アンタッチャブル ランドキーパー

紫風

第1章 救世主が出た

王 ラステイル

 彼は、書類にサインをする手を止めて、執務室の扉を見た。

 彼の名は、ラステイル・リネイユ・エンクシーカー。

 エンクシーカー家の若き当主であり、ここ、王国キャノスの国王である。


「ラステイル様…?」

 ラステイルが側近の声に応える前に、慌ただしくノックの音がして、執務室の扉が開かれた。

「王! 」

「どうした」

 飛び込んできた従者を冷静に見る王と側近。従者が息を整えるのを、じっと待つ。

「何があった」

 頃合いを見計らい、ラステイルがもう一度声を掛ける。

「は、…はい! ”救世主”を名乗る男が、城に現れました!」


「何………?」

 形の良い眉を片方跳ね上げて、ラステイルの金色の瞳が、ぎらりと剣呑な光を帯びた。

「どんな奴だ」

「子供です。16, 7 くらいの男です。いきなり庭の一角が光って、そこから出てきました」

「…………ふぅん。只者じゃあなさそうじゃねえか」

 にやりと笑って、王 ラステイルは言った。

「よし、俺が行く」



”救世主”な……。そんなもんが現れるほど、俺の国は荒れちゃいねえはずだ。それともこれから荒そうってことか?

何にせよ、俺の国に手を出すやつぁ、ただじゃおかねえ。覚悟しな。

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