第20話020「幕間:アシュリー・シュタイナーはかく語りき(2)」


 なんか、アシュリーの話が思ったより長くなっちゃった(てへぺろ)。

 幕間は(1)〜(4)までとなっております。


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 そんな、ある日のこと——私はお兄様と町へ買い物に行くこととなった。


 というか、お兄様が「アシュリーとずっと会えなかったから、お詫びに町で何かアシュリーの好きな物を買ってあげるよ!」と半ば強引に町へ連れてかれた。


 お兄様は昔と変わらず、妹の私を大好きだと普通に公言するくらいには愛してくれていた。でも、その頃の私は「お兄様は両親に見捨てられたかわいそうな子供だから、少しくらい相手をしてあげよう⋯⋯」くらいの気持ちで付き合っていたので、正直⋯⋯それが言葉にも態度にも出ていたと思う。


 お兄様も私の態度にすぐに気づいていたと思うけど、それでもお兄様は私のことを愛してくれていたので絶対に怒ることはなかった。


 そんな感じで二人で町を歩いていたのだが、お兄様と二人で歩くのを見られるのが嫌だった私は、ちょっした隙にお兄様の前から⋯⋯⋯⋯姿を消した。



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 そうして、お兄様から離れ一人⋯⋯町はずれを歩いていると、いつも私を見るとちょっかいを出してくる五人組の男の子たちに出くわした。


「おー、アシュリーじゃねーか! 偽物領主の娘じゃねーか!」

「そうだ、そうだ! 領主のくせに下級貴族なんておかしいよ! 領主は上級貴族がなるんだ! お前の父ちゃんは偽物領主だ! 下級貴族の子供より俺たち上級貴族の子供が偉いんだぞー!」

「銅貨3枚よこしな、アシュリー。町の通行料を僕たちに払えよ。そしたら見逃してやる!」


 こいつらは領内にある子供教室の同級生だが、私を見つけると「下級貴族のくせになにが領主だ」とか「上級貴族の俺たちの方が偉いんだ」などと絡んでくる。


 正直、今は剣術や体術、そして魔法も習っていたのでこいつらを倒すのは簡単だと思った私は、


「ふん、そんなもの払うわけないでしょ! 向こう行って!」

「なんだと! 上級貴族の僕たちに対してなんだその口の聞き方は!」


 そう言って、その中の子分みたいな男の子が私の髪を引っ張ろうとしてきた。


「はっ!」


 バシっ!


「痛てっ!」


 私の髪に手を伸ばしてきたその男の子の手を払い除けると、同時に平手でビンタを食らわした。


「こ、こいつ⋯⋯」


 今まで逆らわなかった私が手を出してきたので、その男の子は少しビビった様子を見せた。私は「お父様と比べたら全然大したことない」と実感し、抵抗する構えを見せた。


「へー⋯⋯お前、武闘術でも習っているのか?」

「そうよ! ケガしたくなかったらここから立ち去りなさいっ!」


 この頃の私はまだ身体強化ビルドは使えなかったけど、武闘術だけで対処できると⋯⋯⋯⋯誤った判断をしてしまった。


「お前ら⋯⋯⋯⋯囲めっ!」

「っ?!」


 すると、五人組の中のリーダー格の男の子が他の四人に指示を出すと私は一気に囲まれた。


「⋯⋯一つ教えてやろう。いいか? お前が仮に武闘術を習ったところで、身体強化ビルドが使えなければ男子の腕力には⋯⋯⋯⋯絶対に勝てない!」

「っ!!!!!」


 ガシっ!


 そのリーダー格の男の言葉どおり、私は囲まれた四人に体を掴まれると全く身動きが取れなくなった。


「う⋯⋯うごけ⋯⋯ない」


 これまで私はお父様一人だけと訓練してきたから、まさかこんなことで簡単に動きを封じられるとは思わなかった。


「さて⋯⋯それじゃあ、上級貴族に逆らうとどうなるか体で教えてやる。お前ら、こいつが騒がないように口を押さえろ!」

「も、もが⋯⋯っ?!」


 私は口を手で押さえ込まれた! 声が出せない!


 怖い! 怖い! 怖い! 怖い! 怖い! 怖い! 怖い!


 助けて! 誰か⋯⋯っ!!!!


 その時だった。


「だ、誰だ、おま⋯⋯っ?! い、痛ててててててててっ!!!!!!」

「⋯⋯おい、お前。誰の口を押さえている?」


 突然、背後から私の口を押さえていた男の子の手を取って、


 ブン⋯⋯っ!


「うわぁぁぁ!!!!!!」


 ドガッ!!!!!


 十メートルは離れているであろう壁に軽々と放り投げた。


「「「こ、このやろうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」


 すると今度は、私の体を掴まえていた残りの三人が背後でその誰か・・に襲いかかったようだった。しかし、


「ぐへっ⋯⋯!」

「あがっ⋯⋯!」

「うごっ⋯⋯!」


 バタ⋯⋯バタ⋯⋯バタ。


 三人は呻き声を上げ、あっという間に地面に倒れたようだった。


「⋯⋯お前ら。世界一かわいい誰の・・妹に手を出しているんだ?」

「え⋯⋯? そ、その⋯⋯声は⋯⋯」


 私が恐る恐るうしろを振り向くと、そこには⋯⋯⋯⋯今まで見たことのない怒りの形相をしたお兄様が立っていた。

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