反抗期少年ほだされる

ベアリーサ

第1話 破り捨てた成績表

 成績表を破り捨てたというのに、親はわざわざ学校に連絡して取り寄せたようだ。何という執念。相変わらず気が狂ったように怒鳴り散らしている。





 別に勉強をさぼっていたわけではない。授業だって真面目に聞いた。ノートだって綺麗にとった。ワークだってわかんないとこは何度も解きなおした。それでも覚えたと思った公式とか文法とか実際テストに出るとどれをどの問題に使えばいいとかわかんなくなるし、解き方は合ってるのに計算は間違えるし、赤点回避しただけでも頑張ったんだよ。僕にそれ以上求めたって、どうしようもないことぐらい高校受験失敗した時点で察してくれよ。もう諦めて放っておいて欲しい





でも親は僕の気持ちなんて知らず俺が一番傷つく方法で僕を責める







「正樹を見習いなさい。正樹は中2にして公問の進度が高2まで行ってるというのに、お前は学校の成績ですら赤点ギリギリでこれから一体どうするの!!本ばかり読んでないでちょっとは勉強しなさい!正樹は陸上で全国までいって、練習で大変なのにずっと学年一位を取り続けてるのよ。正樹にできるならあなたにもできるはずでしょ。なんで出来ないかわかる?努力が足りないからよ。血の滲むような努力をしなさいよ。あなたは人より劣ってるのだから人の3倍は努力しなさいって、いつもいってるでしょ?」





正樹、正樹、正樹、ほんとにうるさい!!僕が正樹になることなんて無理なのに。兄なのに弟に劣る僕が恥だと蔑んだ目で僕を非難する。


いつも僕のことはフル無視のくせにこういう時だけ干渉してきてなんなんだ。


僕の我慢の限界を超えて頭の中は真っ黒になる




「ああ?うるせーな中学校まではてめーのいいなりになって塾とか家庭教師とか親父の教育的指導とやらに付き合って睡眠時間だって3時間ぐらいしかなかったのに受験落ちたんだから仕方ねーだろ」





ムシャクシャして思わず手が出てしまう。





「痛い、痛いから、離しなさい!いきなりなんなの!このキチガイ!」


手に絡みついた髪の毛が気持ち悪くて、抵抗されたときに引っ掻かれたところが痛くて一瞬手の力が抜ける



「兄さん、落ち着いて暴力はだめだよ!それに母さんに向かって、てめーはよくないし、母さんも兄さんのこと心配していってるんだよ。兄さん最近おかしいよ、前はそんな言葉遣いしてなかったし、声を荒げることだって、暴力だって振るわなかったのに。それじゃあ父さんと同じだよ。」





「うっぜー!そーやってまたいい子ぶりやがって、本当は僕のこと見下してるんだろ!?できる自分は高みの見物ですってか!?まじでそういうとこムカつくんだよ!!」





 弟に押さえ込まれながらそれでも精一杯の抵抗を続ける。弟の腕力に屈する自分に虚しくなる。何もかも壊したくて仕方がない






「やめなさい悠理これ以上暴れるならお父さんにいいますからね!」



「これ以上暴れるも何も元からいうつもりだったんだろ、言えばいいじゃねえか!!でもな親父にやられたことは全部お前らにやり返してやるから、覚悟しろよ!まじこんな家さっさと出てってやる!」



あームカつく、まじでムカつく!あんたにはお父さんと同じ弁護士になって欲しかったとか知らないし



勝手に期待して勝手に失望しといて身勝手なんだよ!そもそも子供に手をあげる奴が弁護士とか笑えるわ!





でも、ほんとは







......誰かの何かのせいにしないと生きれない自分が一番ムカつく、逃げてばかりなのはわかってるけど逃げないと押し潰されてしまう。押さえつけられるよりも、溝内蹴られるよりも苦しいんだ。





 だれかもう解放してくれよ









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る