第18話 ラパス王国侵攻作戦①

ワーナー侯爵が去ってからしばらく経ったある日、ブリュッケン公爵からの手紙でラパス王国の国境沿いがきな臭いとの知らせを受けた。本来は国境に面しているルードルス家が集めるべき情報だが、まだウチはそういった人材がいないので公爵とレーベック商会に頼っている。あと3年もすれば2年前のローク戦争の戦後処理で焼き払ったスラム街にいた子供達が諜報員として使える様になる。

公爵は例年通り国境を越えた先にあるローク平原で迎え撃つつもりらしい。しかし今ラパス王国との国境に防壁を建設中であと少しで完成する。なので邪魔されるわけにはいかない。そこで俺は公爵に俺たちからラパス王国に侵攻することを提案した。国境を超えると肥沃な平地がしばらく続いた後、少し大きな川にぶつかる。川を超えるとラパスの大きな都市も存在するので川の手前までなら侵攻できそうだ。できれば、川を越えた先にあるラパス王国伯爵の都市を叩いてラパス王国からはしばらく侵攻できない様にするのが最終目的だ。

2週間後、公爵からの返事が返ってきた。俺の逆侵攻作戦は概ね採用になった。そうしてさらに2週間後にここルードルス領の元子爵領都パルコの郊外に各家の戦力が集合することになった。この元子爵領都パルコはまだ外にスラム街が残っていたり城壁がボロボロだったら、忙しくて整備がまだ行き届いていない。この戦争が終わったらパルコの整備が必要だと考えている


そうしてパルコに総勢1万人の軍勢が集まった。公爵軍3,500、公爵騎士団500、他の子爵家2家から3,000、小貴族から700人集まった。ルードルス家からは天雷騎兵団100、金剛戦士団300、歩兵,600、魔法部隊700を連れて行くつもりだ。前回の募集で兵士を大量採用したが、彼らは5年間はしっかり育成するつもりなので今回は連れて来ていない。だから衛兵と訓練生を除くほぼ領軍全員を参加させるつもりだ。


俺は出発前に行われた打ち合わせに参加した。俺はもう子爵なので公爵代理で1番偉い公爵息子の騎士団長から近い席で発言を求められる。なんか優越感がすごかった。この優越感なら前世では体験出来なかった権力欲に人が溺れてしまうのは仕方ないと思う程だ。打ち合わせでは先頭からルードルス家、小貴族、公爵、子爵2家の順でラパス王国に向かって進軍することになった。


出発から1週間後、俺たちは既に国境を超えて平野を通過中であと1日でラパス王国軍とぶつかるところまで侵攻した。進軍中は目立った奇襲もなく全軍無事に進む事ができた。ラパス王国軍は今回13,000人で迎え撃つらしい。近年はこちらからは侵攻していなかったからこうなることが予想できずまだ準備不足なようだ。


俺たちは川を渡ったラパス王国軍から少し離れたところで野営の準備を始めた。俺はローク平原の二の舞にならないように夜は夜襲を十分に警戒させた。


翌日、両軍ともに早朝から移動を開始して朝の9時くらいにはお互いの姿を確認できる距離まで接近した。俺たちは農業が盛んな平原を通ってたので背後には開けた平原が広がり逃げ道がある。対してラパス王国軍は右背後には山があって背後にはしばらく行くと川がある。川の向こう側にはこの辺を治める伯爵領都がある。俺たちが通ってきた農業地帯はラパス王国全体として些細なものだが、伯爵家にとって小さくない痛手だ。伯爵家は全力で取り返しにくるだろう。


昼前には俺たちは敵軍と相対して緊張感が走っていた。ルードルス家は左翼を任せられている。俺は左翼の後方に陣を置き、前には小貴族の軍が布陣している。

しばらく睨み合いが続いた後、味方右翼で開戦の合図が鳴った。それに続いて俺たちの目の前にいる敵右翼も突撃を開始する。俺は最前線にいる金剛戦士団に防御の合図を送る。金剛戦士団は素早く地面に突き刺した大盾を持つ手に力を入れた。敵の歩兵が大きな音を立てながらこちらに迫ってくる。

そして敵の歩兵が金剛戦士団とぶつかった。歩兵VS重装歩兵部隊。予想通り金剛戦士団は敵の歩兵に対しての一歩も動かず敵の勢いを完全に殺す。俺はその隙を狙い、右翼本陣の目の前にいる他の貴族軍1,000に金剛戦士団の左右から飛び出して敵歩兵に突撃するよう指示する。貴族軍は左右からの挟撃に成功し、次々に敵歩兵を倒していく。金剛戦士団が若干崩れて始めたがそれ以上のスピードで敵が減っていく。

しばらくお互い消耗戦をした後、敵は撤退の合図を出す。俺は貴族軍に敵を追撃を指示する。しかし、これは敵の策であった。敵の前線に気を取られていつ現れたのが分からない弓兵で追撃するこちら貴族軍に弓の雨を降らせる。盾を持っていない貴族軍はたちまち殲滅されていく。俺は急いで撤退を指示するが1,000人ほどいた貴族軍はあっという間に700まで減った。貴族軍がこちらに戻ってきた後は敵は何のアクションも起こさず1日目は終戦となった。


開戦直後は屈強な金剛戦士団のお陰で有利だったが俺は敵の歩兵という餌に釣られてまんまと敵の策にはまってしまった。さらにラパス王国軍の弓兵は練度も高かったのでそれも相まってこちらの歩兵に大打撃を与えた。騎兵隊で弓兵を叩きたいが敵陣の奥にいるので手が出せない。

俺は夜中に明日以降の作戦への準備に取り掛かった。

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