第37話 二月下旬
やっぱダメだったか。俺は新しい携帯で自分の受験番号があるか何回も確認したが、見つからなかった。他の学部もダメだった。俺は親父になんて報告していいか分からなかった。絶望感しかなかった。
俺は気に掛ける母さんを横目に、外の空気を吸いに出た。ひんやりして冷たい。朝の天気予報で今日の天気予報は最高気温は七度って言ってたしな。
俺はどこに行っていいのか分からず、とりあえず都立図書館の方へ歩き出した。目の前から大輝が女子二人と一緒に歩いてくるのが見えた。俺は手を振った。大輝も振り返してくれた。
「竜二、なんでいきなりTWINいなくなんだよ」
「ごめん、ごめん。いや、携帯水没してダメなったんだよ。新しい携帯にしたら連絡先全部なくなってさ、IDも覚えてなかったしよ」
証明しようと、俺は新しい携帯を出した。
「まあ、いいや。で、どうだった? 水城」
「う〜ん、全部ダメだった。大輝は?」
「え。ダメだったの? 俺は受かったよ」急に大輝の態度が白々しくなった。
「おめでとう! すげーじゃん大輝」
「ありがと、じゃ」
「あ、そうだ。TWIN教えてよ」俺は帰ろうとする大輝に聞いた。
「え。無理」
断られた。
「なんで」
俺、なんか悪いことでもしたか。
「落ちたんだろ? 一緒の大学いかないし、元々、友達でもないじゃん」
「なんだよそれ」
俺は少し声を荒げた。
「ごめん、俺たちってやっぱ住む世界が違うじゃん?」
見下したような目で見られた。
「じゃ、俺たち合格祝いで遊んでくるから。水城の」と言いながら、大輝たちは去ってった。
「何あれ、ちょ〜ウケるんですけど」と女子たちの俺を小馬鹿にした笑い声も聞こえた。
俺は悔しかった。勝手に友達と思っていた自分に腹が立った。こんな時、大地ならなんて言ってくれるかな。きっと心配してあの仔猫のような目で「竜二、大丈夫?」って言ってくれんのかな。紅茶秘伝も買ってくれんのかな。俺は新しい携帯であの遊園地デートの時に電車の中で一緒に聞いたHAUの「会いたいけど」をダウンロードした。
『会いたいだけ』HAU
Aメロ あなたに出会ってから どれだけの季節が過ぎ
いつでも思い浮かぶのは あなたの笑顔
Bメロ 「いつか きっと どこかで」なんて言って あなたは歩くんだ
わたしの気持ちは まだそこにある これからもずっと
サビ 会いたいけど わたしは前を向くよ そして 歩き出すよ
でも あなたがいつかそこに戻ってくると信じ続ける
Ah 会いたい けど 会えないのは もう春が来てるから
くそ。なんで涙出てくんだよ。
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