第97話
あっという間に月日は流れ、今日は両家の顔合わせの日だ。
前日から刹那の両親は都内某所のホテルに宿泊している。刹那には前日からホテルにご両親と宿泊してもらい、一緒に会場まで来て貰う予定だ。
俺は朝早くに家の家族を車で迎えに行き、会場に向かっている最中だ。
会場となる料亭に着き、駐車場に車を停める。
「お、おい圭介……物凄く高そうな場所なんだが……大丈夫なんだろうな?」
「そ、そうよ……お母さん達こんな所になんか来た事ないわよ。 場所間違ってない?」
「大丈夫だ。場所は間違ってないよ。俺も初めて来る場所だから不安ではあるけどね」
物凄く挙動不審な両親を引き連れて俺は受付に向かう。
「本日予約している丹羽ですが……」
少し緊張気味に受付のスタッフさんに問い掛ける。
「本日8名様でご予約の丹羽様ですね? 御待ちしておりました」
丁寧に頭を下げるスタッフさんに、俺達3人も頭を下げる。
「それではお部屋にご案内いたします」
「あっ、宜しくお願いいたします」
緊張した動作でスタッフさんに着いていく俺達。 親父なんか緊張で右手と右足を同時に出して(左手と左足も同様)歩いている。まるで玩具のロボットみたいだ。 まぁ俺もさほど変わらない感じだったのだが。 その点流石お袋。 緊張は直ぐに解けて堂々とした感じでスタッフさんに着いていっている。 こういう場面では女性の方が度胸があるという事なんだろうな。
そうして俺達丹羽家は物凄く広い和室に案内される。
「それでは失礼致します」
そう言ってスタッフさんはこの場を後にしていった。
「「「……………」」」
物凄く広い和室を前にして俺達丹羽家の面々は固まっていた。
「ねぇ圭介、私達は何処に座ればいいのかしら?」
「……多分中央にあるテーブルの下にに列べられている座布団に座ればいいんじゃないか? ……多分だけど」
「先に座ってて本当に良いのか? 刹那さんのご両親に失礼にならないか?」
「分からないけど、ずっと立っている訳にはいかないからなぁ。良いんじゃないのか?」
そう言って親父とお袋を座布団に座る様に促すが、一向に座らない。 ずっとその場に立ったまま動こうとしなかった。 このままじゃ埒があかないので、意を決して俺はテーブルに列べられている座布団の1つに座った。
俺が座布団に座った姿を見た親父とお袋はようやく俺の隣の座布団に座る。
……沈黙が続く。 なんかそわそわしてしまうな。
暫くその状態が続いた後、刹那とお義父さん、お義母さんが俺達の居る和室に案内されてきた。
「圭介さん、お待たせ致しました」
刹那の明るい声がしたと同時に俺達3人は素早く座布団から立ち上がり
「お先に座っていて申し訳ありません💦 私、圭介の母の丹羽幸子と申します💦」
「は、初めまして! 圭介の父の丹羽純平と申します💦」
「お義父さん、お義母さん。お久しぶりです。今日はわざわざ遠い所まで御越しくださりありがとうございます」
と言って頭を下げる。
「わ、私は刹那の父で 由井公宏と申します💦 ご挨拶が大変遅くなりまして本当に申し訳ありません💦」
「私は刹那の母で由井アリサと申します。いつも娘が大変お世話になっております。この間はご挨拶が出来ずに申し訳ありませんでした」
お義父さんは滅茶苦茶低姿勢で頭を下げ親父とお袋に挨拶をする。 何なら名刺を渡す勢いだった。
一方お義母さんの方はと言うと、丁寧な口調で賑やかな笑顔を見せて挨拶をしていた。 いつもの陽気な雰囲気は見えない。
お義母さんを除いた3人は頭を下げ合い恐縮しまくっていた。 何だか頭を下げ合う姿を見て笑いそうになってしまったのは内緒だ。
「さて、これで全員揃ったのかな? じゃあ始めようか」
と言った時
「ゴメン! 遅れちゃった!」
「すみません! 遅れてしまいました!」
と息を切らせて栞と彼方君が和室に入ってきた。
……おっと危ない。この2人を忘れる所だった。
……ん? おやおや?(ニヤニヤ)
俺は2人の姿を見てからかいたくなる衝動に駆られた。
ふと周りを見ると、俺以外も2人の姿を見てニヤニヤしている。 親父だけは別の表情を浮かべているが。
「……お父さん以外の人は何でこっちをみてニヤニヤしてるの? 何気にお父さんは顔が怖いし」
栞が不思議そうに俺に向かって聞いてくる。
「お前らの今の状況はどんな感じだ?」
「えっ? 今の私達の状況って……あっ!」
栞と彼方君は手を握ったまま和室に入ってきていた。
直ぐにパッと繋いでいた手を放し、恥ずかしそうに俯く栞と彼方君。
俺達は一斉に2人を冷やかしに入った。
「2人とも結婚はいつですか~♪」
「今まで2人で何やってたのかな~♪」
「あらあら♪ お熱いことで♪」
「孫が3人になるのかしら♪」
「「止めて(下さい)!!」」
顔が真っ赤になっている栞と彼方君。
やっぱりこの2人はからかうと面白いなぁ♪
すると俺の背後から異様な気配が……。
振り向くと、そこには親父が両手の指をボキボキ鳴らしながら
「なぁ栞。そちらのイケメン君をお父さんに紹介して貰えるかな?💢」
「ひ、ひゃい!」
「お、お父さん、落ち着いて!」
「ん? 何を言っているんだ? お父さんはいつも落ち着いているが?💢」
親父の人を○せそうな表情にビビり倒す2人。
これは不味いと思った俺と刹那は間に入り説明をする。 彼方君は刹那の弟で、栞の彼氏だと。
俺と刹那の必死の説得に親父の怒りは沈静化したみたいだ。納得はしていないみたいだが。
妙な雰囲気の中、両家の顔合わせが始まった。
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