理由
自殺するときに遺書を書く──
それを絶対にする必要はないのだけれど、私には一種の通過儀礼のように思えた。
未使用の真新しいノートを開く。
手近にあったボールペンを使って、一文字一文字、今までにないくらい丁寧に字を書いていく。
文章ともいえない短い文。
『死にたくなったから、死にます』
生きる理由がなくても生きることが許されるのならば、死ぬ理由がなくても死ぬって、そういう選択肢もあっていいはずだ。
生きる理由がないのは許されるのに死ぬのに理由がいるなんて、そんなの不公平だ。
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