桃太郎 お婆さんside
wagapuri
洗濯
「爺さん!今日こそは柴刈り行って貰いますからね!」
「まぁまぁ婆さん、そんなカッカしなさんなて、カルシウムが足りていないんじゃないのかね?それより、わしは腰が痛いんじゃ、柴刈りなんて行けるわけがなかろうに…」
「その言い訳昨日も、一昨日も、そのまた前も…もうかれこれ1か月以上聞き続けてますが?」
「そりゃ、1ヶ月以上言い続けて居るからのう…」
「とにかく、今日こそは柴刈り行ってください」
「嫌じゃ!!わしゃいか………」
「行かないなら、夕飯はないものと思え、また、爺さんの部屋の、瓦版はすべて竈に火をつけるための着火剤になるものと思え。」
「ひぃ…今すぐ柴刈り行ってまいります!」
「それでよいのじゃ」
爺さんが全力で山に向かって走っていった。うん、腰をかばっている様子はないし、腰が痛いというのはやはり仮病だろう。
「さて、私も川に洗濯に行くとしますかね…」
そういいながら、立ち上がって、貯めてある洗濯物と洗濯板を洗濯桶に放り込み、川へと向かった。
そして洗濯を始めると、おじいさんの服にシミがあることに気が付いた。…これは、女性の口紅、色は金赤。私は口紅はめったに使わないし、色も紅赤を使用する。ということはこれはほかの女性の口紅…
「次やったら離婚だって言ったはずなのだが?」
そして、怒りのあまり、桶を川に投げようとしていると、川上から大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきました。
お婆さんは驚きのあまり、川に落ちると、思いのほか流れが速く、あっという間に流されていきそうになりました。慌てて近くにあったもの(桃)につかまると、そのまま、川岸に向かって進もうと足をじたばたさせました。
やっとの思いで、川から上がった婆さんは、さて、どうしたものか、と思い、とりあえず、持って帰ることにしました。本当は交番に届けるべきだとわかっていましたが、婆さんだって、なかなか裕福な生活ができていません。桃を腹いっぱい食べたいという欲求が完全に理性を消し去ってしまったのです。
そして、その桃を、洗濯もので上手く(?)隠しながら帰路に就くと、山から爺さんがちょうど帰ってくるところでした。そのころには、もう浮気のことを忘れていたので、家に帰ると爺さんに、
「桃拾ったから切ってくんない?」
と頼むと
「えっ、めんどいからヤダ」
と爺さんは答えました。
しかし、婆さんは非合法的手段を使って、爺さんに桃を切らせると、中から、ガクガクと震えている小さな赤ん坊が出てきました。
「かわいい子じゃのう、これからお前はうちの子じゃ、名前は…そうじゃのう、英いちr…」
「桃から生まれたし、桃太郎にしましょう」
「…なんでお前が決めるんだよ」
「ぁあ?なんか文句あるの?」
「ないです」
おじいさんは完全に恐妻家でした。しかし、不倫を繰り返したり、家事をほとんどしなかったりしたため、お婆さんが怒るのも無理はありませんでした。
※誤字がありましたので、一部修正いたしました。
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