アーサー王と武蔵野うどん ~ いとをかし、武蔵野邂逅譚!~
中田もな
Ⅰ アーサー王と巨人退治
時は今から遠い昔、場所はブリテン島・コーンウォールに位置する聖マイケル山。イギリス版「モン・サン・ミッシェル」と言っても過言ではないこの場所に、美しい馬にまたがった騎士が三人、凛と山頂を見つめていた。ともに戦いやすい軽装だが、その容姿はただならぬ気配を纏っている。
「私は今から山頂に登り、悪事を働く巨人を退治する。おまえら二人は、そこで待っていろ」
最も若々しく、最も
「王さま、くれぐれもお気を付けください。あの巨人は、すでに何人もの王を打ち負かしております」
騎士の一人が進言すると、高貴な騎士はニヤリと笑う。自信に満ち溢れた彼こそが、かの有名なブリテンの王・アーサーだった。
「心配は無用だ。憎き巨人、必ず打ち倒す!」
アーサー王は二人の騎士を残し、逞しい馬で一気に山を駆け上った。そして火の燃え上がる山頂まで辿り着くと、立派な槍を振りかざしてこう言った。
「さあ覚悟しろ、大食らいの巨人! いたいけな子どもを殺すことは、この私が許さぬ!」
巨人は食事の真っ最中であったが、彼の宣戦布告を受けてズンと立ち上がった。強者の証である上等なマントをなびかせ、大股で地面を踏み鳴らす。
アーサー王はすぐさま巨人に飛び掛かり、大きな腹に槍を突き立てた。巨人も負けじと棍棒を振りかざし、立ち並ぶ木々もろとも王を吹き飛ばす。
「巨人よ、私は負けぬぞ!」
二人は一進一退の攻防を繰り返し、じりじりと山を下る。やがて王は巨人の下半身を切り付け、巨人は悲痛な怒号を上げた。
「王さま!」
下を見ると、すでに山のふもと。待ち構えていた二人の騎士が、長い槍を握りしめている。
「罪深い巨人め、最早これまでだ!」
勝ちを確信したアーサー王は、渾身の一撃を食らわした。鋭利な刃は巨人の腹を突き抜け、後は二人の騎士がとどめを刺す……はずだった。
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