都と地方

 周たちの暮らしている辰国は、【郡県制度】をとっています。


「郡県制度とは何ぞや?」 


 という方のために、ざっくり言えば日本で言うところの平安時代と同じ統治機構だと思ってください。トップに世襲制の皇帝がいて、その命令によって官吏(公務員)が登用されて、各地に派遣されているのです。皇帝の直轄地を県、それ以外を郡というふうに分けています。二章に登場した斎澄は西部地方の郡の出身です。


 辰国の面積はあんまり広くないうえに、境界線になりやすい山が多いので、封建制度よりも郡県制の方が統治しやすいのです。封建制度は戦国時代や江戸時代の統治機構です。もし、辰国が鎌倉時代の「御恩と奉公」統治をしたら、おそらく50年も持たなかったと思います。なにせ、「常に国境を脅かされる」上に「分けられる土地が極端に少ない」からです。


 都は、条坊制(京都に見られる碁盤の目の街並み)をしていて、中央に大通りがあります。基本的に大通りに近ければ近いほど地価が高く、金持ちが多いです。また、殿中のあるのは北側なので、北に寄れば寄るほど貴族の家が立ち並びます。庶民と貴族の区画は厳密に区切られているわけではありませんが、大小の門があり、手形を使って人々は行き来します。地方にはそんなものはないので、斎澄も最初は「面倒だな……」と思ったに違いありません。


 市場は常設の市場もありますが、羽がちょこちょこ買い食いをするための露天商や行商も数多くいます。治安は至る所に交番のような物があるので、取り立てて悪いわけではありませんが、今の日本のように女性が夜道を一人で歩いても大丈夫! ってわけではありません。時代としては、まだまだ人々に十分な富の分配がされていないので、当然貧富の差が存在します。


羽「貨幣は銅貨が中心で、時折記念として金の貨幣もあるけれど、使われない」


 どんぶり勘定が何を言う。


羽「あんただって似たようなものじゃないか」


 地方はざっくり東西南北に分かれています。北には遊牧民族の連合国家である玄国があります。全体的に変化にとんだ土地で、都は盆地にあるので四方を山で囲まれています。山が多いので、人々の往来は大変で、冬には多くの道が雪で閉ざされてしまうので、人々は冬に備えて支度をしています。


羽「山が多いから、攻め込まれにくいし、芸術も守られるんだ」


 そうなんだよね。芸術ばっかりやってる弱小国家、と思われがちですが、辰国はしっかりとした伝達網があって、芸術を使った外交戦略で存続させています。腕っぷしが強い武将が大勢いるわけではありませんが、他国で名を上げた武将が「終の棲家は辰国にしよう」と続々隠居しに来るので、他国にとっては「我が国に貢献した下さった○○将軍がいらっしゃるから攻められない」となるわけです。


羽「明英のじぃさんの黒陵将軍はその最たる例だな。黒陵将軍が来たとたん、国境近くの嫌がらせ行為がめっきり減ったんだ」


 有名武将がやってくるので、彼らの指導の下辰国の武力はそこそこ育っています。でも、やっぱり「辰国=芸術」の図式を崩すまでには至っていません。


羽「それほどまでに辰国の芸術家の腕が優れているというわけさ」


 物語の特性上、音楽にスポットライトを当てていますが、陶芸や木工細工、金工細工、宝飾関係など多くの芸術が存在しています。殿中には、それぞれの工房があります。


 さて、次に行きましょう。

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