第17話・準備と裏切り


 ある部屋の一室刀を打っている少年

 名をトハン、男でありながら148cmという低身長、銀髪で片方は金の眼片方は赤の眼をしている。


「最上級炎魔法をこんなに連続して使うとは」


 今トハンは、自分の知っている限り1番強い鉱石を使って武器を作っていた


「ふぅ、疲れないが熱さは伝わってくるな、スキル【神のベール】で自分が1番過ごしやすい体温に自動調節されるが周りが熱すぎて体温が上がり下がりしてなんか変な感じだ」


 ゴン、ゴン


 ノック音……


「誰だ?シリクか?」


 ドア越しに声が返って来る。


「スランです、お食事を用意致しました」


 飯……か


「後でで良い」


「しかし、もう15時間程小屋に籠っているではないですか、倒れてしまっては、私、心配してしまいます」


 疲れたりしないから倒れたりしないんだがなぁ

 ここは、亜空間の家の近くに創造した鍛治小屋、最上級魔法に耐えられる素材を使った壁で家の近くでは、暴発した場合大変なので少し離した場所に創った小屋である。


「心配してくれるのは嬉しいが、体調管理は自分で出来ている。俺は大丈夫だ、だからシリクと遊んでてやってくれ」


「……畏まりました」


 スランが小屋から離れていく気配を感じた。


「この素材【神宝鉄】は、鍛錬に時間がかかる、スキル世界能力【鍛冶神の技法】を使っても作るのには数日かかる、一般の鉄なら10分程で終わるチートスキルだが、それでも数日かかるレベルだ、ほんと凄い鉱石だ」


 ちなみに創造魔法で刀を創らないのには理由がある。この世界にはどうやら【想いの力】という力があるという、どうやら、どんなに粗末な素材でも気持ちを込めて打つと業物の武器に化けるらしい。

 本当かどうか分からないし、その【想いの力】を創造しようとしても出来なかった。創造出来なかったということはスキルや形のあるものでは無いということ、俺みたいな未熟な創造神は意思、感情など概念そのものを創造は出来ないだからこうして1から自らの手で創っているのだ


【私に任せていただければスキル世界能力を最大限に活用し、1時間ほどで作成出来ますが】


(お前じゃあ想いの力とやらがあるのかわからんだろう、気持ちは嬉しいがな)


 そんなこんなあって数日経った


「よし、あとは銘切りして研ぐだけだな」


 銘、どうしようか、名前を付けるということはそれは、物体に真名まなを与えるということ、それ即ち名前によって力に大きな差が生まれるということか

 ・・・。


「よし」




「終わったーあと何日で学院が始まるんだろう」


 トハンが1度あっちの世界に戻ろうと、空間に穴を開けようとした…だが


「その前に飯食いに行くか……」


 それにしても、随分と長い時間打っていたな、スキル究極能力【体内時計】が狂ってる…つまり無意識下でも鍛冶のことを考えていたというわけだ


「そんなこんな考えていたら付いたな、まぁそんな遠くには創造してないから当たり前か」


 一応ノックしとくか?


 そうしてドアノッカーなるものを始めて鳴らしてみた


 足音が近づいてきてドアを開ける…すると


「おかえりートハ!」


 ズドーンとシリクの渾身の頭突きを腹で受け、HPが体感70%くらい減った錯覚を覚え一瞬飛んだ意識を戻す。


「シリク、随分と人類語が話せるようになったなぁ、というかマスターしてないか?」


「うん!スランが教えてくれたの!」


「へぇ、スランが、まぁ確かスキルに育児の特級スキルがあったはずだから、それでかな?」


 肩にシリクを乗せてこの家で1番主に使う部屋、つまりリビングに足を運ぶ

 するとそこには、お茶を嗜んでいる?スランがいた

 お茶を嗜むってよく分からないんだよな、嗜むって言うよりあれは休憩か?わからん


「よっ!スラン武器作り終わったから帰ってきたぞ」


 いつもの週間で気配を消して近づいていたからスランが少しびっくりする


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 ぺこりと一礼

 最近スランにメイドとしての知識(前世の記憶)からサトがオートで作ってくれた【メイドの心得】というものを読んでいるらしい。もちろん俺はメイドファンでは無いので朧気なメイド像をサトが書いてくれただけなので正直この世界には合わないだろう


「そろそろあっちに行きたいんだが、飯を食っていこうと思ってな」


 まぁ娯楽としてだが、最近考え方が人間離れしてきているような気がするからちゃんと飯食わんとね


「畏まりました。今から朝食を作ってまいります」


 最近スランは少し気力がなくなってきている気がする。


(解析眼でスランの今の状態を解析してくれ)


【了解・解析眼ラーニング・アイを発動します。


 完了・解析結果。疲労度70%

 疲労状態です。このままあと3時間26分活動を続けると疲労度が限界になり13時間12分間意識消失】


(仕事を詰めすぎたのか?少し休ませないと)



「朝食をお持ちしました」


「あぁ、ありがとう」


 前、この世界のパンを食べた時は俺には合わなかったから、前世のパンをサトに作らせてストックしてある、それをスランに使ってもらって朝食を作らせている。


「いただきます。…………うん!美味いな、やっぱこのパンだよなぁ」


「あの……」


「ん?どうした?」


「今の「いただきます」とはなんなのでしょうか?」


 そういえばこの世界に食べる前に「いただきます」や「ご馳走様」という文化は無かったか。


「今のはの挨拶みたいなものかな。食べる前に感謝を込めて、あなたの命を「いただきます」みたいなそんな感じだよ」


「ご主人様は何者なのでしょうか、私の知っているパンはこんなに美味しくないですし、今の聞きなれない挨拶だって」


「うーんと、とっても遠いとこから来た凄い人だと思っててくれていいよ」


「………」


 まぁそりゃあ、奴隷として売られたと思ったら、この世界のものとは思えない亜空間や見たことも無い食料を持ってきたらそりゃ怪しむか


「スラン、お前は休みも取ったほうがいいよ」


「しかし、ここで働けと仰られた以上……」


「そもそも、こんな広い屋敷を1人で掃除したり、家事全般というか全てやってるスランは凄いよたまには休んでもいいよ、倒れられたらそっちの方が困る」


「はい、わかりました」


──────────────────


「よし、主人を守る騎士が主人より小さいなんて自分で体を創っておいてなんだが、身長を変えるか」


 まぁとりあえずミシアが160cmだから167cm程でいいかな。

 あまり高身長過ぎると女王の命令に支障が出るかもだからな。




「さーて、忘れかけてたが、『牢獄』に行くか」


 自分の屋敷から結構離れた位置に創った牢獄、自害封印魔法をかけて、創造魔法を使って食べ物も食べられるようにしたこの中なら相当なことがない限り死ぬ事は無い


「やぁ」


「…………」


 こいつは、俺が王女を護衛した時に後ろから付いてきていた暗殺者だ、殺意は無かったが、暗殺者として活動しているのは分かる


「聞かせてくれないか、なぜ王女についていたのか」


「…………」


「言わないか……」


スキル究極能力【読心】を発動します】


『…………』


 へぇ、これは凄い何も考えてない、まるで死んでいるみたいだ、だがちゃんと息はあるし、脳も活動してる。死んでいる訳では無い。

 まぁ拷問している暇はないし、シリクにやらせたらやりすぎちゃうし、スランは心配だし、今はいいか


「じゃあな」


━━━━━━━━━━━━━━━


 王城・客室


「さて、何日たってるんだ?」


 この世界にはカレンダーが無い、正確に言うと、前世のような紙のカレンダーがない。

 水晶式魔導刻印道具とかいう長い名前の水晶に日付が表示されるが、その魔道具は、庶民だと、協会でしか見れない。

 まぁ、貴族なら全家持ってるだろうしこの王城のどっかにはあると思うが、どこにあるかは知らんしなぁ

 王女に直接聞くか?


「どうしよっかな」


 コンコン…


 ノック音……


「はい、誰でしょうか?」


「!……えっと、陛下の侍女をしています。陛下がここ最近トハン様との連絡取れていないとそして、「あいつは神出鬼没だから毎日ドアをノックしてくれ」と仰られたので毎日ドアをノックしていました」


 神出鬼没って俺の所在は今王城なんだけどなぁ


「ありがとう。あと、こんなこと侍女に行っていいのか分からないけど、陛下に合わせて貰えいたいんですけど可能ですか?」


「可能でございます。陛下から「あいつを見つけたら部屋に通せ」とご命令を承っております」


「そうですか、ならお願いします」


━━━━━━━━━━━━━━━


「おっ!来たか」


「おはようございます?」


 で、いいんだよな?多分


「お前何処をほっつき歩いていた?」


「ちょっと少し武器を造っていまして」


「長かったなミシアも心配して捜索隊を結成しようとしていたぞ」


「え!?」


 捜索隊を作ろうとしたってことは結構時間が経っているないくら心配だからって1日2日じゃそんな事しないだろうし。


「陛下質問があるのですがよろしいですか?」


「ん?なんだ?」


「自分はどれだけ居なくなっていたのですか?」


「そうだなぁ。お前がいなくなってから日付は数えてないが学園が始まるまであと1週間ってとこだな」


 1週間!?俺どんだけ武器作るのに熱中していたんだ?そりゃミシアも心配するわ。


「まぁ私は、大丈夫だと確信していたがな。そもそもお前はSSランク冒険者なのだそんじょそこらのチンピラに負けるような者ではない。にしてもお前随分と身長が伸びたな」


「いや、こうちょちょいとやっただけです。」


 まぁちょちょいと変えたのは事実だし


「えっとあと1週間ですが準備はどうしましょう?」


 俺は結構心配していた。

 まだ新しい武器で手加減を覚えられてないことに!


「ん?それに関しては大丈夫、ほらこれをやる」


 女王に投げられた袋のようなものをキャッチして俺はそれが何かを見る。


「これは?」


「次元魔法が付与された袋だ。魔法で最先端を行く我が国の学校では、次元袋の所持を校則としている。それはお前がいない間に届いた制服とこの学校の生徒手帳が入った次元袋だ、それを持ってけ」


「ありがとうございます!」


「とりあえず渡す物は渡した後で飯を喰いにこいミシアに伝えておくが、会って話すこともあるだろう」


「分かりました」



 これが手帳か、と言っても俺だけじゃあ覚えられないし


(サト、この校則を覚えてくれそして俺が違反しそうになったら言ってくれ)


【了解・完全記憶を開始します。


 1.学校内での服装は、次元袋と原則制服とする。

 2.学校に在学中は、武器の所持を校則により強制する。これは、緊急時に備えたものであり、決闘または授業以外で使用した場合、罰を与える。

 3.決闘や授業以外で生活魔法を除く初級魔法以上の魔法またはそれに連なるスキルの使用を禁止する。ただし、3人以上の教員が許可した場合一時的に、魔法・スキルの使用を許可する。

 4.在学中は、様々な種族が混同する場合があるため、校内では、階級制度を撤廃する。】


 校則と言ってもそんな厳しくないな。髪型とかそういうのの規制は無い


「それで、これが制服か…ふむ、動きやすい生地に軽めだが付与魔法が付いているな【防汚・防護】の魔法か」


 付与魔法くらい変えてもいいかな?

 いいよね?やっちゃおっと


スキル世界能力【職業支配】付与術士エンチャンターを発動します】



 そろそろ飯を食いに行った方がいいのか?


 コンコン


「陛下から、トハン様を呼ぶよう申し使って来ました」


「分かりました」


 この世界の貴族の飯か、街のは合わなかったけど貴族のはどうなんだろう


──────────────────


「やぁトハンさっきぶりだな」


「お久しぶりです、トハン様」


 ………うむ、やっぱりミシアは可愛いな

 じゃなかった間違えた


「お久しぶりです、お嬢様」


 少しミシアが不満そうな顔をする。


「じゃあ逆に言いますけどお嬢様は、俺…いえ、私のことをなんて呼びましたか?」


 考えてることを見抜かれて少し恥ずかしそうにする。


「分かりました、すいませんトハンさん」


「はい……ミシア様」


 またもや不満の顔をする。そして王女が


「ミシアをからかうのは程々にしとけよ」


「えっ?からかう?どういうこと」


「いや、可愛いからついな」


 ミシアの顔が、ボッっと赤くなる。


 にしても…俺、なんでこんな小っ恥ずかしいセリフ言えるんだよ……なんだ?神になった影響で精神力も向上したってか?ふざけんなよこちとら精神力ガンガン削られてるわ。うわぁー恥ずかしいわーないわー


「?」


「なんでもない、


 今度は嬉しそうな顔をする。

 うむ、誰かカメラもってこいこの姿を永久保存だ


「私からもお願いしよう、王族とは言ってもただの人間だ、もっと気楽に接してくれ、まぁ公式の場では流石にやめた方がいいが、今はいいだろう。どうせ侍女しか居ないからな」


「いえ、そういう訳には行けません、陛下には、今まで通りの話し方で」


「そ…そうか」


 少ししょぼんとした陛下にミシアが少しかさなって見えてしまった。


 そんなこんな考えてると、侍女が、名前は知らないし、偏見だが前世のレストランで出るような皿に半円のパカッって開けるやつを持ってくる。


(これが貴族の料理?)


【はい、一般的な貴族より少し豪華、という程度でしょう。市民達から見たら最高級の料理と言っても過言では無い程度かと】


(なるほどな)


「それでは頂こう」


「私もね」


 この世界に食事前の挨拶はないはずだが……


「いただきます」


 ふむ、正直に言うと不味くはないが…美味くもないな、食えない訳でもないし…

 日本の料理ってあんな美味かったんだな


 この世界の主食はパンだ、米は、俺の知っている限りでは「米」もしくはそれに類似したものはこの世界の食べ物では知らない。この世界には無いのか?


 そしてまた新しい料理が運ばれてくる。


 うん、これも可もなく不可もなく…


「美味いな」


「はい!」


「そ…そうですね」


 今の俺は大半が人の自分で、少しだけ神の自分が混じってる状態だ、価値観の大部分は人の時のが多いが、価値観があまりないことは、神の自分が反映されてる。でも食べ物のことは人の時の自分が影響してるってことは、飯の価値観はとても高いものだったんだな。


 そしてまた新しい料理が運ばれてくる。


 これは、魚料理?まぁ…焼き魚か?でも見た感じは焼き魚より刺身の方が合いそうな見た目をしているが…まぁ見た目だけで判断しちゃダメか


 そして俺が料理を食べようとした瞬間───


スキルEX能力【危機察知】を発動します。

 忠告・マスターとの好感度が一定を超えた人間の危険を確認】


(なに!?最前の行動をオートでしてくれサト)


【了解・【オート】を発動します

 スキル神能力【神魂言霊】を自動発動します】





           『喰うな』




「トハン…何を?!」


「陛下、この料理には……が入っています」


「なに?毒だと?」


「はい、致死量を優に超える猛毒が入っています。強さで言えば貴族級アリストクラスを半殺しにできるレベルの猛毒です。明らかにオーバーキル…」


 この世界にはオーバーキルって分からないか


「とにかくその料理を食べないでください。先程の御無礼を謝罪します」


「これを持ってきた者と作った者を連れてこい」


 陛下が近くに居る近衛兵に命令する。


「大丈夫なのですか?近衛兵も裏切る可能性はないのですか?」


「忘れたのか?専属近衛兵には契約魔法で縛ってあるから裏切る可能性は万に1つも無い」


「そうでしたね」


 とにかくミシアを殺そうとしたんだ…こんなことをしたやつは………


【【感情強化フィーリングブースト】を発動します。

 【殺意のオーラLvMAX】を自動発動します】




         「殺さないとな」







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