第70話 辨道話その五十九 真実はひとつ

 「とうていはく、かの上代の師、この法を会得えとくせりや。

 しめしていはく、せば通じてむ。」

 第9問答。

 質問して言うことには、これまで経典を通じての教えを伝えた師たちは、大宇宙の真実・真理の実現・実証を会得していたのかどうか。

 答えて言うことには、もし会得していたなら世の中に伝えていただろう。

 道元禅師は柔らかい表現を使っておられるが、内容は非常に厳しいものだ。というか、真実は1つしかない。仏法・仏教はただ一つしかないから、こう言わざるをを得ない。

 思想は自由だ。信教は自由だ。何者かが「これでなければだめだ」と力で押し付けるものではない。そんなことは断じて許されない。

 ただ、ではどの思想が真実に至るのか、どの宗教が真に人類を救えるのか、そこをはっきりさせるというのは必要だ。

 自由だから何でもいい、自分はこれが正しいと思うからこうするとか言って滅茶苦茶されたら迷惑千万だ。プーチンなんかその最たるものだ。

 自由というのは一人一人が自分の言動が真実に基づいているかどうかを常に検証し責任を持たなければ成立しない。

 今は自由自由とばかり叫んで責任がなおざりになっている。脳味噌に浮かんだ妄想を自由の名の下に声高に叫ばれるのは騒音でしかない。迷惑だ。

 ただ思想間、宗教間で真実について議論するというのは今の人類のレベルでは無理だろう。ただ憎しみと暴力を生むだけだろう。まともな議論ができるためにはまだまだ気が遠くなるような時間が必要だ。その間に人類が滅亡しないことを願うばかりだ。

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