第92話092「決勝トーナメント一回戦(2)」
「では早速、決勝トーナメント第一試合を始めたいと思います!」
司会のフェリシア・ジャスミンのそのアナウンスを合図に、第一試合のイグナスとカート以外の俺たちは舞台横に用意されている『決勝トーナメント選手用の観覧席』へと移動。イグナスとカートは舞台のお互いの開始位置へと移動し、そのタイミングでレフリーも舞台へと上がってきた。
「よう、イグナス。特訓場以来だな」
「⋯⋯カート」
「俺はよ、特訓場ではお前に一度も勝てなかったがよ、今度は負けるつもりはねー」
「ふん。こっちだってそのつもりだ」
「へっ! 勝負だ、イグナス!」
——決勝トーナメント第一試合『イグナス・カスティーノVSカート・マロン』
「ルールは予選トーナメントと変わりません。それでは第一試合、試合開始ー!」
ゴーーーーン!
「「
二人が
「はっ!」
「何っ!?」
カートが魔法を繰り出すと思いきや、イグナスに急接近し体術を繰り出してきた。
ドガガガガガ!
「くっ!?」
「オラオラオラー! 止まらねーぞ!」
カートはパンチや肘、蹴りなど連続攻撃でイグナスに魔法を使う隙を与えない。
「イグナス! お前の魔法威力は脅威だ。だが、逆にそれをわかっていれば魔法攻撃を
カートは宣言どおり、イグナスに魔法を使わせないよう距離を縮めた攻撃を展開。イグナスは徐々に舞台の端へと追い詰められている。実際、カートは元々体術も得意ということもあり、イグナスは完全に防御してきれてないのか、何発かパンチや蹴りをもらっていた。
「へへ⋯⋯悪いが、この試合勝たせてもらうぜ、イグナス!」
「⋯⋯なるほど。
「何?」
「こんな展開⋯⋯⋯⋯俺が予想しないとでも思ったか?」
「っ!?」
ダン!
すると、イグナスが
「
すぐさま、氷魔法を展開。
「うおっ!?」
カートは急いでその『
「そこだ!
カートが離脱する動きを予測し、その先へ風魔法を展開。魔力量が増えたイグナスの『
ガガガガガガ!!!!!
「ぐぁぁぁぁーーー!!!!!」
カートはイグナスの『
ワーン、ツー⋯⋯。レフリーがカウントを取る。誰もが決着はついたと思っていた。⋯⋯が、
「ま、まだだ。まだやれる! やれるぞ、俺はぁぁぁぁーーーー!!!!!」
カートはかまいたちの刃で無数の裂傷を受けたこともありダメージがかなり大きいようだが、それでも立ち上がってファイティングポーズを取った。
「いいぞ、頑張れーーーーーっ!!!!」
観客もカートの『強い気持ち』に熱い声援を送る。
しかし、イグナスはカートが立ち上がるその瞬間、カイト式魔力コントロールで
「っ!?」
「カート。しぶといお前なら絶対にあの攻撃でも立ち上がると思っていたよ」
「⋯⋯チッ。ここまでかよ」
「振拳・一ノ型『
ドン⋯⋯っ!!!!
「うごぁっ!?」
イグナスがカートの
レフリーはすぐに『レフリーストップ』を宣言すると、急いでスタッフを舞台へと駆けつけるよう指示した。
「勝者はイグナス・カスティーノ選手! しかも、最後の技は武闘術の『技』の中でも習得が困難と言われているあの『
「「「「「ワァァァァーーーーーーーーー!!!!!」」」」」
フェリシアの解説を聞いて、観客から大きな声援が上がる。
「⋯⋯大丈夫か、カート」
「ああ、何とか、な」
医療班のスタッフが治癒魔法をすぐにかけたおかげで、カートはすぐに意識を取り戻していた。
「やっぱ、すげぇーよ、お前⋯⋯。さすが、ガス様がずっとお前のことを『ライバル視』していたのがわかるぜ」
「フン! お、俺は別に⋯⋯な、何とも思ってないがな!」
イグナスが頬を染めながら悪態をつく。
「おーおーおー。褒められ慣れてないのは相変わらずだな。これが、カイトの言う『ツンデレ』か。だいぶ、わかってきたわ」
「や、やかましい! そんな減らず口叩けるならもう大丈夫だな。俺は行くぞ」
「い、いてて⋯⋯。ま、待てよ、イグナス。肩くらい貸せよ」
「フン、甘えるな!」
そんなやり取りをしながら二人が舞台を去っていく。そして、そんな二人に対し、観客が拍手を送った。それだけ見応えのある試合だったということなのだろう。
決勝トーナメント一回戦は、イグナスがカートに勝ち、準々決勝へとコマを進めた。
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