第20話 伝導干渉波
迎撃部隊が市街で交戦、被害が拡大していく。
道はどこも、非難のためなだれ込む人々で混雑していた。逃げ惑う人々、破壊されていく街。
そんな中、
A斑の
時折、ヒューッと鋭い音をともなう強い風が吹きすさぶ。
「敵はこちらに向かって来てないようだけど、風が強くなってる」
『空気漏れが起きているんちゃう』
道を挟んで
『ああ、この音、気味悪いな』橋の対岸にいるシェノルがつぶやく。
見間違えるはずのない人、フェリシティ・ヘザリーバーンの姿だった。学校の制服姿、いつものブレザーではなくシャツの上に赤系のカーディガンを着ている。どこかへ向かって必死に走っていた。
「フェリシティ⁉ いったいどこへ?」
「カイちゃん、どした? フェリシティって、え、えぇ⁉」と
「フェリシティが、逆の方向へ向かっているっ!」
「おいカイちゃん⁉ どこいくのん⁉」
「フェリシティを連れて戻ってくる、ごめん‼ 少しの間頼む」
「おいっ! カイちゃん、こら、ちょっ、ちょ、おいーーーーーーーーーーーー‼」
人で混雑する道をフェリシティの背中を追いながら走る。スマートマグネットシューズを履いているとは言え、1/5Gでは思うように速く走れず、フェリシティに中々追いつけない。そんな中時折、パァーッンとラップ音が響き渡る。そのたびに意識が刈り取られそうになる。
「これが、
直接頭や体に伝わると、今度は体の内部から弾けるような音が響き渡る感覚。脳と
(だんだん強くなっているということは、
フェリシティが行った方へ走っていると、彼女の姿を再び見つけることができた。声を張り上げて呼び止める。
「フェリシティーッ‼」
フェリシティは自分を呼ぶ声に気付いて足を止める。
「
「フェリシティこそどこへ行くの? シェルターはそっちじゃない」
「うん。わかってるけど……私、軌道エレベーターの方に行かないといけないの」
「軌道エレベーターって、今は危険すぎる。敵がそっちへ向かっているとの情報も入ってる。とにかく今は避難が先だよ。一緒にシェルターへ行こう」
「ごめんなさい、チームのみんながいるの、行かなくちゃ」
そう言ってフェリシティは制止を聞かず、また走り出す。
「だから、そっちは危ないって」
「……お願い、連絡がとれなくて。港が攻撃を受けて、船からの伝言を、早く伝えに行かななくちゃいけないの、だから」
フェリシティは何か大事なことを抱えているような切羽詰まった様子。
「わかった。僕も一緒に行く」
フェリシティに根負けし、
道端に乗り捨てられていた車を見つけると、乗り込んでエンジンをかけるが、何度やっても作動しない。
「もう動かなくなってる。コンピュータもバッテリーもやられてるのか、これも敵の
車から降りフェリシティに尋ねる。
「
「うん、その地下に、実は軍の施設があって、たぶんみんなはそこにいると思う。今日はそこで作業する予定だったから」
二人は軌道エレベーターの地下に存在するという軍施設へ急いで向かう。
((パァーーーーーーーーーーーッン))
またも
「
フェリシティが立ち止まり、
「大丈夫。フェリシティは?」
フェリシティの様子をうかがうと、彼女はまったく平気な様子だ。
ナノマシンが神経伝達を補助しているため思考や行動を阻害されにくい。
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