鉱石のように美しく

 鉱石コーナーに着くと、優莉姉さんは僕が買いたいと言った天青石を自分も買うと言った。

「めっちゃきれいじゃん……買いだな」

「和藤さんもなにか買いますか?」

「では私も天青石で」

「わかりました」

 僕は3000円の天青石を二人と一緒に購入し、それから優莉姉さんが買い忘れた手芸用品を選ぶのについていった。

「そういえば和藤さんって何か趣味はあるんですか?」

「手芸、CG制作、動画編集、編み物、文芸、イラスト、刃物、模型、他多数です」

「多いですね……ところで刃物って何ですか?」

「刃物っていうのはナイフとか包丁とか刀とかのことですけど……」

「そ、そうじゃなくて」

 どうも話がかみ合わない。と、優莉姉さんが衝撃の発言をした。

「和藤くんはね、刃物を作ったりしてるんだよ」

 僕は現実感のなさに驚いた。しかし、優莉姉さんがそんなつまらない嘘をつくとは思えなかった。

「本当?」

「ええ、本当です」

 和藤さんにはかなわないな。そう思って、僕は優莉姉さんが見ていた手芸用品を手に取った。紫色のメリノウールの毛糸が、僕を見つめ返した。

「僕も買いたいんだけど、初心者向けのとかある?」

 優莉姉さんは向かい側の棚を指した。

「かぎ針編みがいいんじゃない?」

 僕は「かぎ針(100円)」と書かれた値札のついた、先の曲がった金属棒を手に取った。アルミ製のようだ。

「これと好きな色の毛糸を3玉くらい買ってマフラーとか編めばいいと思うよ」

 優莉姉さんはそう言って、毛糸の色を見比べていた。

「和藤くん、この紫とこの紫、どっちが好き?」

「あー……若干明るい色の方がいいですね」

「そっか。わかった」

 優莉姉さんは明るめの紫の毛糸をかごに5玉ほど入れる。

「英二、決まった?」

「この赤とこの緑で」

 僕は2色の毛糸を2玉ずつかごに入れ、優莉姉さんの後ろについて歩きはじめた。

「550円になります」

 僕はお金を払うと優莉姉さんたちのもとへ向かった。しかし、優莉姉さんたちは見当たらない。

「……あれ?」

 電話をかけるのはまずいかもしれない。僕は周りを見渡し、優莉姉さんたちが見える範囲にはいないことを悟った。10階で雨具を見ているかもしれないと思い、僕は10階にエレベーターで上がった。


 果たして、雨具コーナーに2人はいた。和藤さんは雨具をざっと見て、棚の一番下に目を留めた。

「これは……ハンズ限定商品の……!」

 和藤さんは喜びに目を輝かせているのだろう。後ろ姿だけでも喜びを感じるほど、和藤さんは嬉しそうだった。優莉姉さんはというと、傘には全く興味もないはずなのに和藤さんに色々聞いている。


……仲いいなぁ。


 僕はなんとなくそこに、煙水晶の柔らかい輝きに似た美しさを見出した気分だった。

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