ハロウィンシチュエーションボイス集

野々村鴉蚣

ミイラ男と線香花火

先輩、めっちゃお菓子貰ったんですね!少し分けてくださいよ~!

あはは、ダメですか?

あ~僕ですか?僕も結構もらいましたよ!ほら、キャンディーがこんなに……あ!ちょっと先輩、何かってに盗ってるんですか!

えー、美味しそうだったからって。まぁいいですけど。

ひ、一口僕にくれません?


ダメですよね~だってキャンディーですもんね。そうですよね!

舐めかけのキャンディー一口あげちゃったらもう食べれないですよね。あはは。


先輩、もうすぐ卒業なんですね。

いや、まぁ確かに3月まではまだ時間あるかもしれないですけど。でも、明日で11月ですよ。

もう、あっという間に今年が終わるんだなって思ったら、ちょっとだけ寂しく感じて。

あー、いやいやごめんなさい。別にセンチメンタルな感じにするつもりはなかったんです。

そ、そんなことより先輩、僕見てくださいよ!この仮装!どうですか?

ふっふっふ。何かわかります?


え?

トイレットペーパー男?

違いますよ!ミイラ男ですよ!僕、ピラミッドの中で眠っていたツタンカーメンですよ!

ちゃっちいって、めっちゃ失礼なこと言いますね。

あ~あ、結構頑張ったんだけどなぁ。

先輩知ってます?トイレットペーパーってめっちゃ簡単に切れちゃうんですよ?

知ってましたか。


でもね、ミイラ男なりたいじゃないですか。だから僕、2ロールも使って全身グルグル巻きにしたんですから。

もったいないとか言わないでください!

まったくもう。今日は特別な日なんだから、別にいいじゃないですか。

多分うちの地域くらいですよ。町内会のお祭りでハロウィンやってるの。この前ネットの友達にそのこと話したらめっちゃ驚かれました。

「日本なのにハロウィンやってるの!?」

だって。おかしいですよね。

めっちゃ楽しいのに。

みんなで仮装して町に繰り出して、商店街のおばちゃんからお菓子とかもらって。まぁ、確かに参加者ほとんど小学生だから、僕たち結構場違いな感じですけど。でも、僕はハロウィンめっちゃ好きですよ。


あと、先輩のことも……


い、いや。何でもないです。


あ、そうだ先輩。ちょっと時間良いですか?

いや、別に何か特別な用事があるってわけじゃないんですけれどね……。

今年の夏、お祭りなかったじゃないですか。だから家に花火が余っちゃって。

もしよかったら、これから一緒に花火大会やりません?

……秋の花火は危険?

まぁ、確かにそうかもしれませんが、大丈夫です!

バケツ用意します!

あと、全部線香花火なんで火事とかにならないと思います!


……あ、僕の恰好?

確かに。トイレットペーパーってよく燃えそうですよね。

危ないかな……。


ま、まぁいいじゃないですか!やりましょうよ!

僕は先輩と花火がしたいんです。思い出が欲しいんですよ。


何でって……そりゃ、だって。


僕、聞いたんですよ。先輩、この街出ていくって。

推薦で、もう合格したんですよね?他県の、ちょっと頭いいところ。

僕馬鹿なんで、先輩の学校行けるか分かんないんですよ。

だから、もしかしたら今年で先輩の顔見るの最後かもなって思って。

もちろん、夏休みとか帰ってきてくださいよ。待ってますから!


でも、なんていうか。こうして部活帰りに商店街で遊んで、日が暮れた夜道を二人で歩いたりとか、そういうことができなくなるんだって思ったら、ちょっと寂しくて。


あれ、なんかまたセンチメンタルなこと言ってますね僕。

おかしいな。


……僕、先輩に言いたいことがあるんです。

中学の頃から、ずっとずっと、先輩のことが。


大好きです。

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