第十三の論争 え?
彼としてはどうにもやりにくい一日が終わろうとしていた夕暮れに学校で彼女と決めていたことを掘り返された。
どうにも今日の彼女は性欲が三十代前半並みの日だったらしく興奮をしていた。
一方彼は下手なことを言って墓穴を掘らないようにしているのか、自分の本音を奥底に閉じ込めているようでどうにもいつもの彼の異常的な活発さが見受けられないようだった。
今日の彼女は本当に畳みかけるつもりのようで自信満々で切り出した。
「またいつもみたいに君の名演に騙されないようにイケオタ君をお呼びしました」
イケオタ「もす」
「はぁ…?審判でも任せるのか?それともNTRか?」
「ちがいますー、イケオタ君に素直になる催眠をかけてもらおうと思ってね♪」
「そんなバカなことはねえだろ?都合がよすぎるぜ?」
イケオタ「私一時期ですね催眠ニーを試みたことがありまして、プロ並みの腕を持つ自負があります」
「・・・・・・」
「それじゃあお願いね♪」
「なぜ…お前はそっち側なんだ…」
イケオタ「私も貴殿の素直な様子が見てみたいからですな」
「人の嫌がることに性を見出しやがって…」
「よく君が言えたもんだねー」
イケオタは彼に向けて指をさし細長い一筋の光を出した。それにあたった彼は『うぎゃー』と叫び土煙に捕らわれた。
少しして土煙が晴れるといつもと変わらない彼がたっていた。
「どう?見た目じゃ全然変わったように見えないけど…」
イケオタ「なにか質問をしてみてください。いつも彼の纏う鉄の仮面がはがれているはずです」
「じゃあ…今の気分は?」
「…今からホームパーティでもできそうに見えるか?だったら俺と便器の違いが判らないくらいには正常だな」
イケオタ「しまった、間違えてアメリカンジョークを言ってしまう催眠をかけてしまいました…」
「なにコイツ…めちゃめちゃ腹立つ…」
「それはこっちのセリフだアスホール、ブラックジャックでオーバーしちまった気分だ」
「今すぐに戻して」
イケオタ「御意…」
再び指からビームのようなものを出すと再び土煙に纏われる、まるでそれはソシャゲのガチャ演出のように高揚の死んだ待ち時間になっていた。
イケオタ「今度はいいはず…」
「それじゃ…今日の天気は?」
「…今にも星々が落ちてきそうな透き通るような晴れだ」
窓の外は夕立なのか小雨が降っていた。
イケオタ「おそらくこれは真逆のことを言う催眠ですな…」
「まあそれはそれでいいよー…じゃあ私のことどう思う?」
「…すごくかわいくて俺をいつも助けてくれて本当にありがたいね」
「いやーん…催眠にかかってるって言っても照れちゃうなー…」
イケオタ「…え?催眠…で逆の…え?」
「じ、…じゃあ私のことは…スキ?」
「大好きだよ、君のメンヘラ感のなさとかが特にね」
「本当に君のような理想を絵にかいたような女性に出会えて感謝しかないね」
イケオタ「…ごめんなさい…本当に…」
「どうしたの?なんで謝っているの?」
「でも君の身体に対する気持ちはそんなにわかないかなー」
「えー…なんでー?」
「体だけは興奮しないんだよなー」
イケオタ「もう…やめてあげてください…催眠を…解きますよ…」
「ハッ!俺は今まで何を…」
イケオタ「申し訳ありません…」
「私のことどう思ってる?」
「…体だけは理想的だよな」
イケオタ「私は…もうこの空間にはいられません…なんとお詫びをしたらいいのか…」
「ん?…帰るの?気を付けてねー」
イケオタはこの世界では一二を争う善人のため自責に身を焼かれ空気がねじれるような感覚があったのだろう、耐えられずに逃げてしまった。
「まぁ…何があったかは知らんが…気が済んだか?」
「まあそうだねー君の本音が聞けて楽しかったよー」
(・・・・・・・?あれって…逆のことを言うんじゃなかったっけ…)
(え?)
(え?)
(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)
(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)
(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)
(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)(え?)
(え?)
彼の口角がなんとも醜く切れんばかり上がる。
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