第6話 作戦

 あの後、シリウス様は慌てて部屋からでて行った。

そして、着替え後、謝罪をされ、また仕事に戻って行ったのだ。


 なぜ、あの時間にシリウスが屋敷に居たのか。庭でお茶の準備がされた場所に移動し、レティシアから聞かされた。


「お兄様は私が呼んだら、すぐに転移魔法で帰って来てくれるのよ。」

 と、レティシアはリーディアに話し出した。


「とてもいいタイミングだったでしょ?どう?お兄様の反応よかったと思うのよ。真っ赤だったでしょ?あまり女性に対して顔色を変えないお兄様があの反応よ?」

レティシアは嬉しそうだ。


「・・・わざとだったのね。私のあんな姿を見せてどうするつもりなのよ。もうシリウス様に会えないわ」

 リーディアは両手で顔を覆ってしまった。


「まずは、しっかりディアの事を、お兄様に意識してもらわないと!パーティでいい印象だったし。どんどん攻めていかないと、あまり時間がないわよ?」


 リーディアはレティシアの言葉にキョトンとしている。


「あのパーティで私たち、彼らの瞳の色のドレスにしてたでしょ?普通だったら、その意図がわからないはずだったけど、パートナー交換でダンスを踊って目立っちゃったから、噂がでてしまっているのよね。だから、婚約発表を予定より早くしないといけなくなってしまったの」

 レティシアは少し申し訳なさげに、リーディアを見ている。

 婚約発表は、レティシアの卒業あたりに考えられていたが、予定より早まり、あと4ヶ月後に発表予定だという。


「シアが私のためと思って、してくれたのだとしても、普通だったら、責任をとるとかって話になるはずよ。でもシリウス様はそんな事はおっしゃらなかったわ。それが、シリウス様の答えよ。私が、ライバルである兄の妹という認識から変わることはないわ」


 リーディアはシリウスに見られた事は別に問題視していない。むしろ、シリウスの記憶に自分が残るのなら、あんな姿でもよかった。


 リーディアも、シリウスが赤くなる顔をしっかりと記憶に残した。


「あれは、ただ、兄にしては珍しく動揺してただけだと思うのだけど。私の作戦は失敗しちゃったみたいね。兄が責任をとると言うと思ったのよ。言わなかったから、責めようと思ってたのにディアが止めるんだから」

 レティシアは作戦が失敗し残念そうだ。


「いいのよ。シアの所為じゃないわ。それに、お詫びをすると、言われていたし。シリウス様のお詫びが何か楽しみにしているわ」


 リーディアはシリウスに、気にかけてもらえるだけで幸せだ。お詫びを考えてくれる間は、自分を思い出してもらえるのだから。

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