第41話041「ヒロイン候補を探そう!(前編)」



——一週間後


 あれからイグナスとザックは和解し、イグナスは嫌々ながら俺の舎弟となった。


「お前がザックに無茶なことをさせない為、仕方なくお前の舎弟になってやる! 勘違いするんじゃねーぞ!」


『お約束ワード』をしっかり挟んでくるあたり、流石といったところである。イグナス・カスティーノ。またの名を『ツンデレBLボーイ』。


 そんな、なんだかんだで仲良くなった俺たちは、休憩時間やお昼休みでも一緒に過ごすようになる。


 正直、ザックもイグナスもすごく話しやすいから一緒にいてすごく楽しい。あと、手下連中も生意気だけど、それも含めてお互い気兼ねなくふざけられるから良い感じだ。本当、いい奴らばっかりだ。


 そうして、俺は少しずつ学園生活を楽しみ始めていたのだが、一つ、大きな問題に気づいた。


「というわけで、全然女の子との絡みがないのだが?」

「は?」

「へ?」


 現在はお昼休み。俺たちは学食で最近いつも利用している机に陣取り、お昼を食べていた。


「いや、だから⋯⋯僕の学園生活にまだ女子が登場してないんだけどって話!」


 俺はよそ行きの顔でザックとイグナスに再度、話の議題を上げる。


「ていうかよーカイト。お前、やっぱ普段はその『猫かぶりカイト』で行くのかよ?」

「もちろん! 僕の統計では『俺様展開の主人公』と『可愛がられる展開の主人公』だと、後者のほうがいろいろメリットが大きいということがわかっている!」

「えーと、カイト⋯⋯どゆこと?」

「意味わかんねーよ!」

「うん、大丈夫! ひとり言だから(キラっ)! というわけでさ〜、ザック諜報員⋯⋯」

「ちょ、諜報員⋯⋯っ!?」

「この学園のマドンナ的女子とか、噂の美少女とか、そのザックのマル秘最新情報教えてよ〜(猫なで声)」

「しょうがないな〜、カイトも好きだね〜」

「お、おい、カイト! ザックの情報をそんな破廉恥なお前の趣味に利用してんじゃねー!」

「はいはい。BL、BL」

「だから、なんだ! その『BL』てのはっ!!!!」


 俺はイグナスの『嫉妬やっかみ』を華麗にスルーしてザック諜報員様に耳を傾けた。


「そうだね。まずは基本情報から行ってみようか」

「基本情報?」

「ああ。現在の騎士学園二回生、三回生の先輩方だ」

「おお、いいね!」


 わかってるじゃないか、ザッきゅん!


「まずは、何と言ってもこのクラリオン王国騎士学園生徒会長のエリナ・クインズベル様!」

「おお! あのタカラジェンヌだね!」

「「タカ⋯⋯ラ⋯⋯ジェ⋯⋯ンヌ?」」

「あ、お気になさらず」


 いたなー。あの『宝塚の男役』みたいな美男子系美少女。美男子系美少女⋯⋯相反するはずの言葉が同居しているという奇跡。


「あー、でも今日も・・・食堂にはいないみたいだね」

「いつも生徒会室で仕事をしながらお昼を済ませていると聞いたことがあるな」

「⋯⋯」


 何気にイグナスも色々と情報持っているよな。とりあえず、ザックが生徒会長の情報を教えてくれた。


——————————————————


【クラリオン王国騎士学園生徒会長】


・左端『エリナ・クインズベル(三回生)上級貴族』

 身長:170センチ/髪:金色ロング/特徴:男女から大人気の美男子系美少女。又の名を『タカラ・ジェンヌ』。


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「じゃあ、次にね⋯⋯ほら、あそこの! 奥の! 三回生の人たちが利用しているあのテーブルの奥に座っている三人の女の子たちがいるだろ?」

「う、うん! なんかもう、すでにこの距離からすごい『美少女オーラ』放ってるね⋯⋯」

「あれが現在、この騎士学園のマドンナと言われている三人で、なんと三姉妹だ!」

「さ、三姉妹⋯⋯だとっ!!!!」


 三姉妹⋯⋯なんて素敵な響き。これは是非ともお近づきになりたいやつ。


 そうしてザックが一通り名前や特徴を教えてくれた。


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【騎士学園のマドンナと言われる三姉妹のお姉様方】


・一人目『フロレンシア・ハルカラニ(長女)三回生』

 身長:160センチ/髪:金色ロング/特徴:温和で誰にでも好かれる聖母のような優しさを持つ絶対癒し系美少女。

・二人目『マリアンヌ・ハルカラニ(次女)二回生』

 身長:155センチ/髪:金色ロング/特徴:好戦的だが情に厚く、弱者を常に守ろうとする騎士道系美少女。

・三人目『リリアナ・ハルカラニ(三女)一回生』

 身長:150センチ/髪:桃色セミロング/特徴:自由奔放。誰に対しても分け隔てなく接する愛想キュート系美少女。


——————————————————


「つ、つまり、三女のリリアナ・ハルカラニたんは、ぼ、僕たちと、同級生なんだね⋯⋯ザッきゅん?」

「誰がザッきゅんだ、誰が。あと、何だよ『たん』って? えーと⋯⋯リリアナ・ハルカラニは俺たちと同じ一回生でAクラスだな」

「上級貴族ハルカラニ家⋯⋯あそこは代々、美しい女性が多いことで有名な家だ」

「ほう! なかなか良い情報じゃないか、イグイグ」

「誰がイグイグだ、殺すぞ! まあ、同時にあの家の女性はあざとさ・・・・を武器にしている奴が多いというのも聞くな」

「いいじゃないか!『あざとかわいい』⋯⋯僕の領分だ! ばっちこーい!」

「はー⋯⋯アホらし」

「ザック! 次! 次! おかわり! おかわりプリーズっ!」

「えー⋯⋯そうだな〜。じゃあ、次は二回生いってみよっかー!」

「一個上の⋯⋯せんぱひっ! よし、ばっちこーい!」


 そう言うと、ザックはさっきの三回生のテーブルから右に視点を移動させる。すると、そこには女の子のグループが三つほどあった。


「まず、この二回生の三つのグループだけど、これは次期マドンナ候補と言われている女の子らが中心となって作っているグループだ。左端から⋯⋯」


 そう言って、ザックが二回生のおねいさま方情報を公開あそばせた。

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