第2話 4月中旬
土日を挟んだとしても、新学期から1週間もすれば新しいクラスで誰が面白くて、誰が真面目で、誰がクラスの中心で、誰がぼっちか分かる。
俺はそんな向井を眺めながら、俺はいつも
幸いなことにクラスの男子からは「
小さい頃から女の子と遊ぶのが好きだったし、姉や妹に挟まれてたし、中学で体育の男の先生を好きになったし。確かにオカマ、オカマっていじめられたこともあったけど、自分が嫌いになったことはない。こんな性格に産んでくれて良かったと心から両親には感謝している。
だって、どうしようもなくない? 物心ついた頃から、好きな人の対象が、ただ男の人だったってだけだし。
「大地、今日テストないよな?」
急に自分の名前が呼ばれて少し驚いたがいつものことだ。一時間目の数学の先生を待ってる中、後ろから話しかけられた。俺は
新学期初日、向井と掲示板でクラス替えを見た後、俺は玲花とゆっくり歩いてクラスに向かった。
「いつまで
玲花は俺が向井と付き合って欲しいのか、向井と一緒に登校したら毎回この質問をしてくる。
「向井、絶対ノンケだし」
「そうかな〜? ノンケなら、あんなに頭撫でこなくない?」
「俺のゲイダーが反応しない」
ドラッククイーンが司会を勤めるテレビ番組で覚えたゲイとレーダー(探知機)を掛けたこの言葉。ゲイのプロは誰がゲイで誰がゲイじゃないか分かるらしい。ただ俺は自分にゲイダーがあるかどうかもわからないままこの言葉を使っている。
「アクションかけてみたら?」
玲花が食らいつく。
「そういうんじゃないし」
俺は自分が向井のことを好きか好きじゃないの分からなかった。ただ性的欲求は向井に満たされてもいいんじゃないかなと思っている。なんで上から目線なんだ。申し訳ない、向井。
3年7組と書かれた表札のある教室に入ると、目の前でにいきなり背の高い男子に通せん坊を喰らわされた。
「大地くん? やっぱ、かわいいじゃん」
話したこともない男子に俺は「は?」と返事をした。
目の前にいる男子は、浅黒くて一重、短髪、少し手入れがされてある凛々しい眉毛、身長は一七五センチくらいはある。この俺のタイプど真ん中のイケメンは
伊吹と向井はサッカー部でよく一緒にいるからか、俺が向井と話をしている時に、たまに伊吹が話題にあがっていた。あと、サッカーの練習を横目でみながら帰ってたから、話したことないけど昔からの知人みたいな感覚でもあった。
「伊吹くん……だよね? めちゃかっこいいじゃん」
俺のことを可愛いと言ってきた伊吹がどんな反応するか見てみたかった。
「ありがと、やっぱ俺、イケメンなんだよな。てか、噂通りじゃん! 大地君、どっちもいけるんでしょ?」
普通なら恥ずかしがるかなと思いきや、案外そうでもなかった。
「何その噂? 向井、何言ったの」
玲花がキツい目で向井を見る。でも俺自身もそんな噂は知っていた。俺がオカマなんじゃないのかって。
「いや、別に。何も言ってないよ」
向井が何も言っていないのは分かっていた。
「想像にお任せるよ、伊吹くん」
俺は伊吹にウインクをした。噂に関して別に固定も否定もしない。でも自分からはゲイだってことは言わない。
「ごめんごめん、てか、どっちでもいいじゃん。俺たちこれから一年間一緒だしさ。とりあえず、よろしく! あっあと、竜二でいいぜ」
伊吹は自分が噂通りじゃんって口を滑らしてしまったことに、少し
俺たちは黒板に貼られてある席順を見に行った。荒井の下に伊吹があった。
「俺、大地の後ろじゃん。ラッキー、毎日かわいいい顔見れるね〜。あと英語教えてね〜」
竜二は素直に嬉しそうだった。俺はハハっと笑いながら席に着いた。なるほど。竜二の狙いはこれかと一人納得した。俺は中学から英語が得意で、高校も英会話部に所属している。向井もたまに分からないところがあれば俺に聞いてくる。
それから毎日の様に、後ろから呼ばれるようになった。
「大地、今日、何食べてきた?」
「大地、数学のプリント見して」
「大地、この関係代名詞どっち? Which、Where」
「大地、今日学食行く?」
なんだかんだ名前を呼ばれるのは必要とされる感じがして嫌じゃない。だけど、聞こえていたこの声が、急に聞こえなくなった。
竜二が学校を早退し、次の日も休んだ。
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