羽子伝~楽典~
一色まなる
物語のはじまり
羽子伝の世界について
羽子伝はふたつの柱を元に作りました。
ひとつ目は
「今まで自分で書いたことのない作品を」
ふたつ目は
「私が今までためこんだ知識でどんなものができるのか」
この二つです。
ひとつ目は「中華×音楽」という舞台設定です。私の作品は基本日本が舞台、もしくは日本がベースになった物語です。すこし、羽を伸ばしたいと思ったのです。中華ベースなら、漢字やある程度の土台は似通っています。
音楽は、私の人生の中で結構の割合を占めているものです。今でこそ音楽はあちこちに溢れていますが、娯楽の無かった時代の音楽はそれこそ貴族の物だったでしょう。でも、人々は仕事歌や子守歌でつないできました。
主人公が男の子というのも、久しぶりです。元が夢小説畑の人間だったものなので、女の子が主人公ばかりでした。けれど、「書いたことのない作品」ということで、男の子、それも世間を斜に構えているような男の子が見えたのです。
「俺は斜に構えているのか?」
ええ、もちろん。じゃなきゃ、しょっぱなに家を継ぐのが従兄だとかほざかないでしょうが。それに、あなたには私にはない才能を二つくらいつっこんだのだから、胸を張りなさいよ。
「二つか……でも、大事なものなんだよな」
ええ、あなたはそれで名を刻む。
ふたつ目に行きましょう。
「今までためこんだ知識っていうのは何だ?」
そうね、ざっくり言えば陰陽五行、四大奇書、あるいはクラシック知識、そして有職故実の知識ね。これらにアレンジを加えて、あと私が好きな物語や、中学高校で習う漢文の知識もあるわ。もっと私に才能があればオリジナルの漢詩でも編みたいところだけれど、あの縛りゲーは無理だわ。
「韻をふむ、対比を加える。字数は必ず守る、だったな」
オリジナルの歌を考えてもいいけれど、この世界の歌は日本語ベースじゃないからね。意味合いは伝えられても、『歌』はできないわ。
「そう言えば、国名も意味があるんだっけか」
そう。「シン」と名の付く国は古来から時折存在している。でも、それのどれもが異なる道をたどっている。だから、「どこにでもあって、どこにでもない国」という意味合いを持たせたわ。こういうところにも、知識をぶっこみたくなるのよ。
昔、SFの二次夢を書いた時は防衛白書を持ってきたり、ミリタリー雑誌を片っ端から読んだりしたわね。
「で、そのほとんどを使わなかった、と」
いいじゃないの。調べることで、リアリティが増していくの。学生時代弓道をやったのも、疑似的とはいえ「武器」はどういうものなのか知るためでもあったからね。
武器といえば、私は今回火薬を使わないことにしています。時代背景的にはあってはいいものだけれど、火薬が登場するということは一気に戦乱に走るということ。リアリティがないと言われるかもしれないけれど、羽のいる世界では火薬はまだ生まれてきていないとすることで、ほんの少し平和な世界ができると思うんだ。
今ある火薬や武器を否定するわけではないけれど、リアリティと作品に込めた思いを天秤にかけました。この匙加減がとても難しいと思うようになりました。
「とか言って、SFの二次夢でばかすか近代兵器描写しまくったから疲れただけだろ」
そうともいうわね。じゃあ、次の話に行きましょう。
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