第8話 ジャイロ回転の方法と砲弾型アイスランス


 ジューネスティーンは、弾丸をジャイロ回転させることで、弾丸の直進性を確保できることに思いついた。


 しかし、思いついたとしても、実際にどうやるのかということになる。


 ジャイロ回転させるまでは良かったのだが、その先を考えなければ、弾丸のジャイロ回転は、できない。


 これからが、開発者の腕になってくるのだ。




 弾をジャイロ回転させる方法なら、弾に螺旋を描き空気を切り裂く時の空気抵抗で回転させるか、撃ち出す時に回転させる事になる。


(銃弾に細工をするには、コストの面で高くなるなぁ)


 弾に細工をするのは最終手段、弾は回収して使う事が出来ないと考えるべきなので、弾のコストを抑えなければ高価なものになってしまうのだ。


(なら、弾ではなく銃に細工を施して弾を回転させる事になるのか。 弾を撃ち出す時の爆発で、回転させるのはどうだろうか。 爆発によって押し出す力を回転させるとなれば、弾に細工が必要になるので、この方法は前と同じ事になりコストに跳ね返るな)


 ジューネスティーンは、弾丸への加工の方に意識がいってしまっている。


(そうなると、弾が爆発で銃口から飛び出す、薬室から銃口までの間に回転を加える事になるのか。 なら、考えられる方法は、銃身の中に螺旋を描いておき、その螺旋に沿って弾が進む事で回転させる方法になるな)


 そう思いつつ、ジェスティエンの銃の事を思い浮かべる。


 撃たせてもらった拳銃もライフル銃も、銃口の中には溝が掘ってあり、その溝が螺旋を描いていたことを思い出した。


 銃身を通る時、弾丸が、その銃口内のライフリングによって、その溝の通りに回転をする。


 的に当たった弾丸を確認した時には、表面に螺旋を描いた傷が付いていたのだ。


 その銃弾の傷が、銃身内のライフリングによって弾丸を回転させるのだが、その時に弾丸には、ライフリングマークとして傷が残っているのだ。


(ああ、ジェスティエンさんの銃身の中に溝が有ったのは、こうやって、弾丸を回転させる為だったのか。 あの中の溝は、螺旋を描いていたのは、そのためだったのか)


 弾丸は、銃身の中を進む時にライフリングに擦れるように進むのなら、弾丸は、僅かに銃口より大きめか同じにする。


(大きすぎて弾丸が通らなくても困るのか)


 そうなってしまうと、薬室内の爆発力が逃げ場を失って銃が暴発してしまう可能性もある。


 摩擦力が大き過ぎたら、弾丸の初速が落ちる事になるので射程距離も落ちる。


(そうなると、弾丸は、銃口と、ほぼ同じ位で、僅かに弾丸に傷が付く程度の大きさがいいのかもしれない。 軽く抜けるのではなく、爆発で抜ける程度に、銃身の中を引っ掛かるようにするのか。 手で抜けるのではなく、爆発で抜ける程度なら、クリアランス無し程度かもしれないな。 実験が必要なのかなぁ)


 銃身の中、ライフリングを通るように綺麗に弾丸に螺旋を描ける程度の大きさにするには、銃口の内径と弾丸の直径についての関係を考える必要がある。


(そうなると、実験の時に、人が撃つのではなくて、自動で撃たないと、銃の暴発もありうるのか。 実験専用の銃を作る必要があるのか)


 弾丸の大きさについては、実験で決める必要があるかもしれないが、球体にするよりは、円柱状に作り先端を円錐にするか、先端を尖らせて断面が弧を描く様な円錐状に作り、後ろを僅かに円柱状にする。


(ただ、長距離の狙撃の様な場合は、尖らせた長い弾丸にして、中心軸の精度は要求されるだろう。 重心が中心軸より大きくずれた時は、弾丸が長い分、飛んでいる時の空気抵抗によって、変な縦回転がかかる可能性があるかもしれない。 いや、均一に作られた金属なら、旋盤で削り出しで作れば、数キロ先の標的を狙うのでなければ問題はないのか。 なら、弾丸の先端は、球状に作るか、尖らせた方がいいのか。 銃口の中で回転させるなら、円柱がいいのか。 そうなると、円柱状で、先端は、球状か、円錐状にした弾丸で良さそうだな)


 スリングショットの弾丸からヒントを得て、ライフリングと弾丸の形状に付いての考察をジューネスティーンはまとめたのだ。




 少し落ち着くと、シュレイノリアの砲弾型アイスランスの事を思い出す。


 ジャイロ回転させてから、撃ち出す大型のラクビーボールのような形の氷の塊だった。


 その氷のラクビーボールを回転させていたのは、直進性を求める為だったのを思い出す。


(シュレイノリアは、弾丸のジャイロ回転させる事で、直進する事に気がついていたのか)


 思い出して、その事に気がつくのだが、何で教えてくれなかったのかと思ったのだが、今聞けば、 “お前は、それを聞かなかったからだ” と、言うと思うので、シュレイノリアに、ジャイロ回転について、ジューネスティーンは、聞く気にならないようだ。


 ウィルリーンの砲弾型アイスランスが、最初はうまく当たらなかったのは、回転が甘かったのも有るが、形が歪で回転させていると先端の細い部分が広がって回転を始めていた。


 形がある程度対称になってないと、重心が中心軸から、ズレてしまって、そのズレが遠心力で外に流れてしまうのだろう。


 それが、ジャイロ回転していても方向が安定しなかったと、ジューネスティーンは、考察するのだった。

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