第29話
マネージャー(臨時)になってから慌ただしい毎日が続いた。 刹那のメンタル面・体調面の管理や(メンタル面はほぼ俺関係で周りへの嫉妬から来るストレス)スタッフさんとのコミュニケーションを取る事、そして刹那の付き添い等々。
営業やSNSの管理は流石に俺には出来ず、篠宮さんが入院先からしてくれていた。
そして、時は流れ12月31日。 今日はカウントダウンライブ当日となった。
いやぁ、早朝から物凄く忙しい。 去年の俺に教えてやりたい。今年の年末は死ぬ程忙しくなるぞ。年末の大掃除や、某番組(笑ってはいけない)を見て笑っている暇はない……と。
今日ライブをする場所は日本でも有数の場所で、かなり規模が大きい。 俺がライブをする訳じゃないけど、滅茶苦茶緊張している。
出演アーティストもメジャーなバンドが多数。 余り音楽を知らない俺でさえ知っている程の面子だ。
そんな中で歌う刹那はやっぱりトップアーティストなんだなと改めて思った。
バタバタと準備をしていると、あっという間にカウントダウンライブのオープニングが始まった。
先ず初めに、国民的アイドルユニットが歌い始めた。
流石国民的アイドルユニット。歌が物凄く上手い。そしてダンスもメンバー全員が綺麗に揃っている。
……おっと、いけない。 俺はアイドルユニットを見ながら刹那の順番を確認する。
刹那は……最後から2番目か。カウントダウン間近だな。
それから続々と各アーティストが歌い、いよいよ刹那の順番が近くなってきた。 観客のボルテージも最高潮になっている。
するとディレクターさんから
「本番まで後30分です! マネージャーさん! 由井さんにスタンバイする様に声を掛けて下さい!」
「分かりました! 直ぐに準備させますので!」
俺はディレクターさんの指示により急いで刹那の楽屋に向かう。
楽屋の扉を開けて
「刹那! 後30分で本番だから、直ぐに準備して!」
「大丈夫大丈夫♪ メイクもバッチリだし、衣装もこれでOK♪ 直ぐに出れますよ♪ 後は……」
「後は?」
俺がそう聞くと、刹那は俺をギュッと抱き締めて
「圭介さん成分の補充だけです♥️」
と俺に甘えてきた。
「ほら、それは後で補充すれば良いから、今は早く準備をする! 皆に迷惑掛けないの!」
俺は抱き付いている刹那を引き剥がし注意する。
「む~っ!圭介さんの意地悪! いいもん。後でたっぷり圭介さん成分を補充するもん!」
頬を膨らましながら刹那は可愛く拗ねていた。
拗ねる刹那を何とか宥めて、ステージに向かわせる。
「お待たせ致しました! 宜しくお願いいたします」
ステージに入る前に挨拶を済ませる。
「由井さん、次です。頑張って下さい!」
「精一杯頑張ります! 宜しくお願いします」
今ステージに上がっているアーティストの出番が終了し、いよいよ刹那の順番となった。
刹那はステージに上がる前に、俺に向かって
「圭介さん、ウチのステージしっかり見てて下さいね♥️」
と言って投げキッスをしてきた。
そして元気一杯にステージに向かっていった。
刹那の歌は他のどのアーティストよりも上手く、どの女性アーティストよりも美しかった。(彼氏目線かも知れないけど)
どの観客も刹那の天使の歌声に聞き惚れていた様に見えた。
約15分位のパフォーマンスの後、刹那はステージを降りた。 観客からの拍手と歓声が鳴り止まない。 それだけ刹那のステージは最高だったという訳だ。
ステージを降りた刹那は、真っ直ぐに俺の元に駆け寄り(男性アーティスト達の声を無視して)抱き付いてきた。
「圭介さん! ちゃんと見てくれましたか?」
「ああ。ちゃんと見てたよ」
「ウチ、ちゃんと上手く出来ていましたか?」
「ああ。刹那のステージは最高だったよ。この拍手と歓声が何よりの証拠さ」
すると刹那は俺を上目遣いで見詰めてきて
「じゃあウチ、ご褒美欲しいです♥️」
「凄かったよ。よく頑張ったね」
俺は刹那の頭を優しく撫でた。
「むぅ。思ってたのと違う……けど、滅茶苦茶嬉しい♥️」
刹那は俺の胸に顔を刷り寄せてくる。
俺は刹那を抱き締めたい衝動に駆られたが、理性で押さえ込んだ。
……殺気!?
周りを見渡すと、男性アーティスト達から嫉妬と羨望の視線が注がれていた。
刹那は滅茶苦茶綺麗で可愛いからそんな目線を向けられてもしょうがないと思う。
……危なかった! 刹那を抱き締めなくて良かった! もし抱き締めていたら殺される所だったぜ。
今は彼氏彼女じゃなくて、アーティストとマネージャーなのだ。分別は付けないとな。
そして、間もなく新年へのカウントダウンが始まった。
…5…4…3…2…1… 明けましておめでとうございます!
盛大な花火と共に俺達は新年を迎えた。
それから出演者全員のトークを交え、ライブは無事終了した。
ライブが終了して3時間後。俺達はマンションに帰宅した。
現在の時刻 AM4:00
流石に睡魔が……。去年迄この時間まで起きている事は無かったからな。
でも、無事に終了する事が出来て良かった。 これで俺のマネージャー業務も終了だな。 後4日もしたら篠宮さんも退院してくるだろうし。
刹那も、3日迄休暇だって言ってたし、3ヶ日はゆっくりと過ごそうかな。
俺と刹那はシャワーを浴びてベッドに入った。
……刹那はもう俺の部屋に居着くつもり満々みたいだな。だって、今だって普通にベッドで寝てるし。
すると
「えへへ。圭介さん♥️ ご褒美は頭を撫でるだけじゃ無いよね?」
俺にすり寄ってきた刹那がそんな事を言ってきた。
「え? そのつもりだったけど?」
俺がそう答えると、刹那は頬を膨らませ
「あれだけじゃ足りません~! もっと別のご褒美が欲しいんです~!」
「別のご褒美って何が欲しいの?」
「そうですね……例えば……こんなんとか?♥️」
それから俺は夜明けまで寝る事が出来なかった。
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