数学の時間

数学の時間

木曜日の4時間目。

その時間の授業は数学である。

僕が座る席はあの子の席だ。

座るとあの子の匂いがする。

あの子の匂いに包まれて問題を解く。

まるで一緒に問題を解いているみたいだ。


夏の日も僕はあの子の席に座る。

風が吹き抜けるとどこからともなくあの子がやってくる。

一度やってきてはふっと消えもう一度やってくる。

あの子に気を取られて終わらない問題。

家に帰ったら解けばいいか。


冬の日も僕はあの子の席に座る。

窓はきっちりと閉められ風は来ない。

匂いを肺に入れるたび胸が痛くなる。

息を止めてみる。

生きる作業を再開すると忌まわしい匂いが浸食を開始する。

匂いに気を取られているうちにチャイムが近づく。


5本のチューリップのうち黄色のチューリップを選ぶ確率を求めよ。





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数学の時間 @CITRON0724

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