第1話

「はじめっ」


 息をするのもはばかられるような沈黙の中、試験官の鋭い声が飛ぶ。

 その声を合図に紙を裏返す音がして、一斉にパチパチという音がこだまする。

 この音をずっと聞いていたい。

 そう思ってしまうけどぐっと堪えて、私も目の前の紙面に集中する。

 えっと……


 614,092

 50,436

 496,107

 75,389

 1,960

 853

 27,549

 138,706

 3,974

 92,317

 675

 46,820

 2,158

 308,241

 582


 数字だけが書かれていて、私はそれを目で追いながら、手元のそろばんの珠を弾いていく。

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