1章 大地を潜る船
アースダイバー試験
ここは鉱山都市マルガンド。
この世界では金属がとても価値がある。
鉄、銅、金、ミスリル、オリハルコンといった金属はそのままでもとても価値があるのだが、さらに地中深くで魔力を帯びた色違いと呼ばれる変化した金属は特に価値が高い。金属への一時的な魔力注入は可能だとしても、継続的に魔力を残留させることができないため、魔力を帯びたいわゆる魔剣を作ろうとするとこれらの金属が必要となる。
オリハルコンとはいかないまでも、高い魔力を秘めた鉄でも見つけることができれば、しばらく遊んで暮らせるくらいの財産を得ることができるほどだ。
しかし、当然ながらこれらの金属は地中深くに埋もれている。大地には土の精霊の魔力が充満しており、魔力探査で金属を見つけることができない。
ましてや当てずっぽうで金属を見つけるために物理的に掘り進めていくことは現実的とは言えなかった。
そのため、金属の発掘は、アースダイバーと呼ばれる特殊な魔法使い達で行われる。
彼らはシンクロアースと呼ばれる魔法を使い、地面に潜ることが可能だ。
体の表面上に土属性の魔法で組まれた膜を作り、地面と一体化することで、土の中で水中のように動くことができるようになる。
ただし、魔法が切れると単純に生き埋めになるなど危険もたくさんあるため、命を落としかねない職業だ。
とはいっても見返りは大きく、マルガンドにはアースダイバーになろうとするものが後をたたなかった。
マルガンドには都市公認のメタルギルドが存在している。メタルギルドで身体能力、魔法能力、知識を含めた試験を行い、クリアしたものだけがアースダイバーとしての活動が認められ、様々な支援を受けられるようになる。
特にシンクロアースの利用は危険を伴うため試験をクリアしたもの以外に教えることや利用することは禁じられている。
「ダメだった。。」
ケイがメタルギルドから肩を落としてとぼとぼと歩き出てきたところを、待っていたサッタが声をかける。
「よ、どうだったい?」
「見りゃわかるだろ。むかつくなあ」
「何が駄目だった?」
「身体能力と知識。魔法能力はなんとか合格した」
「お、マジかよ。お前本当に魔力持ってたんだな」
サッタが驚くのも無理はない。魔力を持っている人間は10人に1人といったところだ。
先日たまたま無料で魔力鑑定を行うことができて、ケイが魔力を持っていることがわかった。ケイは喜んでいたが、魔力を持っていたとしても、属性の相性や魔力の量などもあり合格率は極めて低いと言われている。魔法能力で合格できるなど全く信じていなかったのだ。
ケイは続ける
「とはいってもなあ。。身体能力はともかく、知識ってどうやったら鍛えられるんだろ」
「体は鍛えりゃいいんだろ。なんとかなるだろ。知識、知識なあ。。。スクール行くしかないんじゃないか?」
「メタルギルドのスクールに行けるような金あるわけないじゃん。」
「そうだなあ。。」
道端で話をしていると、試験で合格したらしい少年グループが聞こえるように話し始めた。
「スクール行かないでアースダイバー目指すんだってよ。」
「知識も持たないで金儲けのためにアースダイバー目指すとかやめて欲しいよな」
「そういう奴が事故を起こしてギルドに迷惑かけるんだよな」
話を聞いたサッタが少年グループに向かう。
「んだと?」
「お、手を出すのか?やっぱガラ悪いな。」
ケイは慌てて止めに入る。
「すみませんすみません。サッタ、行くよ」
「おいケイ、言わせっぱなしにしておくのかよ」
「いいから!」
サッタを引きずるようにその場を離れようとしたケイに対して、少年グループが声をかける。
「おい、そこのお前。アースダイバーは諦めろ。スクールに行かないで知識も持たないやつが金儲けのためにダイブされると迷惑なんだよ。俺たちみたいにしっかりと準備してるのが馬鹿みたいじゃねえか。」
「聞いてんのかよ。」
ケイは黙り、ぶつぶつ言っているサッタを引きずってこの場を離れていった。
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