第30話

今日は1月2日。 時刻はAM7:00ちょっと過ぎ。


俺は隣で気持ち良さそうに寝ている刹那を起こさない様にベッドを抜け出る。


衣類を着用し、リビングのカーテンを開けた。


朝の光がリビングに射し込んでくる。


そしてリビングの窓も開けると、1月の肌寒いが心地よい空気が部屋の中に入ってきた。


……この空気で目が少し醒めるな。


俺はコーヒーでも飲みながらゆっくりしようかな?と思い、キッチンに向かおうとする。その時、俺の背中にやたら柔らかい感触が。


「圭介さん♥️ おはようございます♥️」


服の上からでも感じるこの感触。


「……刹那。服位着なさい。風邪引くよ?」


俺の背中に抱き付いてきた刹那は…全裸だった。


「大丈夫ですよ❤️ 圭介さんに抱き付いているし……クシュン! えへへ。やっぱり少し寒いですね❤️」


刹那は急いで寝室に戻り、衣類を着用し戻ってきた。


俺は苦笑しながらキッチンで2人分のコーヒーを淹れる。 1つを刹那に渡して俺はリビングのソファーに座りコーヒーを一口飲んだ。 ……やっぱりこの独特な苦味が目覚ましには丁度良いな。


刹那も俺の横に座ってコーヒーをちびちび飲んでいる。


俺はコーヒーはブラックで戴くのだが、刹那は砂糖たっぷりと牛乳で割った 所謂カフェオレが好みだ。 1度コーヒーのブラックにチャレンジしたみたいだが、1口で断念したらしい。 いずれブラックコーヒーも飲める様になりたいと練習はしているみたいだ。



コーヒーを飲みながらテレビを見ていると、テレビは初詣の話題をしている。 神社の境内に参拝客が大勢集まり、本殿に参拝している場面が映し出されていた。


「初詣か。そう言えば、初詣なんか久しく行ってないな」


すると、俺にもたれ掛かっていた刹那がガバッ!っと起き上がり


「圭介さん! 今から初詣に行きましょう! そして、お願い事をするんです! その後おみくじも引きましょう!」


と凄い勢いで言ってきた。


「や、神社は人で一杯だろ? 行っても良いけど大変な騒ぎになるぞ?」


「何でですか?」


「お前な……自分の立場理解出来てる? 刹那は何の仕事をしているんだ?」


「ウチの仕事……? ウチは…はっ!」


どうやら自分の立場に気付いたらしく、その場に項垂れてしまった。


「ウチも圭介さんと初詣に行きたかった……こんな時自分の仕事を恨むよ……」


滅茶苦茶落ち込んでいる刹那を見て、刹那に


「刹那、どうしても初詣に行きたい?」


「……行きたいです」


「……よし。それじゃあ初詣に行こうか」


「……どうせ駄目なんでしょうね……って!? 良いんですか!?」


「ああ。俺も刹那と一緒に初詣に行きたいしね」


もし刹那が報道陣やファンに囲まれたとしても、俺が身を挺して守ってやればいい。ただそれだけの事だ。


俺の言葉を聞いて刹那は


「やったー♥️ 圭介さんと初詣だー♥️」


と万歳しながら滅茶苦茶喜んでいた。


この笑顔が見られるなら、報道陣やファンから刹那を守る事は苦じゃない。 むしろ絶対守りきってみせるさ。


刹那はそれからすぐにいそいそと着替えを始めた。


「えっと~。先ずは服装だよね~♪ どれが良いかな~♪ このワンピース? それともロングスカートにジャケットかな? う~ん迷うなぁ」


ウォークインクローゼットの中でゴソゴソと服を物色している刹那。


俺もコーヒーを飲み終わったし、着替えるか。


俺の服は直ぐに決まった。 カジュアルシャツにスラックス、それにジャケットとありきたりな服装だ。 本当は長いTシャツとジーンズでも良かったのだが、刹那が気合いを入れているみたいなので、刹那に恥をかかせる訳にはいかないから止めた。


髪型を整え(年始位はちゃんとしたい)髭を剃り準備完了。 後は刹那の着替え待ちだ。


そして待つ事1時間。やっと刹那が着替えを終わらせやって来た。


「圭介さん、どうですか? 似合ってます?」


……俺は言葉を失った。 滅茶苦茶綺麗だ。


刹那の服装はなんと和服だった。


赤を主調にした和服。所謂振袖だ。


ブロンドの髪をアップにして、メイクもバッチリ決まっている。


刹那って洋服も似合うけど、和服も似合うんだなと正直に思った。


「最高に綺麗だよ。刹那はどんな格好をしても似合うね」


素直な感想を言うと、頬を赤らめて滅茶苦茶照れていた。


「ありがとうございます♥️ えへへ。圭介さんに褒められちゃった♥️」


しかし……いつの間に和服なんて持ち込んだのだろうか? そう言えばクローゼットの中にやけに大きい長箱があった気がするな。


「刹那って和服の着付けが出来たんだね」


「はい。母に昔教わりました。そりゃもうみっちりと……アメリカ人の癖に何で着付けに詳しいのさ……」


何故か刹那の目が遠くなっている。……そんなに大変だったのか。


「と、とにかく準備が出来たんだ。出掛けようか」


「そうですね。行きましょう❤️」


玄関口で刹那が


「圭介さんのその姿、とても素敵です♥️ 惚れ直しちゃいます♥️ 髪型も決まってます。でも……今日だけですよ? その髪型にするのは。 ……何だか心配だなぁ……悪い虫が付きそう」


と言ってきた。


俺は刹那の服が着崩れない様に細心の注意を払いながら刹那を車の助手席に乗せる。 運転席に乗り込む際に、俺も和装にしたら良かったかな?と思ったが、余りにも似合わない自分の姿を想像してしまい、この姿が正解と思い直した。


俺達は近くの神社に向かって車を発進させた。


運転しながら刹那をチラ見する。 ニコニコと笑う刹那の姿はやっぱり滅茶苦茶綺麗だと思った。





























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