第21話
病院の帰りドラッグストアに寄り、経口補水液と栄養補助食を箱買いする。 食事を自炊しても良いんだけど、身体が重ダルくてそんな気に成らないのが今の現状だ。
部屋に帰った俺は、喉の乾きを経口補水液で潤し、栄養補助食を食べて、処方された薬を服用してから直ぐにベッドに潜り込み眠りに着いた。
寝る・目覚めたら食事(栄養補助食と経口補水液。そして服薬)・そしてまた寝る。
多分治る迄の間はこの生活が続くんじゃないかな? と思っている。
初日 : さっきも言った通り食事(栄養補助食と経口補水液)を摂ってから薬を飲む。 検温すると、熱はやっぱり38℃台後半をうろうろ。 結構意識が朦朧としている。 俺のスマホはひっきりなしに鳴っている。 着信 10件 LINE 58件 ほぼ刹那からだ。後2~3件赤坂から。 俺は意識が朦朧としていた為、返信不可能。
2日目 : 朝から倦怠感が強くベッドから起き上がる事が億劫だった。 検温すると、熱はやっぱり38℃台。 経口補水液で喉を潤し、栄養補助食を食べて薬を服薬する。 ぼ~っとした頭で " ヤバいな。仕事が滞る。皆に迷惑が掛かってしまうな " なんて事を考えてしまう。 でも今の俺の状態で仕事に出ても、皆の邪魔になるからと考えて再び眠りにつく。
何度かそれを繰り返して1日終了する。 やっぱり俺のスマホはひっきりなしに鳴っていた。
着信 10件 LINE 50件 全て刹那からだった。 LINE50件の内2~3件程は返事を返す事が出来た。 内容は心配する内容と、2~3件のお小言(昨日返事を返さなかった事に対する)だった。
3日目 : 倦怠感も取れて熱も37℃台に下降する。 ベッドから起き上がるのも楽になり、結構思考も回復した。 しかし……あまり食欲が無かった為に、朝・昼食は栄養補助食と経口補水液で済ませた。
夕方になり、俺はスマホを確認する。
……おや? 今日は着信 0件 LINE 0件 だった。
成る程、流石に刹那も多忙な身だからスマホを触れなかったのだろうな。 本当ならこれが普通だ。
刹那は心配しすぎなんだよ。 たかだかインフルエンザ位で死ぬ訳でもあるまいし。 薬飲んで寝てれば治るんだから。 この調子だったら、医者は一週間は絶対安静と言っていたが、明後日には仕事に復帰できるな。
ベッドに座ってそんな事を考えていると
" ピンポーン! "
と玄関のチャイムが鳴った。
ん? 誰だろうか? 新聞の勧誘かな? しつこいな。これまでも散々断っているのに。
俺はベッドから立ち上がり、面倒くさそうな感じで玄関を開け
「新聞の勧誘なら間に合って……」
玄関先に居たのは新聞の勧誘では無く、帽子を深々と被り マスクをし サングラスを着けた怪しい(?)女性だった。 両手で重たそうに買い物袋を持っている。
「……あの、お嬢さんや? 何故此処に居るのかね?」
呆れた顔をして俺は目の前に居る人物に訊ねた。
女性はサングラスとマスクを外し
「心配だったから……来ちゃった♥️」
怪しい女性の正体は、皆さんの予想通りです。
ニコニコ顔の刹那だった。
玄関先に立たせておく訳にもいかず、俺は刹那を部屋の中に入れる。
「……治る迄会わないと言った筈だけど?」
「……そんな事知らないもん」
「……え?」
俺が聞き直すと、刹那は頬を膨らませて
「知らないって言ったの!」
激オコ状態である。
えええ~っ? 何で怒っているのかな?
「彼女が大切な彼氏のお見舞いに来て何がいけないというんですか! ウチはうつってもいいから圭介さんの看病がしたいの!」
「でもな、刹那は仕事が……」
「そんなの関係ないもん! 今回ばかりは圭介さんの言う事聞かないもん!」
大声で抗議をする刹那。刹那は言い出したら聞かないからなぁ。
結局……俺が折れた。
「分かったよ。でも、少ししたら帰るんだぞ?」
「うん♥️ 分かりました♥️」
満面の笑みを浮かべる刹那。 ……やれやれ。うつっても知らないぞ。
「ウチ、圭介さんにお粥を作ってあげようと思って材料買ってきたんだ♪ 圭介さん、お台所お借りしますね♪」
そう言って刹那はキッチンへ向かって行った。
すると、直ぐに
「な、な、な、何ですかこれは~!?」
と刹那の叫び声が響いた。 な、何だ!? 一体どうしたと言うんだ!?
俺が慌てて刹那の後を追うと、刹那はキッチン前にあるゴミ箱を見つめてワナワナと震えていた。
へ? 何故刹那はゴミ箱を見て震えているのだろうか?
……あっ、やべぇ。
ゴミ箱の中には経口補水液と栄養補助食のカスが一杯だった。
刹那は俺の方を向くと
「圭介さん! 今まで食事はどうしてたんですか!」
鬼の形相で俺に言ってきた。 せ、刹那さん? 少し怖いんですが?
「えっと……あれだけ…かな?」
「……💢」
「……テヘッ♪」
「テヘッ♪じゃありません💢 どうしてちゃんと食べないんですか! 固形物は無理でも、お粥位は食べれるでしょう💢」
「だって……身体がダルくて食事作る様にならなかったんだよ」
俺がそう言うと、刹那は深い溜め息を吐いて
「こんな事じゃ治る物も治りませんよ。 やっぱりお見舞いに来て良かったです。 もう……やっぱり圭介さんにはウチが付いてないと心配で心配で堪りません」
俺は刹那からお説教をされる。その後刹那がお粥を作ってくれた。
刹那の作ってくれたお粥はとても美味しく、とても優しい味がした。
それから数日後。 俺の体調は全快した。 全快する間、少しの時間だが刹那が毎日来て食事作りや洗濯等をしてくれた。
正直な所、とても嬉しく助かった。
ちなみに刹那はインフルエンザには罹らず、今も元気一杯である。
……刹那は凄いなと思った。俺と接触していたのにうつらないのだから。
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