ルードルス戦記(改)〜下級貴族から成り上がる〜
@tree-cats
幼少期編
第1話 転生
俺は化学薬品メーカーに勤める30歳。結婚もして子供ももうすぐ産まれる。今までの人生はそれなりに上手くいき、幸せな日々を送っていた。俺は全く予想していなかった。幸せなど簡単に崩れ去る事を。
何気なくいつものように歩いていたら、突然、体に重たい衝撃が走った。そして瞬間的に悟った。俺はもう死ぬと。人間、死の危機に直面すると走馬灯を見ると言うがそれは本当だった。空中に放り出されて宙を舞っているが頭の中では小さい頃からの思い出が駆け巡る。しかしそれも長くは続かず、地面にぶつかると同時に意識はブラックアウトした。
目が覚めると知らない白い空間に一人佇む女性がいる。あ、これ見たことあるぞ、トラックからの転生パターンだ。何を隠そう、俺は大学時代かなりのラノベ好きで異世界物を中心にたくさん読んだ。
「そうです。トラックからの転生パターンです」
あ、心を読めるタイプの女神らしい。
「ええ、読めるタイプです」
女神は優しく微笑んだ。どんなチートが貰えるのだろうか。
「チートはございません。」
は?チートないとか終わったじゃん。ふざけんなよ。暴力とは無縁の生活からいきなり殺し合いの世界で生き残れる訳ないじゃん。
「そんな都合のいい話あるわけないじゃないですか。どの世界も生きていくのは大変なんですよ。まぁ今回は、少しの優遇措置は取りますよ。というのも、カクカクシカジカ…」
女神の話は長かった。
要するに、地球の人口が増えすぎて魂の量が
キャパオーバーらしい。それで転生に耐えうる魂の持ち主を偶然を装い殺したらしい。なんか、ふざけるなと思うが俺以外にも大勢の人を殺したようだから苛立ちが薄れる。人間、自分一人だけ不幸を被るよりみんなで被った方が気が楽になる。
それで勝手に殺したお詫びとして、様々な物を等価交換してくれるらしい。
そもそも転生は、どんな肉体や環境に生まれてくるかはガチャ的なものらしい。
しかし、今回はあちらの世界で標準的な環境、肉体を用意してくれるらしい。
その状態で片腕を犠牲にするからIQを高くして欲しいなどの等価交換をできるらしい。
基本的になんでも等価交換できる。
さて、どうしようか。
ちなみに女神に〝真理の扉〟を代償にすると言っても全く通じてなかった。
いやぁ、○ガレンネタが通じないとは。
どんなステ振りにするかを決めるためにも
まずは情報収集だ。俺は小学生に入るまでの記憶を対価に様々な情報を引き出した。
剣と魔法の世界のイメージ
魔獣が存在する
中世ヨーロッパの文明水準
10の大陸があって、1つの大陸は地球約1個分の面積
どの大陸にも数えきれないほどの国がある
転移先は人間7 魔獣3の割合で支配されてる
人間同士、魔獣と人間の争いが絶えない
戦争ばかりだが、異常に妊娠しやすく人口は増え続けている
今までもこれからも転生者は存在しない
多くの情報を得たが大きいのは最後の情報だろう。現代知識でチートするラノベも多く存在するが、俺以外の転生者がいないなら、高度な知識はいらないだろう。極端な話、銃を開発するより肉体的なアドバンテージがあった方が生き残れるだろう。
俺は自分のステ振りを考える事にした。平民や奴隷は生活が苦しいだろうし、王族とかは王位争いもあり早死にするかもしれない。となると、下級貴族がちょうどいい。準男爵か騎士爵がいいだろう。転生する国としては、国王派と貴族派で6対4くらいで割れてて欲しい。その方が権力争いでどさくさに紛れて出世をする事ができる。俺は夢はラノベのような成り上がりなのでこの条件は重要だ。
この条件ですると、ファーレンス王国の騎士爵ルードルス家の長男枠が空いている。
ルードルス家は先代が戦争で大活躍して国王から貴族に叙任され、魔の大森林と呼ばれる広大な魔獣エリアのすぐ側に領地を貰った下級貴族だ。
この先代の出世コースは傭兵や冒険者の王道成功パターンのようだ。ファーレンス王国は中規模の国の中で下の方だが周りは同格以下か少し上の規模の国しか無い。滅ぶ可能性は低い。
なかなかの優良物件だ。ここにしよう。
この物件の対価はそこまで高くなかった。異世界でいらないであろう知識を対価にすると決めていた俺は、高校以上の物理、化学以外の勉強の知識を対価にした。この2つは異世界でも魔法に応用できそうなので残しておく。
次は肉体的なステ振りを考えよう。肉体的なステ振りといってもゲームじゃないので数値化されたりするわけではない。どの記憶でどれだけ強化されるかは分からない。
日常的に戦争が起こっている世界ではもちろん賢さより肉体の方が大切だろう。まして俺は下級貴族に生まれる。戦争で先陣とか任されるような存在だろう。
ここで問題になってくるのが物理特化か魔法特化、もしくはハイブリッドなのかだ。
そこで、前世の家族との思い出などのパーソナルな記憶を犠牲に戦争のあり方と魔法についてしらべた。
家族との思い出は残しておきたかったが、その思い出のせいで新しい家族に馴染めなかったり寂しかったりするのは嫌なので消すことにした。
何百人も殺せる魔法の発動には、複数人で時間をかけて行うらしい。
戦場では身体強化魔法を使いながら戦う兵士が多い。
魔法部隊も存在するが、基本的に高位魔法師の超強力な魔法を個人で撃つ事しか無い。
貴族や強者に多いのが物理で戦いながら時々魔法を放つハイブリッド型らしい。
一瞬、貴族だし魔法特化でいこうと思ったが、いくら護衛をつけていても接近戦が弱いのは辛い。そもそも魔法は魔力が切れると使えない。俺は物理メインに決めた。
そうして俺は大学生以上の記憶と死に関する倫理観を対価に
武術センス 75%
魔法センス 20%
賢さ 5%
肉体 0%
のように振った。これが世間一般的にどうなるのかはわからない。肉体が0なのは、食事水準が低いであろう異世界でしっかり食事を取りトレーニングをすればなんとかなると思ったからだ。
ステ振りが終わると、タイミングをはかったかの様に女神がまた現れた。
「準備はいいですか?」
「はい」
「我々はたとえあなたが向こうの世界ですぐ死んでも核を作って全人類を滅ぼしても一切干渉しません。あちらではあなたが生きたいように生きてください。ではあなたの旅先に幸運を願って。さようなら」
俺は新しい人生に胸を躍らせながら女神に別れを告げる。
そして俺の視界は白い光に包まれた。
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