第65話

「さて食事も終わったし、刹那に誕生日のプレゼントを渡さないとな」


俺は寝室に刹那へ渡す誕生日プレゼントを取りに行く。 刹那へのプレゼントはネットで注文をしていた。 調理中に○川急便が持ってきてくれた。 刹那が帰ってくる前に届いて良かった。


刹那へのプレゼントには少しだけ細工を施してある。 刹那は気付くだろうか?


俺はプレゼントが入った大きめの袋を抱えてリビングに戻ってきた。


「先ずは私から。刹那さん、お誕生日おめでとうございます♪ 余り良い物じゃありませんが」


栞はプレゼントが入った袋を刹那に手渡した。


「わぁ♪ 栞ちゃんありがとう♪」


刹那は笑顔で栞からプレゼントを受け取る。


「ねぇ、中見ても良いかな?」


「どうぞ♪ 気に入って貰えると良いんですが」


「栞ちゃんから貰ったプレゼントは何だろな~♪」


刹那はウキウキしながら袋を開けて中身を確認する。 袋の中に入っていたのは、クリスチャン・ディオールの香水とマキアージュの口紅だった。


お、この香水と口紅のブランドは男の俺でも知っているな。 両方共女性にプレゼントして喜ばれるブランドの第1位だった筈。 何故俺が知っているのかって? それは俺もネットで検索を掛けたからだ。 最初はこれにしようと思ったのだが、何か違うな~?と思って止めたのだ。


「香水と口紅だ♪ ありがとう栞ちゃん♪」


「このブランド私も愛用しているんですよ。特にこの香水の香りはお気に入りなんで、是非刹那さんにも使って貰えたら嬉しいなと思って選びました」


「うんうん。どれどれ?」


刹那はクリスチャン・ディオールの香水を一振自分の手首に振る。


フワッと良い香りが刹那の手首からした。 


「私、この香り好きかも♪ 大事に使わせて貰うね♪」


笑顔で栞に御礼を言う刹那。


「気に入って貰えたなら良かったです♪」


流石栞だ。同じ女性だからプレゼントのチョイスが上手いな。


「じゃあ次は俺ね」


彼方君がプレゼントの入った袋を取り出した。


「えっ!? 彼方が私にプレゼント!? 珍しい!? 明日は雨かしら?」


刹那は心底驚いた表情をした。


「姉ちゃん何気に酷くね? 俺だってプレゼント位用意するわ!」


刹那の誕生日を忘れていた彼方君が言う台詞では無い気がするのだが……彼の名誉の為にも黙っておこうと思う。


「彼方のくれたプレゼントは何だろう? 少しだけ楽しみな私が居る」


「期待して良いぜ」


自信満々で答える彼方君。


刹那は彼方君から貰ったプレゼントの箱を開ける。


中身はCOACHのピアスだ。


このブランドも知ってるぞ。 これも同じくネットで検索した時に知った。


「お♪ 彼方、あんたにしては良い物プレゼントしてくれたじゃない」


「そうだろ♪ 苦労したんだぜ? 大学生の資金で買えるブランドを探すの。姉ちゃん芸能人だから、市販のピアスじゃ格好つかないと思ってさ」


得意気な顔をする彼方君。 刹那は嬉しそうな顔をして


「ありがとね彼方。大事に使うよ♪」


「おう♪」


さて、お次は俺のプレゼントだな。


俺はさっき寝室から持ってきたプレゼントを刹那に渡した。


「刹那、誕生日おめでとう。皆のプレゼントと比べたらショボく見えるかも知れないけど、受け取ってくれると嬉しいな」


俺がそう言うと


「ショボいなんてそんな! 圭介さんから戴けるプレゼントなら、どんな物よりも1番嬉しいです! ありがとうございます! 喜んで戴きます♥️」


刹那は俺が渡したプレゼントを愛おしげに抱き締める。


そんな刹那の姿を見て栞と彼方君はニヤニヤしている。


「圭介さん! 中身見ても良いですか?」


「ああ。どうぞ。気に入ってくれると良いんだが」


刹那は初めてプレゼントを貰う子供みたいにソワソワした様子でプレゼントが入った袋を開けた。


袋の中身は大きめの犬の縫いぐるみ。 犬種はゴールデンレトリバー。 


以前刹那がテレビを観ながら " こんなワンちゃんがいずれ飼いたいです " と言っていた。 実際マンションでは犬は飼えないから、せめて縫いぐるみでと思ったのだ。


「圭介さん!こんな素敵なワンちゃんの縫いぐるみありがとうございます♥️ ウチ滅茶苦茶嬉しいです♥️」


刹那は感激した様子で犬の縫いぐるみを抱き締める。


「兄ちゃん、縫いぐるみって。本当にショボくない? もっとさぁ、バッグとか洋服とか在ったんじゃ?」


栞が抗議の言葉を挙げる。しかし刹那は


「栞ちゃん、私はこのワンちゃんの縫いぐるみとても気に入りました♪ ワンちゃんが飼いたいっていう私のお願いを圭介さんは聞いてくれたんだと思ってますので、私はこのプレゼント滅茶苦茶嬉しいですよ♥️」


「刹那さんがそう言うなら」


栞は刹那のとても嬉しそうな顔を見て微笑んでいた。


「栞、甘いな。俺がそのプレゼントだけで終わらせると思うのか?」


俺は得意気にそう言い放つ。


「ん? じゃあ兄ちゃん、他にも何かプレゼント用意しているの?」


「ああ。その犬の縫いぐるみは特別製だ。 何か気付かないか?」


俺がそう言うと、3人は犬の縫いぐるみをよ~く観察し始める。すると刹那が


「あっ!? こ、これは!?」


と大きな声を挙げた。


そう、犬の縫いぐるみの首にシルバーのチェーンが巻いてあり、チェーンの先には光輝くダイヤモンドの指輪が付いていた。


「け、けけ、圭介さん!? こ、こここ、これってもしかして」


刹那の焦った言葉を聞いた俺は、ポケットから紺色の小さな箱を取り出して、箱の蓋を開け


「まだ刹那のご両親に正式な挨拶をしていないから先の話になるけれど。 刹那、もし刹那さえ良かったら俺と結婚して欲しい。 これから色々大変な事もあると思うけど、俺が刹那を全力で護っていくから。ずっと俺の傍に居て欲しい」


と刹那にプロポーズをする。


俺の言葉を聞いた刹那はボロボロと大粒の涙を流しながら


「はい💧 ウチは圭介さんの傍に一生居ます。例え何が在っても離れる事はありません💧 喜んでプロポーズをお受け致します💧」


と俺の一世一代のプロポーズを受けてくれた。













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