第43話

少しトラブルがあったが、今は落ち着いて皆でリビングの椅子に座り談笑をしている。


談笑中、電話口でお袋に " 後でじっくり話を聞かせて貰うからね " と言われていたのを思いだし、俺は刹那との出会いを簡単に説明する。 じっくりとは言われたが、詳しくとは言われていない。 刹那は俺の右隣に座りニコニコしながら俺の話を聞いていた。


「兄ちゃん、本当ならレスキューを呼んだ方が良かったんじゃないかな? 2次災害もありえたし」


栞のもっともな問いかけに対して


「そんな暇はなかったんだよ。後少し遅かったら刹那は海の底に沈んでいたんだから」


と答えた。すると俺の右腕に柔らかく幸せな感触が。 刹那が俺の右腕に抱き付いてきていた。


「圭介さんが助けてくれなかったら、ウチはこの場にはいませんでした。圭介さんには物凄く感謝しているんです♥️」


「刹那さん、少し気になったんだけど、刹那さんの素の自分の呼び方はもしかして " ウチ " ?」


栞が刹那に疑問を投げ掛ける。


「えっ!? 何故それを!?」


「だって、私達とか他の人と話す時は " 私 " って言ってるけど、兄ちゃんに対してだけ " ウチ " って言ってたから。もしかしてそうかな?と思って」


「……実はそうなんです。 " ウチ " から " 私 " に変えた理由は、何だか " ウチ " って言い方子供っぽいじゃないですか。 芸能界に入ってから、自分の事を皆 " 私 " って言っていたから、自分も呼び方変えなくちゃ浮くと思ったんです。 " ウチ " から " 私 " に変えるのは結構大変でしたね。 浮かない様にするの必死でした。 でも、圭介さんの前では " 素 " の自分が出てきちゃうんです。 圭介さんの前では飾らないで良い 素の自分を出しても嫌われないと。そのままの自分を受け入れてくれるって思っちゃうんです」


「俺は刹那の " ウチ " って言い方大好きだよ?」


「えへへ。 ほら ね♪」


刹那は俺の顔を見て笑顔で微笑む。


「……ご馳走さまです」


栞の呆れた顔が印象的だった。



……ん? 何だか親父がさっきからソワソワしているのだが? どうしたのだろう?


チラチラと俺と刹那の方を見てくる。


そして親父は位を決したみたいな表情で


「圭介のLXを運転させて貰えないだろうか!」


と刹那に頭を下げてきた。 ん? 何故刹那に言うんだ?


「私に言われましても……。圭介さんが良いと言われるのなら私は別に……」


「そ、そうですよね。ははは。 と言う訳で、圭介車運転させてくれ」


「良いけど事故るなよ?」


「愚問だ」


俺は親父にLXの鍵を渡す。


「ありがとう。じゃあ行ってきます」


と刹那に頭を下げてからガレージへスキップしながら向かって行った。


「だから何故私に?」


……変な親父だな。


それから数十分後、談笑を続けていた俺達の元にニコニコしながら親父が戻ってきた。


「いやぁ、やっぱり○EXUSは素晴らしい! 運転出来て良かった! ありがとう。お陰で楽しい時間が過ごせたよ」


と親父は刹那に頭を下げてからLXの鍵を返してきた。


「お義父様? 私にじゃなくて、圭介さんに鍵を返されたらと思うのですが?」


親父は はっ! とした顔をし


「ほら。また乗せてくれ」


と言って俺に鍵を返してきた。


「あ、ああ。何時でも言ってくれ」


親父はまた刹那に向かって頭を下げてからソファーに座った。


……もしかして刹那の事が怖い……とか? まさかな。


何度も親父から頭を下げられた刹那は困惑した表情をしていた。


「だから何故にお義父様は私に?」





ふと時間を確認すると、時計の針は11:30を指していた。道理でお腹が空いた訳だ。


「なぁ、昼飯どうする? 外食でもする?」


俺がそう提案すると、お袋が


「外食? 私が作るから外食は無しね。お金が勿体無いでしょ?」


お袋は昔から倹約家だ。だから丹羽家では滅多に外食はしない。


「あっ、私もお手伝いします!」


刹那が手を上げて昼食作りの手伝いを申し出た。


「そう? じゃあお願いしようかな? 正直助かるわ♪ 栞は全然手伝ってくれないから。栞は料理できないしね。一人暮らしをして大丈夫かしら? 心配だわ」


「ちょっとお母さん!? 刹那さんの前でそんな事言わなくても良いでしょ!?」


焦った栞がお袋に異議を唱える。


「だって本当の事じゃない♪」


「本っ当に信じられない💢」


「まあまあ栞ちゃん。これからゆっくり憶えれば良いんですから」


「ふえええん! 刹那さぁん」


怒っている栞を刹那が慰めていた。 何だか本当の姉妹みたいだな。


お袋と刹那はキッチンに向かい、冷蔵庫の中を確認して調理を始めた。


「人参・玉葱・馬鈴薯。そしてお肉いう事は、メニューはカレーですね?」


「刹那さん大当たり♪ 刹那さんは普段から料理はするの?」


「時々ですがしますね。いつも圭介さんは美味しいって言ってくれています❤️」


「時々って言っていたけど、後は外食とか?」


「いえ、仕事が忙しい時は圭介さんが作ってくれています。圭介さんのお料理は絶品ですよ♪」


「あらあら。圭介は意外と器用だからねぇ。多分刹那さんに出す料理には特別なスパイスが入っていると思うわよ?」


「えっ? そのスパイスって一体何ですか?」


「…愛情…とか?」


「……もう。お義母様ったら……//////」






「……兄ちゃん、何で顔が赤いのかにゃ?」


「……うるせえよ。良いだろ別に」


着々と2人の調理は進み、12:30頃には昼食が完成した。 スパイシーなカレーの香りが食欲をそそるな。


それから俺達は昼食のカレーを美味しく戴いた。


「どうですか圭介さん♥️ ウチもお義母様の調理を手伝ったんですよ?」


「うん。最高に美味しいよ。いつも食べていたお袋のカレーより数倍美味しい気がするな」


「そ、それはですね、圭介さんのカレーには、特別なスパイスが入っていますから//////」


「そ、それって」


「は、はい。ウチの愛情……です♥️」


「そ、そうか//////」




「ねぇお父さんお母さん、今日のカレーは滅茶苦茶甘い気がするのは私だけ?」


「あら奇遇ね。お母さんもよ」


「俺もそう思う」





























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