9話

猫耳「黒髪女さんっ!?その姿はっ!?」

狐耳「どうやらワタシにも、才能あったみたいだね……魔法少女としての才能が」

猫耳「二の腕のクリスタルが……」

兎耳「どうやって私の集束魔弾を防いだのかは知らないけれど……やれやれ、こんなことなら、連れてくるんじゃなかったわ」

狐耳「それはどうも。敵さんに嫌がられるっての、光栄なことだね」

猫耳「新しい魔法少女……」

狐耳「愛と欲望の使者・狐耳魔法少女、ここに見参……ってね」

兎耳「どんなに数が増えようと同じことっ!」キイィン

猫耳「魔弾っ……」

狐耳「それは、効かないんだなぁ」ぱちん

猫耳「!?姿が!?」

兎耳「私の姿っ!?」

兎耳(狐耳)「確か……こうかな?」(くいっ)

猫耳「魔弾が曲がった!」

ドォン

狐耳「よーし、うまくいった」

兎耳「……ま、まさか、私の姿と能力がコピーされたっていうの……?」

狐耳「ふふ、どうやら、そうみたいだよ」

猫耳「すごい……」

狐耳「見た?見た?猫耳ちゃん、ワタシの力っ!」

猫耳「黒髪女さん……いや、狐耳さん……!」

兎耳「よくもっ……」キイィン

狐耳「うわっとと……一旦逃げるよ、猫耳ちゃんっ!」

猫耳「え、わぁっ!?」(ダッ)

兎耳「く、待ちなさいっ!」

狐耳「うひょー!身体が軽い!これが魔法少女の力っ!」

猫耳「ち、ちょっと狐耳さんっ大丈夫なんですかっ!?逃げきれますかっ!?」

狐耳「今はひとまず態勢を立て直すんだよっ!っと!」

猫耳「わぁ!?(魔法少女に抱き抱えられるの、こんなに怖いんだっ!?)」

狐耳「行くよぉー!」

猫耳「わあああぁっ!?」


・・・


狐耳「……変身、解くよ」

猫耳「……はい」

シュウウゥ

黒髪女「……はぁ、危なかった……」

素猫耳「無茶しすぎですよっ、もうっ!」

黒髪女「へへ……ごめんね、心配かけて。それよりほら、少しでも休んでな」

素猫耳「……もう」

素猫耳「(……でも驚いたな……黒髪女さんが魔法少女になるなんて……)」

素猫耳「(黒髪女さん……あの時、どんな強い意志があったんだろう……)」


――……ワタシが盾になって猫耳ちゃんが助かるなら、構わない――

――……猫耳ちゃん。いつも守ってくれてありがとう。今度は、ワタシがあなたを守る番だよ――


素猫耳「(~~っ!!)」

素猫耳「(思い出しちゃったぞ……うわぁ、すごく恥ずかしい……)」

素猫耳「(黒髪女さんは……)」

黒髪女「……うん?」

素猫耳「(すごく平気そうだ……うわぁ、どうしよう、ボクだけ舞い上がってるみたいじゃないか……)」

黒髪女「大丈夫?顔、真っ赤だけど……」

素猫耳「だだ、大丈夫ですっ!?」

黒髪女「……ねぇ、素猫耳くん」

素猫耳「は、はい」

黒髪女「魔法少女って、強い意志があれば力が湧いてくるんだよね?」

素猫耳「あ、はい。たぶん……」

黒髪女「……なら、さ」

黒髪女「ワタシを守ってよ。ワタシだけのヒーローになってよ」(ずいっ)

素猫耳「く、黒髪女さん?あの、距離」

黒髪女「だめかな?」(ぴと)

トクン

素猫耳「あ、の、だめでは……ないです……」

黒髪女「……じゃあ、ワタシもさ、君だけのヒロインになるから」(ぷに)

素猫耳「!!」

黒髪女「……ワタシだけを守って。ワタシは、君を裏切ったりしないから」

素猫耳「……黒髪女さん……ボクは……あなたが――

ドォォォン!

素猫耳&黒髪女「「!!」」

兎耳「見つけたわ!さぁ、降りてきなさい。逃げ場は他にないわよ」

黒髪女「……まったく、ムードも何もあったもんじゃないな。空気読めってば……」

素猫耳「黒髪女さん、ボク、外に」

黒髪女「待って」(ぐい)

素猫耳「へ?」

黒髪女「力の出るおまじない、してあげる」

素猫耳「おまじない?」

黒髪女「素猫耳くん」

素猫耳「はい」

黒髪女「目を閉じて」


・・・


兎耳「遅いわね……なら、この建物ごと……」(キイィン)

狐耳「とうっ!」

兎耳「!出てきたわね狐耳っ!」(ドシュウ)

狐耳「うわっとと……相変わらず容赦ないね」

兎耳「猫耳さんはどこ?まだ回復が終わってなかったかしら?」

狐耳「教えられないね、猫耳ちゃんはワタシが守るもの」

兎耳「ふん……取るに足らないわ。所詮あなたじゃ、私には勝てない」

狐耳「やってみなきゃ、分かんないよ?」

兎耳「なら、分からせてあげるわ」(キイィン)

狐耳「そんな魔弾っ」

兎耳「じゃあ避けてみて」(クイッ)

狐耳「へ?うわぁっ!?」(ドテッ)

兎耳「消えなさい」

狐耳「!」(ぱちん)

ドシュウ

ドォン

狐耳「……ふぅ、危ない危ない」

兎耳「小石に化けて攻撃を避けたのね……姑息な手を」

狐耳「さぁさ、次はどんな芸を見せてくれるんだい?ビューティー」

狐耳「(猫耳ちゃん……あとは君次第だよっ……)」


猫耳「……すごいな、おまじないの効果。大分動けるようになったぞ……」

猫耳「(……まだ感触が残ってる……ふふ、ふへへ……っ……っと、ダメだダメだ、今は戦闘中なんだ。余計なことは考えちゃダメだ)」

猫耳「(しかし……そーっと近付くといっても、簡単なことじゃないな……狐耳さんが引きつけてる間に近づかないと意味がない……)」

猫耳「(二人で考えた作戦なんだ。上手くやらないと……)」

猫耳「(……っぶな!?魔弾飛んできた!?)」

猫耳「(そろそろか?いや、もう少し……)」


狐耳「はぁ……はぁ……」

兎耳「さすがに息が上がってきたようね。けど残念、私はかすり傷一つ負ってないわ」

狐耳「わ、ワタシだってノーダメージだから、イーブンじゃないかな?」

兎耳「強がりしちゃって……」

狐耳「虚勢を張るの、狐っぽいでしょ?」

狐耳「(猫耳ちゃんの準備はできたかな……それに……アレは……うん、大丈夫。壊れてないな」

兎耳「さっきから周りをちらちら見てるけど……」

狐耳「!」

兎耳「猫耳さんと打ち合わせでもしたのかしら?私の目を潜り抜けて奇襲をするって」

狐耳「な」

兎耳「残念ね、もう猫耳さんは捕捉してるのよ」(キイィン)

狐耳「ちょ、そっちは――!」

兎耳「そこにいるんでしょう?猫耳さん」

猫耳「げっ」

兎耳「浅はかな作戦ね。……さようなら」

猫耳「……!」(トクン)

狐耳「猫耳ちゃんっ!(間に合えーっ!)」(ぱちん)


ドォンドォンドォン


ぱらぱら……

兎耳「けほっ……すごい煙」

兎耳「……どう?猫耳さん、あなた達が束になろうと、私には勝てないわよ」

猫耳「う……」

兎耳「可哀想に、こんな姿になるまで戦っちゃって……」(スタスタ)

兎耳「……せめて、一撃で楽にしてあげる」(がしっ)

パシャ

兎耳「……え?」

猫耳?「いやー!いいアングルが撮れたねぇ!」

兎耳「な、何?そのカメラはっ?」

猫耳?「お、その焦ってる表情も、グっと来るね」

兎耳「ちょ、止めなさい!馬鹿っ!どこをっ!?」

猫耳?「うひひ、やっぱりビューティーは黒のパンツですなぁ」(シュン)

兎耳「あ、あなたっ!?」

狐耳「おっ、そうやってスカート抑えてる姿もいいけど……とりゃ!」

兎耳「きゃっ!?や、止めなさいっ!?」

兎耳「(何!?何なの!?何で狐耳がここにいて、私の下着を――

ァァァッ

兎耳「はっ!?」

狐耳「やっちゃえ!猫耳ちゃん!!」

猫耳「とりゃあああああっ!」

兎耳「しまっ――

ガッ


ドォォォン


猫耳「……はぁ、はぁ……」

狐耳「……やった……?」

ぱらぱら

研究員「……」

猫耳「……研究員さん……」

研究員「……ふっ、負けたわ。全く……なんて恐ろしい作戦を考えつくのよ」

狐耳「あなたみたいな、お高く止まってる人ほど、効果絶大ってね」

研究員「……ふふ、魔法少女の事を全て知り尽くしたつもりでいたのに……ね」

研究員「あの一瞬ですり替わるなんて……猫耳さんの能力ね……」

猫耳「はい」

研究員「……さて、私をどうするつもりかしら」

猫耳「研究員さん、お願いします。あなたの罪を認めて、それを償って下さい。ボクも、お手伝いはしますから」

研究員「……はぁ、結局、私が間違っていたのね……でも、無理よ」

猫耳「え?」

研究員「……私、もうダメみたい。下半身の感覚が無いの」

狐耳「っ!」

猫耳「そんなっ!?今、助け出しますからっ!?」

研究員「救いようのない悪人も……死にかけの重症者も、助けてくれるの……?ヒーローだから?」

猫耳「ボクは……」

狐耳「……猫耳ちゃん」

猫耳「狐耳さん……ボクは……あなただけのヒーローだって……」

狐耳「そうよ」

猫耳「!」

狐耳「君が他の女のヒーローだなんて、絶対に認めないんだから」

猫耳「……」

狐耳「……でも」

狐耳「……"猫耳魔法少女"は、皆のヒーローでしょ?皆の希望なんでしょ?」

猫耳「!!」

研究員「……」

狐耳「"君の"魔法少女の力は、何のためにあるの?怪物を倒すためだけ?」

猫耳「それは……」

狐耳「……ほら、こっち抑えとくから、そっち引っ張って」

猫耳「狐耳さん……!」

狐耳「私はね、猫耳ちゃん。この力を使って、あなたを手助けしたいの」

狐耳「だって、力の使い方なんて、結局は人それぞれじゃないかな」

研究員「……!」

狐耳「その力を使う"意志"は人それぞれのものでしょ?そりゃまぁ人に迷惑掛けるのはダメだけど……」

狐耳「誰かに頼まれてとか、誰かに決められて使うものじゃないと思うんだ」

狐耳「だから……助けたいって猫耳ちゃんが思うのなら、助けようよ」

狐耳「猫耳ちゃんがそう思うなら、私も手伝う」

猫耳「……はいっ!」

研究員「……手間を掛けるわね」

狐耳「助け出したら襲いかかるとかやめてよ」

研究員「ふふ、どうかしらね」

狐耳「……むー、猫耳ちゃん、やっぱりこいつ助けるのやめない?」

猫耳「狐耳さん!?」

狐耳「ふふ、うそうそ!よし、そっち上げてー!」


狐耳「……はぁー、疲れたっ!」

猫耳「はぁ、はぁ……大丈夫ですか?研究員さん」

研究員「……まだ、下半身の感覚はないけれど……これから、私は、何をすればいいのかしら?」

狐耳「それは自分で考えるんだよ。今まで自分がしたこと、したかったこと……そういうの全部まとめて振り返って、何をするか決めようよ」

猫耳「……あなたが奪ったものは、もう帰ってこないけれど……あなたが何かを助けることは、まだできるはずです」

研究員「……そう、ね……」

ザッ

犬耳「……」

猫耳「せ、先輩……っ!」

研究員「……あら、猟犬。怪物の退治は終わったのかしら……?」

猫耳「先輩、この人は……!!」

犬耳「……魔法少女の役目は、怪物を全て駆逐すること」

研究員「……」

犬耳「……無論、怪物の発生源も同時に断たなくてはならない」

猫耳「先輩っ!!」

研究員「……好きにしなさい」

狐耳「(あわわわ……)」

犬耳「……そしてもう一つは、"傷付いた人を守ること"……傷ついた人を見殺しになど、できるはずもない」

猫耳「先輩……!」

犬耳「病院に運ぶぞ、猫耳」

猫耳「っ!はいっ!」

研究員「……あなたは私を恨んでいるんでしょう……ここで殺しなさい」

犬耳「何のことか知らんな。私の剣は、人を斬るための剣じゃあない」

研究員「……でもっ……」

犬耳「私はこの力を私怨のために使いたくない。……怪物のいない平穏が取り戻せたなら、それでいいさ」

研究員「猟犬……」

研究員「……ごめんなさい……」


・・・

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