来たぞ 我らのヒーローが

未結式

第1話 来たぞ 我らのヒーローが

「浅川純一、君は私たちのスーパーコンピューターの計算により、完全無欠のヒーロー、メタルマンに選ばれた」

「……」

「急な話で申し訳ないが、このメタルスーツを着て地球の平和を守ってくれ」

「……」

「君にしかできないことなんだ! 一緒に世界の平和を守ろう!」

「あのさあ」














「儂、今年で六十一歳やぞ!」







「君は私たちのスーパーコンピューターで選ばれたのだ!」

「繰り返されても理解できんのよ!」

「ちゃんと健康な二十歳以上で検索かけたんだ!」

「上限を決めなさいよ! 腰痛持ちのヒーローなんて聞いたことないやろ!」

「まあ話を聞いてくれ、君はよく若いねといわれるだろう」

「同年代と比べたときの話だろうが! 退職して、老後に孫と遊ぶのが楽しみの奴をヒーローに選ばんやろ!」

「しかし君のDNAデータを登録したから、もう君にしか起動できないようになってしまった」

「もう詐欺と変わらんよこれ!」

「あああ、余り乱暴に扱わないでくれ、私の五十五年の人生の中での最高傑作なんだ!」

「あんた年下か! というか自分より年上の爺に世界の命運を託すなよ!」

「仕方ないだろう、一番条件にぴったりだったのが君だったんだよ!」

「だから検索結果見直せって!」

「そうもいかないんだよ」

「何でだよ……おい急にスーツが鳴り出したぞ」

「敵が来たんだ、迎撃準備! ぽちっとな」

『出撃シークエンスに入ります』

「おいスーツの中が慌ただしくなってきたぞ!」

『放出十秒前、九、八、七……』

「ちょっと足から炎を出てるんだが!」

「出撃だ!」

「最後まで私の自由意思はないのかあアアアアアアアアアアアアアアア!」



「到着だ、さあ敵を迎撃してくれ!」

「……」

「どうした、浅川純一?」

「……着地の衝撃で腰いった」

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