第33話 女子会をしてみよう。その二

 後日、スケジュールの合間を作り、私は日本のクラスメイトと共にカラオケ店へと向かいました。


『ねぇねぇ~シェリー、最初に何か歌って?』

「わ…私?」


 初めて入った日本のカラオケ。元々日本発祥の物だけに、仕様としては海外のカラオケとさほど差はありません。


(操作はタッチパネル…。日本語仕様だけど、英語にも変更可能なのね。でも、日本語の勉強にもなるし、ここは日本語のままで行こうかな。)


 私はぎこちなさも少しありながら、選曲を進めていきます。


『はい!マイクどうぞ。』


 2本あるマイクのうち1本を渡されると、私はみんなの前に立ちました。


(ちょっと緊張するけど…なんとかやれそう…。)


 しばらくすると、曲のイントロが流れてきました。


『あ…これ知ってる!アニメのだよね』

『シェリーちゃん、そうきますか』


♪~♪~


「Breaking through the shining clouds Fly away」


『おー!英語!!すごーい』

『ちーちゃん、当たり前やん。本物のアメリカ人よ?』


「A panorama stretches from head to toe Kicked in the face, the earth is angry Detonating its volcanoes」


 この曲は元々ご本人も英語で歌っていて、地元でも放送していたアニメの主題歌となっていたので、歌詞に違和感無く歌うことができるアニメソングのひとつなのです。日本語しか無い歌は、わざわざ英語に直して歌う人も少なくありません。

 私もYouTuberとして、アニメソングを題材にしようと思ったとき、日本語で歌うか、英語に翻訳するか検討した結果、元々の雰囲気を壊さないようにと、日本語しか無い歌は日本語で、英語もある歌は英語で歌う事にしています。


「If there's a dinosaur in the melted polar ice. I want to teach it to balance on a ball」


 さて、ここまでの歌詞でこの曲が分かった人は、英語がとても上手な人か、英語版を知っている人だと思います。では、正解をサビでどうぞ。


「CHA-LA HEAD-CHA-LA, No matter what happens, I can handle it no problemhttps://lyricstranslate.com」


「CHA-LA HEAD-CHA-LA, As much as my heart pounds My Genki-dama resounds... sparking!」


~♪ ~♪


 正解はアニメ「ドラゴンボールZ」の主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」。私が幼い頃によく見ていたアニメではありましたが、どちらかと言えば兄様達が見ていたのを、横で眺めていただけでした。YouTuberで活動を初めた際に、兄に勧められる形で、この曲を歌ってアップしたところ、反響がとても大きかったのを覚えています。


「CHA-LA HEAD-CHA-LA, As much as my heart pounds My Genki-dama resounds... sparking!」


『スパーキング!!』


 みんなも釣られて掛け声を合わせます。


(やっぱり、最初はみんなに知られている曲を選んでよかった。)


 その後は他のみんなも少しずつ歌いつつ、しかしメインはやっぱりトーク。特に留学生である私の、現地での生活話にみんなの興味は集中していました。


『へぇ~、ディズニーも行ったことあるんだ~』

「イエス、車でも2時間掛からない。あ、でもいつも車いすだった。心臓、弱かったし」


『そっかぁ歩いても疲れちゃうもんね。』

『でも、今は元気なのよね。』


「ん~、元気。走るのは…まだ少し、怖い」

『いいなぁ~2時間でディズニー。しかも、一番最初のディズニーだよね』


「イエス。私のパパ。ディズニーとても好き。私の部屋。ぬいぐるみPlush Dollでいっぱいね」


『プル…え?何?ドールって人形?』

「あ…日本語だと… ぬ…いぐ~るみ?」


『あ~ぬいぐるみ、かぁ英語だとそう言うんだ』


 日本発祥の英語も多いせいか、日本人との会話は時々聞き直される事があります。一度聞き直された言葉は、普段からメモに残して調べるようにしていました。


(ナツミにぬいぐるみって最初言われた時、すごく悩んだっけ…)


「ふふっ」


 その頃の出来事を思い出し、思わず笑いが出てしまいます。


『シェリー、笑った顔すごく良い!』

『むぅ~なんか馬鹿にされた気がするんですけどぉ』


「それはノーね。初めて日本にきた時、親切だった日本人いた。その人からぬいぐるみ言われて、私が分からなかった。思い出した。ふふっ」

『あ~逆パターンか~。たしかに日本語しか無い言葉って多いものね』


 私以外のクラスメイトも各々の曲を入れては歌い、それを聞きながら全員で盛り上がり、とても充実した女子会。ただその時の私は、ほんの少しだけ喉に違和感がありました。


(少し喉が痛いsore throatかな…。でも、みんな楽しそうだし…。少しなら…大丈夫…だよね)


 こんな些細な異変でも、医師の相談しなければならなかったのに、それを怠った私は、それから数日後に入院することになってしまいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る