第74話

~篠宮side~


……はぁぁぁぁ……。 最近物凄く忙しいの。


主に刹那の事についてなんだけど。


刹那ってば、自分の誕生日の翌日に勝手に丹羽さんと入籍しちゃうし。 入籍する前に一言位相談や報告が合っても良いと思わない? 普通有るよね? それとも私の考え方が古いの? 違うよね?


入籍の次の日にやっと刹那から電話で入籍の報告があって、報告を聞いた時私の心臓が止まるかと思っちゃった。


『篠宮さん、私昨日圭介さんの奥さんになりました。2人で区役所へ行って婚姻届を提出してきちゃいました♥️ てへっ♥️』


「てへっ♥️ じゃないわよ!? 何してくれちゃってるの刹那!? 貴女自分の立場分かってるの!?」


『? 立場ですか? 圭介さんの奥さんですけど?』


「そうそう奥さん……って違~う!! 貴女は芸能人なの! しかも大切なドームツアーを控えたトップアーティストなの! ar you OK!?」


『? ちょっと何言ってるのか分からないんですが?』


「わざとでしょ! 絶対わざとに言っているよね貴女! 分かるんだからね!!」


『流石篠宮さん。よく分かりましたね』


「……胃が痛くなってきたわ。 後で胃薬を買いに行かなくちゃ……」


『大丈夫ですか? ストレスでも溜まっているんじゃないですか?』


「誰のせいだと思ってるの!?」


『? 誰のせいですか?』


……この娘は本当にもう!


「とにかく、入籍の件は社長に報告入れるからね! 社長に怒られても知らないから!」


『宜しくお願いしま~す♪ 社長に言うの億劫だったんですよね。だって私が何かする時は必ず根掘り葉掘り聞いてくるんだもん社長。鬱陶しくて』


明るい声でそんな事を言ってくる刹那の言葉に私の頭は強烈な頭痛を覚えたの。


いつかこの娘をギャフンと言わせないといけないかな?


私は頭痛薬と胃薬を飲んでから社長室に向かう。


これ、いつか私の頭禿げるかも知れないわね……はぁ。


社長室の扉をノックする。 すると中から " どうぞ~♪ " と軽快な声がした。 私は扉を開けて中に入る。


中には書類の山に眼を通している社長がいた。 社長は見た目物凄い優しそうな初老の男性だ。


社長は私の顔をちらっと見て直ぐに書類に視線を戻した。 そして


「どうしたの? 何かあった雪菜ちゃん?」


「はい。……社長にお話がありまして…」


「OK。この書類に眼を通したら話を聞くよ。どうせ刹那ちゃん絡みでしょ?」


「社長!? 何故分かるんですか?」


「雪菜ちゃんがそんな顔をしている時は十中八九刹那ちゃん絡みだからね」


滅茶苦茶顔に出ていたみたいね。 でも、流石社長だわ。良く分かってる。


私は社長の仕事が一頻りつくまで部屋の隅で待機する。


そして社長の仕事が一頻りついた所で社長に話を切り出した。


「社長、刹那なんですが」


「刹那ちゃんがどうかしたのかい?」


社長は仕事の合間のコーヒーブレイクをしながら私の話を聞く態勢になっていた。


「刹那が結婚しました。刹那の誕生日の翌日に籍を入れたらしいです」


ブー-ーーーッ!!


私の言った言葉を聞いて社長は口に含んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。 わっ!? 汚い!! コーヒーがスーツに掛かった!? 落ちるかなこの汚れ……最悪買い換えしなくちゃ……。


「ゴホゴホゴホッ!! 雪菜ちゃん、今何と!?」


「刹那が結婚し籍を入れたらしいです」


「せ、刹那ちゃんが!? 結婚!? しかももう籍を入れている!?」


「はい。本人から聞いたので間違いないです」


「…………」


社長は机に両肘を付いて碇○ンドウみたいなポーズを取る。 そして


「まっ、仕方無いか♪ OKOK。了解でーす」


私はその場に転けそうになってしまった。


「社長!? 良いんですか!?」


「だって、もう入籍しちゃったんでしょ? じゃあしょうがないじゃん? それに、刹那ちゃんは1度言い出したら私の言う事なんて聞かない娘だから。 で、刹那ちゃんの相手はどんな男性なんだい? 詳しく知りたいな」


私は社長に呆れながら丹羽さんの職業・人柄・経歴を詳しく説明する。


「ふんふん。成る程成る程。雪菜ちゃんの話を聞く通りだったら、刹那ちゃんを任せても何の問題も無いよ♪ 聞く限り誠実そうな人だしね。それに」


「それに?」


「雪菜ちゃんの絶大な信頼を得ているんだから間違いないでしょ♪」


「社長……はい!」


社長が話が分かる人で本当に良かったと思うわ。


「じゃあ雪菜ちゃん? 近い内に記者会見を開かないといけないね」


「記者会見……ですか?」


「そう、記者会見♪」


「刹那の結婚会見ですか?」


「そうだよ♪ 刹那ちゃんにはこれからもっと頑張ってもらいたいからさ、後顧の憂いを失くす為にね」


「……了解いたしました! 刹那にアポイント入れて、日程を調節します! 会見の時は社長も一緒に宜しくお願いいたしますね」


「了~解~♪」


私は社長室を後にした。 ……さて、刹那の為に頑張りますか。 ……本当に胃に穴が空きそう。頭禿げるかも。


そんな事を考えていると、私のスマホの着信音が鳴る。


誰からだろう? 相手を確認すると


" 赤坂修治 "


修治さん!?


私は急いで通話をタップする!


「もしもし修治さん? どうしたの?」


『いや、用事は無いんだけど、ただ』


「ただ?」


『雪菜さんの声が聞きたくなって…ね。迷惑だった…かな?』


「全然!! 修治さんがそう言ってくれてとても嬉しいです!! 私も修治さんの声が聞きたかったから今幸せです♥️」


『そ、そう。それなら安心した。雪菜さん、少しだけ話せるかな?』


「はい!喜んで♥️」


大変な仕事の前に幸せをチャージ中です♥️















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