教えて!ミカワ先生

詩川貴彦

第1話 宿題が多いのはなぜですか?

質  問:不思議なのですが、この頃「宿題」ものすごく多いと感じています。他のことも勉強したいし趣味にも取り組みたいのですが時間がありません。また家庭での過ごし方もいちいち管理されるようになりました。なぜですか。


カミカワ:「学力調査」に関しての国(文部科学省)への忖度です。


 学力調査で「家庭学習の時間」という項目があって、平均より少ないとすべて学校や教師の責任になって教育委員会から攻められるので仕方なく出しているのですよ。本当は宿題に頼らず自分で家庭学習に取り組む方が力がつくのですけどね。

 また、学力調査では、各教科においての「国の平均」「県の平均」「市の平均」「学校の平均」が算出されます。それぞれの当事者は、「平均」に振り回されるので、「平均」を何とか上げようと必死になって対応を強いられます。

 そもそも「学力調査」は個人の学力を上げるための参考資料であって「競争」には使わないという約束で実施されています。文科省もいろいろな「評価」には使わないと明言していますが、やはり「平均以下」だと暗黙のプレシャーを感じないわけにはいきませんから、学校は市に、市は県に、県は文科省に忖度せざるを得ない状況が作り出されているわけで、最終的には個々の先生方へのプレッシャーとなって跳ね返ってきているのが現状です。それが証拠に、市教委からは必ず「分析」を求められます。「なぜ平均より低かったのか。」「それについてどう対処していくのか。」というのが主な内容ですが、はっきり言ってそんなことはわからんし、対処の仕方がわかればとっくに対応しているので、それでも「わからん。」なんて絶対に書けないので、しかも報告モノや何やらで死にそうに忙しいので、「おそらく」「たぶん」で適当に考えて書いて提出しているのが現状なのです。

 そもそも「平均」というのは上があって下があって成立する換算値なので、すべての学校が平均を上回ることなんて数学的に不可能だし。

 さらにうちの県なんかは、人口が少なくて産業経済収入、さらに国体、マラソン大会、交通網、年収、すべてが全国平均を大きく下回っていて、いつも四十何位あたりをウロウロしているのに、教育関係だけ全国平均を超えろとか、それは無茶な要求だと誰もが思っているのですが、口には出せません。

 ついでに言わせてもらえば、40年ぐらい前に国体があって、そのために地元の国立大学教育学部のちょっと優秀な人材をさしおいて、大量の体育教師を採用しました。そのつけで、それ以前はけっこう学力が高くて、全国十何位だったのに、今では無残な状況になってのは、あんたらあのせいでしょうと言いたいなあと思います。誤解のないように言っておきますが、体育教師が悪いわけではなくて、体育関係の某大学に入学する当時の学力というのは、彼らの勉強方法ではそこまでしか偏差値を上げられなかったわけですから、その方たちが教師になって生徒に勉強方法を指導するわけですから、そりゃあ限界っちゅうもんがあると思いますよ。

 全部、昔のおっさんたちが考えもせずにやったことなのに、なしてそのつけをワシたちに回して苦しめるんかといいたいです。

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