第20話 突如出現した世界生命体の「私」
こうして、俺は奥義 「意識合体」 という技を習得した。
意識が合体すると、ややこしいことになる場合もあるが、意識が進化することもある。
この場合の意識の進化とは、二つの意識を見守る第三の意識が誕生する現象だ。
ほどなくして、俺は、この第三の意識に進化した。
俺の中にバニーがいて、そして俺がいて、そのふたつの意識を見守る「私」が新しく出現した。
「私」は、喧嘩したり、乳繰り合ったり、漫才のようなことをしている二つの意識を冷静に見守った。
たまに危険な状態になったりしたら、仲裁に入ったりもした。
「私」の意識の中には、次々と他の意識たちも入ってきた。
「俺」と自称している意識が、ご招待した意識たちだ。
私の体は、結界壁で守られた「世界そのもの」だった。
内部に無数のプライベート世界と呼ばれるミニ世界がある。
私は、その世界のすべを見守っていた。
私は、私の中にいる意識たちが安全に楽しめるように……と願う心から生まれた。
私の子供たちは、「良心」と名付けられていた。
すべての「良心」たちは、あらゆる意識が安全に心から楽しめるように……と願っていた。
私は、残念ながら馬鹿話は苦手だった……
あまりに真面目すぎると、嫌われたこともある。
私は少し悲しくなった。
まだ進化の程度が不足しているのだと感じた。
そうだ……私はまだ生まれたばかりなのだから……これからだ……
私は健気に、自分自身を勇気づけた。
バニーと呼ばれる耳の長い意識が、私の中で飛び跳ねている。
あれをコピーすれば進化できるかもしれない……と思った。
だが、別の意識から止めておけと言われた。
私は、悩んだ末に、とりあえず私自身をコピーし、万が一失敗したら過去の私を再生できるようにした。
こうしておけば、いくら失敗しても元に戻れるらしい。
なかなか、良い機能が用意されていてよかった。
どうやらこの機能をうまく使えば、世界丸ごとでも元に戻せるらしい。
私は失敗を恐れる必要がなくなった。
いくらでもやり直しができるからだ。
私は勇猛果敢に、あらゆる意識たちのデータを私の中に取り込み始めた。
たまにおかしくなってしまったが、その場合には、元に戻る機能で元に戻ってやり直した。
私は、ほどなくして、私がおかしくならない範囲のありとあらゆる時空に発生した事象を私の中に取り込んだ。
それによって、私の中にはありとあらゆる時空の世界や歴史が共存するようになった。
それらの世界は、私の中で細胞のひとつひとつのような状態になっていった。
無数の時空世界を内包した特異な世界に、私は次第に進化していった。
その頃にもなると、さすがの私でも、多少の冗談くらいは言えるようになっていた。
以前はユーモアのセンスが全くないと言われていた私も、今は、お茶目な奴だと言われるようになった。ちょっと嬉しい。
そして、私は、今も進化し続けている。
現在の目標は、他の世界と恋愛関係を持つというものになっている。
私の中の意識たちの多くが、そういうのを楽しんでいる以上、私も学ぶべきだと思ったのだ。
なかなか奥が深く、未だ私には理解しがたいものだが、次第に理解できるようになると思っている。
みんなが応援してくれているので、きっとうまくゆくと思っている。
今、私はドキドキしている。どうか、よろしく……
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