星巡りのシーア

カブ

プロローグ


 星の波長が変わり、その星に住む存在は星の終わりを感じ取った。

 次の「星の意志」、つまりシーアが生まれることを、言葉では無く、感覚として受け取ったのだった。


――次のシーアが生まれる。新しい星の意志。


 最初に感じ取ったのは、大地。それから植物、海、海に住むもの、そして風が感じ取り、動物は風から。


――「星の意志を継ぐ者」。この星に終わりをもたらす者。


 彼らは、星で過ごすのは今持っている生体、もしくは依り代で最後だと悟った。

 だがそれによって彼らが生活を大きく変えることはなかった。植物や石や風や大地は、ただ粛々と存在を営み、動物たちも他者を捕食し、捕食される者も静かにその生を閉じた。

 ただ変わったのは、一日の内で移りゆく時を今までより深く愛するようになったことだった。まるで内側で時を熟成させるかのように、昇る朝日や、沈みゆく霞む夕陽、草花が風にそよぐ音、そして愛する家族を愛撫し、同じ時を求めた。


 だが、人間だけは星からの言葉があるまでそのことに気がつかなかった。

 彼らは、言葉によって生きているため、星からの波長の変化に上手に気がつくことが出来なかった。それは彼らの特性なので仕方のないこと。一部の言葉を持たない人間たちだけがそのことに気がついたが、彼らは言葉を持たないが故に、それを伝える手段がなかった。

 

 そして、誰にも知られないうちに、シーアとしての魂を宿した一つの肉体が、一人の母親の胎内に発生し、外界に身体を放つまで、羊水に潜む鯨の鳴き声と、星の意志の歌声に包まれていた。


――あなたは「次の星の意志」になる者。あなたの名前は……。

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