第63話

そして5月5日。刹那の誕生日の日になった。


今日は残念ながら仕事なんです と言いながら刹那は朝早くスタジオに向かって行った。 俺としては好都合なのだが。


俺は今日は忙しい。 何故か? それは勿論刹那の誕生日パーティー(ささやかだけど)の準備をする為だ。


刹那に " 圭介さんお休みで羨ましいです " とジト目で言われた。 芸能人って大変だなと思う瞬間だった。


さて、じゃあ始めますか。


先ずは部屋の掃除と飾り付けかな? 俺はクローゼットから掃除機を取り出し、リビングを重点的にそうじする。 そしてテーブルに掛けてあるクロスを取り換える。 そしてリビングの壁や天井に飾り付けをしていく。 時間が結構掛かってしまったが、一応パーティーらしい見栄えになったと思う。 まぁ俺 男だから、女性みたいに綺麗には飾り付けは出来ないけどそこの所はご愛敬という事で勘弁して欲しい。


お次は料理だな。 俺は財布をポケットに入れてマンションを出た。 チーズINハンバーグとクラムチャウダーの材料を買いに近くのデパートへ向かう。


スマホ調べながらカートに乗せてある籠の中に各材料を入れていく。 全て揃った所でレジに行き会計をする。


さて、帰ろうか。 俺はデパートを出ようとした時、店舗内にケーキ工房を見つけた。


あっ、そうだった。肝心要のケーキを買ってないなという事に気が付いた。 ふぅ、危ない危ない。


俺はショーケースの中のケーキを見る。


ショートケーキ・チョコレートケーキ・チーズケーキ・モンブランと美味しそうなケーキが並んでいた。


どれにしようかな……と悩んでいた時、ふと頭の中に刹那が好きな抹茶ケーキが浮かんできた。


……そうだな。折角だから抹茶ケーキを手作りしてみようか。 ホールで作るのもありだな。


俺は食品コーナーに戻って抹茶ケーキの材料を買い足し、デパートを出てマンションへ帰った。


材料が入った袋を下ろして一息つく。 その時ふと思った。


今日のパーティーに栞と彼方君を呼んでもいいんじゃないか? と。


思い立ったが吉日 俺はスマホを取り出し先ずは栞に電話を掛けた。


トゥルルル……


『はいもしもし。兄ちゃん? どったの?』


「今日な、刹那の誕生日なんだよ」


『公式のサイトに載ってたから知ってるけど。それが?』


「俺の部屋でささやかだけどパーティーしようと思うんだが、栞 来ないか?」


『おお、良いね! ってでも、兄ちゃん達の邪魔になるんじゃ?』


「……彼方君も呼ぼうかと思っているのだが?」


『どんな用事が在ってもキャンセルして参加させて戴きます! そうと決まれば、プレゼントを買いに行かなくちゃ!』


「彼方君へのプレゼントじゃないからな?」


『当然だよ!馬鹿兄ちゃん!』


栞との通話を終了し、次は彼方君に電話を掛けた。


トゥルルル……


『はいもしもし。丹羽さん、どうしましたか?』


反応が栞に似てるな。何か笑えるかも。


「あのさ、今日は刹那の誕生日だろ?」


『あっ、そうだった! 姉ちゃん今日誕生日だった! 忘れてた……』


おいおい……それで良いのか彼方君?


『ね、姉ちゃん何か言ってましたか?』


「いや?特には何も。どうして?」


『よ、良かった……。姉ちゃんの誕生日忘れてたなんて知られたら……ブルブル…』


何か昔あったのだろうか? 彼方君の声が怯えているぞ?


「や、電話したのはな、今日ささやかだけどパーティーしようと思うんだが、彼方君も来ないか?」


『パーティーですか? 良いですね。ってでも、姉ちゃんが何と言うか』


「ちなみに栞は来るけど?」


『是非参加させて戴きます! 姉ちゃんが何と言おうと絶対参加します! と、とりあえず姉ちゃんへのプレゼントを買いに行かないと』


おおぅ……栞が来ると知った彼方君の勢いが半端無いぞ!?


「じゃあ後でな」


彼方君との通話が終了後、俺は料理の準備を始めた。


先ずは料理からだな。ケーキは後で作る事にする。


此処で登場! ○ック○ッド先生! 俺の強い味方だ!


チーズINハンバーグの作り方を先生で検索し、調理を開始する。


今回は4人分だから、先生に記載されている量を倍にすれば良いのか。 結構大変な作業だな。


1人で四苦八苦していると


" ピンポーン "


インターフォンが鳴る。ん? 誰か来たみたいだな。


俺は調理を中断し、インターフォンのマイクに


「はい。どなたですか?」


『丹羽さん、彼方です。開けて貰っても良いですか?』


どうやら彼方君が来たみたいだ。


「了解。今開けるよ」


ロックを解除し、彼方君を部屋に招き入れた。


「いらっしゃい」


「お邪魔します。わっ! 丹羽さん凄いですね」


キッチンの惨状をみて彼方君は驚いている。


「既存の物じゃなくて、1から作って刹那を祝ってやりたいんだよ」


「良いですねそれ。丹羽さん、もし良かったら俺手伝いましょうか?」


「ん? 良いのかい?」


「はい。昔からこういうの得意なんで」


彼方君は荷物を置いて腕捲りをし俺の横に立って調理を手伝ってくれるようだ。


「じゃあ俺は何をすれば良いですか?」


「そうだなぁ。俺ハンバーグを作ってるから、彼方君はクラムチャウダーをお願い出来るかい?」


「了解です。任せて下さい」


彼方君は手際良く調理を始めた。


「ありがとう。助かるよ。栞じゃこうはいかないんだよな」


「えっ? そうなんですか?」


「ああ。栞は料理がからっきし……」


俺がそこまで口にした時、急に背中に悪寒が走った。


はっ! 殺気!?


慌てて辺りを見渡すが、キッチンには俺と彼方君しか居なかった。


……何だったんだ!? さっき殺気を感じた様なきがしたんだが!?


「? どうしましたか丹羽さん?」


「い、いや何でも無いよ。はっはっは」


とりあえず料理を作ってしまおう。 


俺は彼方君と一緒に調理を進めた。














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