飴玉

「   」

夜12時過ぎに今日最後の電車が通る。

充電器に繋いだ携帯は電波を介して繋がり、何かに追われるように、心の穴を埋めるように必死に口を動かす。

缶に入った飴を好きでもないのに二、三口に放り込み、飴が大好きな可愛い女の子のふりをして。なんにも汚いことを知らないような純粋な女の子のふりをして私は会話の中に溶け込んでいく。

声で繋がる安心感に溺れて、好きなものがほんとに好きかもわからなくなって。相変わらず下手なゲームの腕は私の本当を見せてくるようで嫌気がさして、それでも繋がる理由が欲しくて私はゲームに没頭する。

都合のいい関係だけで寂しくなるのに満足して。壊れてしまった事を見て見ぬふりして。

なんの反省も生かさずに、また壊れたことを他人のせいにする。好きになって欲しいのに、好きになって欲しくない。気持ちの矛盾に気づかずに、あなたが待っている答えを無意識に電波にのせる。現実世界と電波世界の狭間にゆらゆら揺れながら、今日もまどろみの中に入り浸る。

何に焦っているのかも分からずに、何に追われているのかも分からずに。ただ、過去を見つめて帰ろうとする。何も分からない未来は怖くて、恐ろしい。自分すらも信じられず、他人の手も疑ってしまう。恐怖と焦燥感に駆られながら怠惰にベットの中へと帰る。

電気が消えた部屋は私自身のようで、不意にいなくなってしまいそうで。不意に見えなくなってしまいそうで。昨日飲んだコーラだって、昨日食べた夕食の鮭だって。飲んだことすら、食べたことすら無くなってしまいそうで。まるで、人生の落とし穴に落ちるようで。


望んでないのに明日は来て、望んでないのに日々責任は増えていく。

大好きだったはずの夜が明日を迎える象徴になり、取りたかった年齢はずっとずっと重くなっていた。自由になりたい私と、守って欲しい私がぐちゃぐちゃに絡み合い私の目をどんどんと覆い隠す。

何をしたら幸せになれるのか。そもそも幸せとは何なのか。器用な生き方?お金?考え方?それとも、私自身が生まれた時に決まっているのだろうか。才能に溢れた気分屋な姉と、やりたいことは何でも受け入れてくれた優しい母。不器用だけど私の夢を沢山叶えてくれた娘思いの父。これが不幸せな環境と言えるだろうか。

気まぐれで、気分屋。好きなこと以外は続かないし、好きなことでも続かない。変なプライドを持っているし、たいした物は何できない。不器用貧乏な私は私を生きることすら不器用なのかもしれない。

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飴玉 @Enn_Urui

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