番外編その5

刹那さんのライブが終了し、武道館の外のベンチで俺と丹羽の2人はライブの余韻に浸っていた。


「なぁ丹羽……ライブ最高だったな……」


「ああ。最高だった。あれなら刹那ちゃんがトップアーティストなのも納得だわ……」


「……だろ?」


そろそろ人も疎らになりかけた。丹羽がベンチから立ち上がり帰ろうとしたので、俺も座っていたベンチから立ち上がった。 その時


~🎵 ~🎶 


丹羽のスマホの着信音が鳴る。


丹羽は若干不機嫌そうな感じで通話をタップした。


分かるわ~。刹那さんのライブの余韻に浸っていた時の着信音はムカつくよな~。


「はい 丹羽です」


『あっ、圭介さん♥️ お疲れ様です♪』


丹羽のスマホから聞こえてきた声は刹那ちゃんだった。


一瞬にして丹羽の表情が変わる。


「刹那ちゃん? 今日はお疲れ様でした。ライブ最高に良かったよ。チケットありがとうね」


『本当に最高でしたか? 楽しめました?』


はい! めっちゃ楽しめました!


「もうバッチリさ。赤坂と一緒に声を張り上げて応援したよ」


『良かった~♥️ 圭介さんに喜んでもらってウチも嬉しいです♥️』


「お、刹那ちゃんはもしかして普段は自分の事 ウチ って言ってるの?」


そうそう! それそれ! 俺も気になった!


『はっ! 今のは聞かなかった事にして下さい! めっちゃ恥ずかしい////// 20歳にもなって一人称か ウチ なんて子供っぽいから//////』


「いんや、全然子供っぽく無いよ? 寧ろ可愛いけど?」


俺もそう思うよ! 刹那さんの " ウチ " 呼び 可愛い❤️


『…………ぐはっ!』


「どうした!? いきなりダメージ受けた様な言葉は!?」


『……だ、大丈夫です。圭介さんの可愛いの言葉にやられただけですので。 圭介さんが可愛いって言ってくれるのなら、これから圭介さんの前では自分の事 ウチ って言いますね♥️』


「お、おう。分かったよ」


分かってはいたけど、敢えて丹羽に " 刹那さんからか!? そうなんだな!? " と聞いてみる俺。 すると丹羽に華麗にスルーされてしまった。 乗ってきてくれよ~。 寂しいじゃんか~。


「で、急に連絡くれたけど、どうしたの?」


『ライブが終わって一息ついたら急に圭介さんの声が聴きたくなっちゃって……。迷惑…でした?』


…………なんだこの会話内容は?


「いや全然。俺も刹那ちゃんの声が聴けて嬉しいよ」


『圭介さ~ん♥️ ウチも圭介さんの声が聴けてめっちゃ嬉しい♥️ ウチ今めっちゃ幸せです♥️』


…………。


『ね ね、圭介さん。これから何か予定入ってますか?』


「これから赤坂と帰宅するだけだな。 ……いや、このライブの余韻に浸る為に飲みに行こうかな?」


丹羽が俺に目線を送ってきたので、俺は良い笑顔でグッドサインを出した。


「赤坂も飲みに行きたいみたいだから、いつもの居酒屋に飲みに行ってくるよ」


『え~っ! 良いなぁ! ウチも行きたい~!』


「でも刹那ちゃんはこれから打ち上げがあるんだろ?」


そうそう。刹那さんはこれからスタッフさん達と打ち上げがあるんでしょ? 聞いた事あるよ。


『打ち上げはありますけど~』


ね。やっぱり。


「じゃあその打ち上げに参加した方が良いよ。社会人だから付き合いはちゃんとしないとね」


『う~~~っ! 分かりましたよぅ。行きますよぅ。行けば良いんでしょ? ……圭介さんの意地悪』


「じゃあ俺達も移動するから切るよ?」


『あっ! 圭介さん! 今から圭介さん達が行く居酒屋の名前教えて下さい!』


「良いけど何で?」


『な、何となく知りたかったんです!』


何故か焦った様子の刹那さん。 う~ん何でだろ?


「そう……。えっとね、○民って名前の居酒屋だよ」


『ば、場所は何処ですか!?』


「○○町の○○番地かな」


『分かりました! じゃあウチ打ち上げ行ってきます! 圭介さん達も気を付けて行ってきて下さいね!』


「ありがとう。刹那ちゃんも楽しんでおいで」


『はい! じゃあまた後で!』


そうして丹羽と刹那さんの通話が終了した。 羨ましいな刹那さんとの通話! こんちくしょうめ!



丹羽が俺に向かって


「じゃあ行くか」


「おお。ゆっくりと今日のライブについて語り合おうぜ!」


「付き合うよ。どんと来い!」


俺達は笑い合いながら行きつけの居酒屋まで移動した。





そして現在、居酒屋で飲み会中。 俺は生ビールとタコわさびと枝豆。定番だね♪ 俺はこの組み合わせが最強だと思っている。 で、丹羽はブドウ酎ハイと若鶏の唐揚げとアジフライ。丹羽~。いつもお前はそればっかだな~? たまには生ビール飲めよ~。 


俺と丹羽はお互いに4杯は飲んでほろ酔いになっている。


そして話は刹那さんの話に。


「しかしなぁ、お前の知り合いがあの刹那さんだったなんてなぁ。ビックリしたぜ!」


「俺もビックリだよ。まさかあの娘が刹那ちゃんだなんて知らなかったんだからな」


「何でだよ? 見たら分かるだろ? あの天使の様な顔立ちとスタイル」


「いや、初めて会った時は姿なんて見ている余裕なんて無かったんだから」


「ん? どういう事?」


丹羽は夏にあった出来事を話してくれた。


「……なんて偶然だよ。まさか助けた女の子が刹那さんだったとは」


「それな。彼女が俺の所に会いに来るまで分からなかったんだからな」


「っておい! 刹那さんがお前の所に会いに来ただと!?」


「ああ。帰宅したらアパートの部屋の前に立ってたんだ」


「……それで、刹那さんは何をしに来たんだ?」


めっちゃ気になる! はよ言え! HARRY up! 


「助けた事の御礼を言いに来てくれたんだよ」


何だか肩透かし喰らった気分だな。


「ほ~ん。律儀だな」


「俺もそう思う」


「で、それから?」


「それから?とは?」


「それだけじゃ無いだろ? さぁ続きを話したまえ」


それだけじゃない筈だ! 絶対言わせてみせるぞ!


「ああ。その後」


そこまで話した時、居酒屋の自動ドアが開き1人の女性が入店してきた。


「らっしゃいませ~!お一人様ですか?」


「いえ、連れが先に来てますので」


「そうですか。ではそちらにどうぞ~!」


その女性は美しいブロンドのロングヘアー。そして完璧なスタイルの持ち主で深々と帽子を被り、サングラスを掛けていた。


……ん? 何か見た事があるような?


そんな事を思っていると、その女性は此方を見てニコニコしながら近付いてきた。


そして、女性がサングラスを外して


「圭介さん♥️ 来ちゃった♪ 一緒に良いかな?」


女性の正体は刹那さんだった。


「刹那ちゃん!? 何故此処に!? 打ち上げはどうしたの!?」


丹羽も俺も刹那さんを見てビックリしている。


「打ち上げつまんないから抜けて来ちゃいました♪ 圭介さん達とウチで打ち上げ♪ 駄目ですか?」


そんな刹那さんを見た丹羽は俺に


「という訳なんだか良いか?」


当たり前だろ!? 駄目な訳あるか!


俺は首が取れるんじゃないか? 位、縦に何回も振った。


「やった♥️ じゃあ失礼しま~す♪」


そう言って刹那さんは丹羽の隣に座った。


ん? ち、ちょっと待て!?


「えっ!? 丹羽、お前その距離は!? そして何で刹那さんは丹羽の腕にくっついてるの!?」


俺は丹羽と刹那さんの距離感に滅茶苦茶困惑した。


「え~っとだな……これは」


苦笑いん浮かべる丹羽。


「? 圭介さんとウチは恋人同士だからおかしく無いですよ?」


そして最大級の爆弾を投下する刹那さん。


「……は? 刹那さん今何と?」


「だから、私と圭介さんは恋人同士だから私がくっついて座っても問題ないと言いましたが?」


…………え?


「えっ? 刹那さんと丹羽が恋人……? またまた、そんな訳」


俺がそう言うと、刹那さんの表情が怒りの表情に変わり


「(ムカッ) じゃあ貴方は私が嘘をついていると言いたいんですか? 何故私が初めて会った人に嘘を言う必要があるんです? 嘘をついて私に何のメリットがあるというんですか? 私に分かりやすい様に説明して下さい💢」


刹那さんは怒りを隠しもせずに俺に喰ってかかってきた。 刹那さんの勢いに俺はオロオロになる。


そのやり取りを周りのお客さんが聞いたみたいで " 何だ? 喧嘩か? " とザワザワしだす。



「刹那ちゃん、押さえて押さえて。穏便に……ね?」


丹羽が刹那ちゃんにそう言って宥めたが


「いいえ💢 この事だけは押さえれません! ウチと圭介さんが恋人だといけないみたいに言ったんですよこの人💢 圭介さんは同僚だから許せるかも知れませんが、ウチは絶対に許せません💢」


「い、いや、いけないとは誰も」


俺は慌てて刹那さんに弁解するが


「黙りなさい! そう言った様に聞こえました💢」


駄目だ。刹那さんは完全に頭に血が登っている。 何を言っても通用しないぞこれは。 ど、どうしよう💦


すると丹羽が


「刹那! 俺が穏便にって言ってるんだ! 俺の言う事が聞けないというのか!」


と刹那さんに対してキツめの言葉で怒った。 


すると刹那さんは


「……は、はい❤️ 圭介さんに従います♥️ 赤坂さんでしたっけ? 本当にすみませんでした。私頭に血が登ってしまってキツい事を言ってしまいました。申し訳ありませんでした……」


刹那さんは俺に向かって深々と頭を下げて謝罪してきた。 い、今がチャンスだ! 謝るなら今しかない!


「こ、こちらこそ失礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした。私こそ謝罪します」


と刹那さんに対して深々と頭を下げ謝罪した。


「これでこの話は終了! 2人ともそれで良いな!」


「「はい」♥️」


流石丹羽。 丹羽がこの場を丸く収めてくれた。 ありがとうBest Friend!


俺はそのまま席に座り、生ビールの残りを一気に飲み干して一息ついた。 せ、刹那さん…怖い。 二度と怒らせない様にしなくては……。 そして刹那さんはというと、顔を紅潮させ、何だか興奮気味の状態で丹羽の横に座った(丹羽に密着する形で)。 そして


「うふふ。圭介さんに怒られちゃいました♥️ 圭介さん男らしかったなぁ……♥️ しかも " 刹那! " って呼び捨てで//////  ……良い! 物凄く良い! 刹那 刹那……えへへへへっ」


と悶えている。 刹那さんのこの状態。 絶対に想像出来ないな。 


「な、何だか重い空気になっちゃったな。飲み直そうぜ! あ、すみませ~ん! 生ビール1つとブドウ酎ハイ1つ追加お願いしま~す! それと若鶏の唐揚げを1つお願いしま~す!」


丹羽が若干わざとらしく陽気な声で注文を入れた。





それから直ぐに飲み物が到着。そして数分後に若鶏の唐揚げもテーブルに届き


「じゃ改めて " 乾杯! " 」


「「 " 乾杯! " 」」


ジョッキを合わせて乾杯し飲み会を再開した。





それから丹羽と刹那さんは滅茶苦茶甘い空間をその場に作り出し、思わず


「……あの~。他所でやって貰っても良いかな? 何だかビールが甘く感じるんだけど……」


頬杖をついてジト目で苦笑いしながら俺は2人に苦情を入れた。


それから、話の中で刹那さんの髪は本当はブロンドで、眼の色は青だという事を知った。刹那さんは日本人とアメリカ人のハーフらしい。ウィッグとカラコンをしている理由は " そっちの方が日本人のアーティストに見えるでしょ? ウチ、余り目立ちたく無いんですよ " との事。 



そして時間を確認すると時刻は PM10:00を廻っていた。


「よっし、じゃあお開きにしようか」


丹羽が締めの態勢に入った。


「そうだな。じゃあお会計っと」


「あっ、じゃあウチの分を……」


すると丹羽が刹那さんに


「刹那は財布引っ込めて。刹那の分は俺が払うから心配しないで良いよ」


「お~っ。丹羽、格好いい~♪」


「でも、それじゃ悪い」


「良いの良いの。俺は刹那の彼氏なんだから。彼女の分も払うのは当然!」


レジに俺と丹羽の2人で会計をしに行く。


「……圭介さん……。めっちゃ好き♥️ 愛してる♥️」


俺達の後で刹那さんがボソッとなにやら呟いていた。






































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