強さに目を見開いて動揺するジャガー財閥ランドルフ・ジャガーと、嫡男エミリオ・ジャガー。
「⋯⋯たまげたな、おい。本当にあいつ人間かよ? ていうか、一回生⋯⋯十歳とか、何かの間違いだろ?」
「え、ええ、本当に⋯⋯信じられない芸当です。あのハルカラニ家でも
「おい、ケビン! アルフレッドは⋯⋯騎士団長アルフレッド・ヴェントレーは、このカイト・シュタイナーの異常な強さを知っていたのか!?」
「わ、わかりません。もちろん、カイト・シュタイナーの脅威は『グラン・キャンバス大渓谷事変』である程度は知っていたはずですが、まさかこれほどまでとは⋯⋯。団長もどこまでカイト・シュタイナーの強さを知っていたのかは謎です」
「⋯⋯と、とにかく。この大会が終わったら、アルフレッド⋯⋯いや、まずは学園長に一度話を聞きに行く」
「ハンニバル・シーザー様に⋯⋯ですか?」
「ああ。もしも、このカイト・シュタイナーの強さを学園長⋯⋯ハンニバル・シーザーが初めから知っていたのであれば『学園長推薦シード』の件も理解できるし、同時に⋯⋯⋯⋯これまでの騎士団の膿を一掃するチャンスとして動いている可能性さえあると俺は踏んでる!」
「ま、まさか⋯⋯っ!?」
「わからん。わからんが、もしそうだとして考えれば⋯⋯辻褄は合う!」
「わかりました、父上。私が直接アルフレッド団長にお声がけして、大会後すぐにハンニバル・シーザー様との面談の約束を取り付けます」
「ああ、頼む」
そう言って、冷や汗をかきながら舞台を眺めているのは、カスティーノ家当主ルドルフ・カスティーノと、嫡男ケビン・カスティーノ。
舞台の外でも様々な動揺が走る中、舞台上では息を切らしながら連撃を繰り出していたリリアナの攻撃が止まる。
「そ、そんな⋯⋯。こんなバカげた⋯⋯ことが⋯⋯ハアハア」
リリアナは肩で息を切らしながら、顔面蒼白で目の前の現実を受け止められずにいた。同様に周囲の観客もまたカイトの強さの異常性に言葉を失っている。そんな中、
「あ、あれ? な、なんか、妙に静かですね⋯⋯たはは」
『自重』を何処かに捨ててきたようなセリフを吐くカイト・シュタイナーの姿がそこにあった。
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