第11話 まるでドラマのような展開です。

「サンキュー、タツヤ」


 シャワーを浴びた後、髪をぐるぐると頭に巻き込んで、その上からタオルで包んだ状態にして、私はリビングに戻りました。


(ホントは衣服パジャマ着ないんだけど、タツヤがいるから軽めのシャツとパンツ※で良いよね。)

※パンツ=ズボン


 私が入って来た時、竜也はテレビを見ていて、気配に気づいてこちらを振り返りました。


『あぁ…どういたしま…うわ!』

「?。どうした?タツヤ。」

(そんなに変な格好はしてないハズだけど…)


 私の姿を見るなり、竜也は驚いて目を横に外らした。


『い…いや、その…、外国の方って、寝る時はいつも、そんな感じなのか?』

「ん〜ん。いつもは、何も着ない。寒い季節は、着るです。」


『そ…そうか。いや、ごめん。なんか、こうゆうの初めてで…、文化の違いっていうか。』


 私は彼の座るソファーに近づくと、横を指差しました。


「横、良いかな?」

『どっ…どうぞ!』


 私は微笑んで竜也の横に座りました。そして、彼の顔を横から覗きこみました。


「緊張、してる?タツヤ。」

『そ…そりゃ、き、緊張する。女の子、母さん以外であまり来ないし。』


「ふぅーん。誰かは、来たこと、あるですか?」

『小学校から…一緒だった人が…、たまに来るんだ。父さんが死んでから…かな。たまに、ご飯とか持って来てくれる。』


(幼馴染と言う仲…。私がその間へ入る隙間はあるのだろうか…)


 私に異性の幼馴染はいないけれど、同性でも幼馴染は何でも話し合える仲。私は少しだけその女性を羨ましく思ってしまいました。


『あの…。さっきは…ごめん!』

「?。どうしたタツヤ。あの時は、もう謝った。もう、怒ってない。」


『そうじゃないんだ…』

「?」


 彼は耳まで真っ赤にして、何か言いたげな仕草をしているが、私にはさっぱり分かりません。


(下着姿くらいなら、見られても恥ずかしく無いけど…。タツヤは純粋なのかしら)


 私はそのくらいの気持ちでいました。


「タツヤ、言えないなら、無理しない。」


 私はそう言って、竜也の頭を撫でてみました。すると、竜也はビクッと反応して、素早く背筋をピンとさせて私に言いました。


『あの…。本当は…おっ…おっぱい…。見ちゃいました!ごめんなさい!』

「え?…」

(なーーーーー!!!)


 本当に竜也は純粋で正直者だと思いつつ、私も恥ずかしさで顔が火照ってきました。


(やだやだ。胸…見られてたんだ。それは恥ずかしいーー!!)


『あの…。』

「見たのね…。」

『は…はい!何でもしますから、許してください!』


 ソファーに身体だけ90℃回転させたまま、土下座姿勢を取る竜也。でも、私自身の頭も既にパニックになっていて、上手く思考が働いていませんでした。


「なら…。私…結婚してください!!」

『はい!分かりました!…ってえええ!?』


 一瞬でその場の空気が凍りつきました。聞こえるのはテレビから流れる音声のみ。土下座姿勢から私を見上げる竜也と、顔を真っ赤にさせて顔から汗が止まらない私。


(私…今…なんて言った…?)


 この時の私は、日本語で突破的に出た言葉を、発言後に整理していました。


(違うでしょ?結婚じゃない!結託?結果?違う。えっと、気にしない!そう、気にしないで。そっち!あーーー。しかも、なんで即答なわけ?今更、言い間違えって言う?)


「私…。」


 私から先に切り出そうとすると同時に、彼の両手が私の手を掴みました。


『今は…僕は14歳だから、結婚は出来ないけど、約束します!18歳になったら、シェリーを迎えに行きます!だから、ぼ、僕と、付き合ってください!』

「ひゃ…ひゃい!」


 私は竜也の勢いに負けて、何とも情けない裏声で返事を返してしまいました。


「いいの?」

『ああ。男に二言は無い。』

「ふふっ」


 私は前屈みになって、竜也の頬にキスをする。


『なぁっ…。』

「また、赤く、なった。」

『し…しゃあないじゃないか。』


 私はソファーに座り直し、何度か深呼吸をする。


「タツヤ、私、心臓病だった。」

『…あぁ、だから父さんの心臓を移植したんだろ?』

「イエス。でも、長く生きるか。分からない。」

『なんだよそれ!どうなんだ?どれくらいなんだ?』


 私の一言に竜也はすぐ反応し、私にそう聞いてくる。


「まず5年…。いえ、今からなら、3年。生きれたら、また5年…」

『短ぇんだな…。移植した人の寿命って…。』


 竜也も希望と絶望を知ってか、さっきまでの勢いは無くなっていました。


「移植、難しい。全てを繋いだわけじゃない。軽い病気でも、かかると、危ない。」

『でもよ、父さんは強いし、優しいから…。きっとシェリーを助けてくれる。俺はそう信じてる。』

「ありがとう。タツヤ。私、やっぱり、タツヤに会えて、良かった。希望、できた。」


 私は笑顔で竜也にそう答える。


『すぐ、アメリカに帰るんだよな。』

「イエス。」

『次は…いつ、来れる?』

「(※英)分からない…」

『分からない…だよな。じゃあさ!』

「?」


 竜也は再び私の手を取る。彼の温もりが握られた手から伝わってくる。


『高校から…留学ってどう?俺ん家、ホームステイに使って、さ』

「留…学。うん…。タツヤと、同じ学校、通う?」


 少し戸惑ってしまう私に、彼は更に続けるが、何かに気づいたようでした。


『ああ!俺が高校卒業するまでに生きる事ができれば、シェリーは運命に勝った事になる!俺とも結婚できる。どうだ?って、あ!そもそも俺、シェリーの歳、知らなかった。』


「っっ…。私…、14歳。タツヤと同じ歳。」

(ダメダメ、また涙出そう…)


 私の年齢を知って、竜也は口をポカンと開けた。


『マジで!?すっげー大人に見えてた…。』


 竜也の提案はとんでもない事なのは分かっています。アメリカでは日本より早く卒業になるので、日本のハイスクール入学には試験を受けなければならない。それも、アメリカのハイスクールで勉学をしながらです。

 英語は母国語だから、全く問題ありませんが、日本国語は未知の世界です。それでも私は、竜也の提案を断るわけにいきませんでした。


「タツヤ、まだ、結論、分からない、けど、2年後、日本留学、やってみる。ここに、戻ってくる。」

『じゃあLINE交換、しようぜ。連絡できなきゃ、どうにもならないし、な』

「はい…。」


 私は、竜也とLINE交換をし、竜也のお姉さんが使っていた部屋のベッドに新しい布団を敷き、寝る事にしました。


… … …。


(寝れない!!)


 夕方に一瞬でも寝ていて、事故とは言え告白までして、逆に交際の申し込みを受け、今日一日様々な事が立て続けに起こったため、興奮した体は、私を夢の世界に連れていってくれませんでした。

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