襲来後 其ノ壱


 『皆さんにお知らせします。敵らしき者共の強襲は今のところ収まった様です。っあ、ちょっとお待ち下さい……王様からのご要望が……はい。はい。了解。引き続きの監視を承ります。プツン――』


 防御システムの一報が一方的に切れた? オイオイ、キミが自己完結してどうするの。 皆が、なんだコイツって思ってるよ、絶対。



 『ユーリアちゃ〜ん。お疲れのところ悪いけど、表玄関の様子見してきてくんないかな。』


 王からの直通念話だ。

 何時もながら、王らしからぬラフなお言葉ですね。 まあ、その若過ぎる御姿には相応そうおうしいかもですが、やっぱし王様なんだから多少なりとも威厳ある言葉遣いを、と私なんかは思ってしまう。


 『王様、御無沙汰しております。偵察ですね、承ります。表玄関までで宜しいのですか?』


 『ん、久しぶり、だったっけ。じゃあねえ、玄関出たとこの商店街も頼もうかなぁ。足を運んだ序でに、でいいよ。外に出るのが面倒で無ければ、ってことで。そんじゃ、ヨロシクでごじゃる。ップフフ♡』


 『……行ってきます。』


 (ナニよ最後の、ごじゃる、って。じいの真似? 否、悪影響を受けた? うん、絶対そうだ、じい所為せいに違いない。本当にあの老人は、何をやらかしてくれてるんだ。王の護衛は次から他の者を推挙しよう!)


 なんて考えながら崖を降り、通路を行く。 道すがらには、麦畑を押し潰したかの様に未知の物体らが倒れて果てている。 その様相は段階的に変化していて、さも、ある種族の進化の軌跡の如く。

 この何者とも分からない気味の悪い一個一個の、数を数え記録しつつ回収する、等という後処理は是が非でも御免蒙ごめんこうむりたい。


 そして表玄関に到着。 あっ、扉には板が打ち付けられてたんだ。 え〜ヤダー、外さないと外を覗くことも出来ないじゃない、面倒だな……ん? 王はこの事を知ってた? 承知であるからして、ああ仰られたのか。 ではじいが報告したのか? こんな些事を。 ったく本当にあのご老体、何を考えてるんだか。


 取り敢えず片方の戸板を引っ剥ひっぺがそうと、板の両端に指を掛け引っ張ってみた。 釘で固定しただけというのに、手荒くすると元の扉の枠ごと外れてしまいそうなくらい強固にくっ付いている。 これは釘を取り除かないとだ。 逆面が釘抜きになってる金槌であって良かった。 この点は時代遅れでいる、ご老体に感謝しておこう。


 さて手間取ったが邪魔物は取り去られた。 いざ外に、と扉を押し開こうとしてハタと思い出す。


 酔っ払いと同伴者がこれの外で倒れている筈、と。



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